「第3回下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞」参加作品シリーズ
雪だるまの助手ジョッシュ
俺は超売れっ子作家だ。
現在四つの連載を抱えているため、やむなく助手を雇うことにした。
「こんにちは!! 今日からお世話になります、ジョッシュです。助手のジョッシュ……ぷぷぷぷ」
なぜか、やって来たのは雪だるま。
まあ、それは良い、いや、良くはないがとりあえず置いておこう。
「……君は外国の方なのかな?」
別に日本人である必要はないが、コミュニケーションに不安があると困る。いや、そもそも人間ですらないようだが……。
「ハハハ、バリバリの日本人ですよ。家事全般はもちろん、趣味で小説も投稿していますので、そっち方面もお役に立てますよ。あ、一応書籍化しているので、商業雪だるまです」
雪のように白い肌に赤いマフラーが似合うジョッシュが自慢げに言い切る。
そうか、日本人なのか。商業雪だるまって何? 商業作家じゃないの?
ま、まあ、家事と雑用全般お願いしたかったわけだし、小説も書けるなら願ったりだな。
「わかった。よろしく頼むよジョッシュ君」
「……あの、ちょっと君呼びはやめてもらっても良いですか?」
「ああ、すまない、なんと呼べば?」
「助手のジョッシュで」
いや……長いんですけど。毎回ジョークを言わされているみたいで嫌なんですけどっ!?
「そうだな……間をとってジョッシュでいこうか」
渋る雪だるまをなんとか説得して、呼び方はジョッシュに落ち着かせることに成功した。
早速働き始めた助手のジョッシュだが、期待以上に有能だった。
料理は美味いし、掃除洗濯も手際よくこなす完璧超人……雪だるまだけど。
たった一つのことを除いては……。
「……寒いな」
そう、有能なのだが、雪だるまだけに暖房を入れると溶けてしまう。今は真冬なので部屋の中なのにマフラーと手袋が必要な状態だ。
「そうですか? ちょうど良いと思うんですけど」
雪だるまである君が快適ならそれは寒いんだよ。
仕方がないので更に厚着をする。こんなにもこもこになったのはいつ以来だろうか?
ああ……何だか眠いんだ。父さん、母さん……。
今日は記録的な寒波が来ているらしい。せめて窓を閉めてほしい、意識が朦朧としてくる。
「御主人さま、眠そうですね、コーヒーでもいかがです? 目が覚めますよ」
おおっ、ジョッシュ、気が利くじゃないか!!
淹れたてのコーヒーを一気に飲み干す。
ジョッシュ……無駄に美味いアイスコーヒーだな。次からはホットで頼む。
あとメイドじゃないんだから、できれば御主人さま呼びはやめてほしいな。