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フラーズダルム

作者: 青春病患者

どこにでもいるカップルのどこにでもあるような物語です。

彼氏目線での話になっています。

話がまとまらなく、右往左往しているところを動揺している気持ちと捉えて読んでいただけると、少しは面白い作品になれると思います。

 それはレイピアのように鋭く、ロウソクに灯る火のように尖っていた。



 冬の海辺で吹く、冷たくも荒々しい、北風よりも突き刺すそれで、君は何を見ているのだろうか。


 いや、何を見ていたのかはわかっていた。確たる証拠はないが絶対的な自信はあった。



 ただ、ここで聞いてはいけないと、私の中で何者かが囁いたため、僕は彼女の目線に気づかないふりをしながらプリンをスプーンで崩す。



 口の中に入れた瞬間にわかる。上質な卵を使っているのだろう。それもかなりこだわってるに違いない。

 優しい甘さの中に卵本来の味がしっかり存在している。しかし、甘さばかりを見ていると、横から来た上品な苦さのカラメルソースにあっという間に持っていかれる。



 まるで雪だるまとマフラーの関係のように、対のようで、なくてはならない存在だ。



 こんな拙い食レポを心の中でしていれば、目線の行方なんて忘れられるような気がした。が、到底無理だった。



 無理だなんてことはわかっていた。わかってはいたが、こうする他なかったのだ。

 自分の気持ちを何かで包んで誤魔化しておかないと心の形が変形するのがわかっていたから。



 海の見えるカフェで貴方は過去を覗く。

 席が空くのを待っている人たちを数えるふりをして君は過去を探す。



 きっと気づいていないと思っているのだろう。

 残念ながら、こんな時こそ気づいてしまうのが人であり、何より恋人なのだ。



 「もう素直に聞いてしまえ」とどこからか聞こえてくる気がしたが、それは禁忌だ。



 確かに、素直は素敵なことだ。

 しかし、この世の中、素直な人こそが自分の着ぐるみを窒息するほど着込まなければならない。



 そのため、その圧迫された空気に慣れた時にはもう純なる自分は死んでいる。


 こんなことを言うと「じゃあ親もどこかで死んでいるのか」と疑ってしまいそうになるが、我々子にとってはこの世界に出てきた時に見た親の顔が本物なのだから疑う余地はないのである。



 先程と同じだ。

 こんなことを考えていないと誤魔化しきれない。



 心は突き刺され、燃やされて溶けるようにグチャグチャになっていた。



 溶けた心を必死に握り締めながら、大雑把に形を整える。



 君は何を思いながら過去を覗き、何を考えて過去を探すのか。



 さて、この後は何で心を覆おうかなどと考えながら、降る雪よりも冷たく真っ青な君のその視線を見つめながら僕は口を開く。



 「ここのプリン美味しいね」

いかがだったでしょうか。

貴方がこの作品と向き合った時間が少しでも心動かされたものになれば幸いです。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

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