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ヒューマンヘイトワンダーランド  作者: L
四章 獣王国進撃編
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九話「実験開始①」


「君の体の症状は僕から見ても少し珍しくてね。有能な才能がつぶれるのは僕としても喜ばしくない。これからも君には付き合ってもらうよ」


ペトラは、そういってセーリスクの体に触れる。

なにやら観察されているペットのような気分だ。

気持ちのよいものではないなとセーリスクは感じた。

しかしどうやらそれによって発見するものがあったのか、彼女の顔は喜びに包まれていた。

彼女は、自身を自分の魔法道具の実験体としか思われていない様であった。


プラードは、溜め息をつく。

それは、セーリスクに対する慰めであった。


「こうなったペトラは、必ず結果を出してくれるさ。あまり気にするな」

「そうですか……」


セーリスクは、ペトラという人物がよくわかっていないがプラードがそういうのであれば必ず自身のこの症状を治してくれるのであろう。

満足そうにメモをとるペトラは喜びに満ちていた。

彼女は、セーリスクに向かい



「君は、僕の実験体としては最適だね!今後とも仲良くしたいよ」

「言い方を気をつけろ……」

「え??都合のいい関係を始めたいとか」

「もっと悪いな……」


プラードは、ペトラのセーリスクに対する意識の向け方に頭を抱えた。


「すまないな、セーリスク君。誰に対してもこんなやつなんだ」

「いや、きにしないでください」


プラードは、ペトラに関してセーリスクに謝罪をする。

セーリスクはペトラに関して、気持ち悪さを少し感じていた部分もあるが好奇心の方が勝っていたのであまり気にすることはなかった。


しかしプラードは、謝罪しながらもどこか違和感を感じているようでもあった。


「いや……それでも君のようになるのは珍しいな」

「そうなんですか」

「ああ、そうなんだ。いつも興味を惹かれても、大体薄れることが大半だからな」


それに対し気に食わなかったようで、ペトラは反論をする。


「だからいっているだろう。彼のように、魔力に対する身体がある程度できているのにこうなるのは珍しいんだって」

「なるほど……」



まあ、珍しいからこそこのようにペトラのような稀有な人材を充てられているのだろう。

そうでもなくても、自分にはペトラを見てもらうだけの価値があるというとこだろうか。

もしそうだとしても、こうしてペトラの人格に触れてみると少し不安だ。


そんなことを思案していると唐突に彼女はとある発言をした。

それは、セーリスクにとって予想外のものだった。


「一回やり合おうか。戦闘方法を見せてもらおう。話はそれからだ」

「やり合うってプラードさんと?」

「ふむ?それもいいが……まだ彼の身体が改善してからの方がよくはないか」


やはり自身の魔法を改善するための魔法道具だから一回戦闘をみせなければいけないのか。

しかし、自身の身体の状態は自分ですら把握していない。

プラードとの戦闘でまた調子を崩さなければいいのだが。

ぺトラは、セーリスクの発言を否定する。

それはセーリスクにとって少し意外なものであった。


「ああ、違う違う。それも魅力的だけど、今回はボクとだ」

「ペトラさんと?」

「ああ、そうだ」


セーリスクは少し、顔をしかめてしまう。

それは、ペトラは侮辱する意味でもなかった。

単純に彼女の体のことが心配になったのだ。

セーリスクの操る氷の魔法は、たとえ当たらなくても体には大きな阻害を与える。

現在、ペトラは健全とは言い難い様子であった。

これ以上悪化するのもどうかと思ったのだ。

同じくプラードも同じく良い表情を浮かべていなかった。


「もしかして、僕の体の心配かい?」

「ああ…‥」

「ふふ…‥十年はやいよ」


ペトラは、自身の服のポケットからあるものを取り出した。

それは、なにか紋章のようなものが刻まれた宝石だった。


「フルバトルゴーレム起動」

「これは……」


それはゴーレムだった。

土の魔法により形成された泥の人形は、人の形をという物を明確に再現しており

そこには生命の息吹という物を感じた。


「実は僕の家系はもともと魔法道具じゃないんだ。元来は、ゴーレムだけをつくりそれを売る一族だった。しかし僕の才能はそれ以外にも輝いた」

「かっこいい……」


