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天草四郎と双子JKの奇妙な共同生活  作者: 黒崎吏虎
タイムスリップした天草四郎
2/2

第二話 四郎、初めてのスーパーへ

今回は第二回です。

四郎のツッコミを多めに入れてます。

 翌日。


莉愛と莉夢の姉妹に泊めてもらい、四郎は服を借りて着ていた、着ていたのではあるが。


案の定女物の服しかなかったので、華奢とはいえど四郎の体格でも肩幅が痞えてしまうものだ。


「服のことは助かった。恩に来るよ。」


「そう? しろー君がいいのならいつでも言って?」


「とはいえ、私はまだこの時代の日の本を知らなさすぎる。その……なんだ、お主達の持つ"すまほ"だとか、進みすぎて私には分からぬものばかりなんだ。だから町を案内してもらいたいのだ。」


四郎は頭が良いので、冷静にこの1日で自分の状況を把握していたのだが、それでもまだ、現代の長崎の町ですら右も左も分からない状況というのが四郎に於ける現実だった。


何しろ400年近くもタイムスリップをしているのだ、目に入る全てが新鮮で、現代の技術など珍紛漢紛もいいところである。


烏丸姉妹はそんな事情を良く知るので、この四郎の申し出を即OKを出す。


「いいよ、連れてってあげる!! ちょうど、買い物に行きたかったところだし!!」


「そうだね、莉愛。近くにスーパーもあるし、今日の夕飯を買うがてらでしろー君のも買おうよ!!」


「そ、そこまでせぬでも……と、とにかくありがたい。直ぐに支度をする故、待っていてくれ、2人とも。」


四郎はそういって、手提げカバンを取りに部屋に戻って行った。




 さて、そんなこんなで近所のスーパーマーケットに辿り着いた一行。


四郎は見慣れない物を物色していくかのように、少し眉を顰めながら眺めていく。


「………莉愛殿、米はこのように安くても構わないのか??」


「? いいんじゃないかな?? 大量に仕入れてるから安くなるんだよ。その方が売れるからさ?」


「い、いや……そういう問題では、なくてだな。うーん、農民の方々は……キチンと食事を摂れているのかどうか、がな……」


「そこの心配!?!? だ、大丈夫だよ、日本は世界から見ても! 今は裕福な国になってるから!! 農家さんもちゃんと食べられてるから大丈夫だって!!!」


歴史に疎い莉愛のことだ、四郎が総大将となって興した一向一揆のキッカケが、日照り続きによる大飢饉が原因にある事など知る由もないので、ある種無神経というか不謹慎に聞こえるかもしれない。


しかし四郎(とうじしゃ)には胸を撫で下ろすような想いをしたであろうに、農家の方々がキチンと作物を育てつつ食事を摂れていることに安堵していた。


「す、すまぬな。要らぬ心配をかけた。しかしそうなのか……日本も大きく変わったのだな、400年弱の歳月で、このように……しかし驚いたことはある、『すまほ』もそうだが、見たこともないような機械(からくり)が現代には揃っておるし、厠も男女別で分かれておって、しかも常に清潔とくる。商いの形も様変わりして、何というか……心地が良い。お主らには当たり前かもしれぬが、私には新鮮に感じられる。デウス様がまるで、400年後の未来(ここ)で余生を過ごせと仰られているように。」


「じゃあさ、アタシらに出会えたのもさ、『神様のお告げ』って事?」


「そ、そうなるのやもしれぬな。デウス様が紡いでくださった御縁……と捉えてくれて構わぬ。」


「フフッ、良かった!! しろー君が馴染めなかったらどうしようー、なんて昨日莉夢と話してて損したよ! ささっ! そんな事よりお米、カゴに入れて!!」


「結局買われるのか……早う言うてくれぬと困る、莉夢殿が勘違いされても後が大変なのだから。」


と、そこに莉夢が他の分の買い物を済ませて2人の元に到着した。


「あのさ、莉愛……アレだけしろー君に馴れ馴れしくしすぎないで、って言ったでしょ?」


「だったら何? しろー君があれこれ聞くから答えただけでしょ?」


四郎は段々と雰囲気が悪くなっていくのを察した。


側から見れば修羅場なのだ、2人の双子姉妹の間に挟まれる四郎など正にその格好、なんとかせねば、他の客に迷惑がかかりかねない。


しかしそんなのとは関係なしに、烏丸姉妹の些細な言い争いは続いた。


「しろー君と距離を詰める時は平等に、ってアレだけ言ったのに、何アレ!! 抜け駆けして堕とそうとしてんじゃないでしょうね!?」


「なにその理不尽!!! 聞かれたことを答えてただけじゃん!! 話も聞いてクセに勝手に妄想だけで言い掛かりつけないでよ!!!」


……まぁ、2人の喧嘩はいつものことなのだが、そうとは知らない四郎はただただ困惑するばかりだった。


しかも自分に関連することなのだから、無闇にどちらか片方の肩を持つわけにもいかない。


意を決して止める事に四郎は決断をし、割って入った。


「2人とも、このような場で諍いを起こしても何も益など得られぬ。デウス様も呆れられておるが故、ここはすぐに買い物を済ませようぞ。」


「そ、そう……ね、ごめんね、しろー君。あとさ、いい? 一個。」


「お、落ち着いてくれたのなら良かった。それで、言いたい事とは?」


莉夢は我に帰って四郎に頭を下げたのだが、その後の設問の解答がまさかの物であった。


「……カトリックのしろー君には言い辛いんだけどさ、ウチ……浄土真宗なんだよね。」


「まさかの相反する宗派であると!?!? り、莉愛殿、誠か!?」


「う、うん、本当なんだ。」 (なに余計な地雷踏んでるの、アイツ〜〜〜〜!!)


まさかのカミングアウトに四郎は驚きを隠せず、莉愛は爆弾発言をした莉夢に対して焦っていた。


「い、いやすまん、過剰反応した私が悪かった。それに、信仰の自由はしかとあるのだろう? ならば其方らの信徒が如何様であろうと、私は尊重する。だからどうか、私のことで気に病まぬようお願いしたい。」


「だ、大丈夫、分かってるから。それより荷物持ち、頼んでいいかな? しろー君。」


(結局はこうなるのか……)

 



 あまりにも変わり身の早い姉妹に半ば呆れながらも、四郎は荷物持ち担当になる事を了承し、帰路に着く道中。


3人は観光客と思しき外国人が道に迷っているのを発見したのである。

次回は四郎の逸話を披露すると同時に、四郎が日本で起こった事を学ぶ回にしようかと思っております。

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