少年らしい一言ではあったが、そのゴーレムの外郭は男心をくすぐるような。

そんなつくりとなっていた。

外見は決して貧相なつくりではなく。

この機体ひとつに多大な労力と心血が注がれていることがみて取れた。


そのゴーレムに、どこか敬意のようなものを感じたのも当然のことだろう。

たかが無機物に過ぎないのにそれほどの覇気を持っていた。

それは、優れた技術と長き研鑽により作られたものを拝見した気分。

そういったものをセーリスクは心で浴びていた。


「惚れ惚れする出来だな」

「そうだろう。自身の一品さ」


プラードの誉め言葉は決してお世辞ではなかった。

彼女の作品は、兵器としても芸術としても完成していた。

彼女もそれを自覚しているのか、堂々と胸を張ってその言葉を受け取っていた。


「で?どうするんだい?セーリスクくん」


挑発するような口調と目つきで彼女はセーリスクを眺めた。

彼女が自身を焚きつけているのなんて明らかだった。

しかしこれを断るわけにもいかない。

少しでも現状の自分が知りたいのだ。

これを逃すわけにはいかない。


「……壊れても文句を言わないでくださいね」

「ほう。君もいうねえ」


彼女は、自身の近くにたつゴーレムに触れセーリスクを強く見つめる。


「さあ。構えなよ」


その瞬間、ペトラの視線とセーリスクの視線は交差した。

空間がはじけ、敵意が走る。

彼女は、自身に攻撃を向けようとしている。

そういったものがありありと読み取れた。


彼女の言葉により、セーリスクは魔法の詠唱を開始しようとした。

しかし後ろからなぜか威圧感のようなものを感じた。

それは、獣の怒りだった。


「盛り上がっているところ悪いんだが……ここでやるな。外にでろ」

「ごめん……」

「すいません」


二人は、瞬時に謝罪の態勢をとる。

プラードから漏れだす怒りの闘志に二人は何も言うことができなかった。

しかしその怒気は即座に消えた。


「まあ、いい」

「はい?」

「いいだろうといっているんだ。私も君の実力は正確に測りたい」

「話がわかるじゃないか」

「もちろん君らが全力で実力を測るといっていたら殴ってでも止めていた」

「うっ……」


ペトラは、全力でやるつもりだったのだろう。

少しプラードには痛いところを突かれたようだ。

ペトラはバツが悪そうにそっぽ向いていた。


「条件がある。このままではいけない」

「条件?」

「なんだろう。言ってみなよ」


ペトラは、先ほどまで怒られていたというのに、自信満々な様子は崩さず上から目線の言葉遣いを続けていた。

この様子からセーリスクは、この二人は長い付き合いなのだろうなということが読み取れた。

実際プラードもそこにはふれていなかった。


「条件といっても、ごく当たり前のことだ。ペトラは全力は出すな。セーリスク君は、魔法だけでペトラの攻撃を全て凌いでみせろ」

「魔法だけで……」


プラードの言っていることは少し予想外だった。

自分の実力は、まだプラードも把握しきれてはいないだろう。

しかし彼は魔法だけでという。

だがそうなると魔法による体の影響がきになる。

むしろプラードはそこを明らかにしたいのだろうか。


「無論セーリスク君は、まだ目が覚めたばかりで本調子ではないだろう。むしろそれでいい。全力を出さず、魔法によってペトラの攻撃を打ち崩してくれ」

「なるほど……ウォーミングアップぐらいでいいのかな」

「ああ、二人ともそれぐらいにしておいてくれ」


ペトラは、戦闘ということは頭に外したようだ。

さきほどの提案でどこまで実力をだすかわからなかったが、ペトラもある程度手を抜いてくれることだろう。

しかしなぜかペトラはにやりと笑っているなぜだろう。

そんなことに気がついていないプラードは、


「君の状態で懸念するべき事項は魔法だ。よって身体能力だけで躱されても把握しようがない。まずは、魔法だけでの戦闘を見せてくれ」

「わかりました」



セーリスクはその言葉になぜか高揚感を覚えていた。

それは戦闘による命の奪い合いではないからだろう。

なぜか心地よかった。

純粋に自分の実力を知りたい。

そんな好意に触れていたからだろう。

ここで、実力を示せばまた何かしら良いことがあるかもしれない。

そうでなくても、自身の魔法の改善点が見つかる。

そういった喜びをセーリスクは感じていた。

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