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ヒューマンヘイトワンダーランド  作者: L
三章 多眼竜討伐戦
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二十八話「観戦者③」

「ウリエルとラグエル……【神の友人】と【神の光】が何の用だ」


「神の友人」と「神の光」その二つの名前は、法皇国における天使の通り名だ。

【天使】は英雄として、尊敬されアンデットから過去の遺物から人類を守る

法皇国の剣と盾になる。

アダムは、この二人がこの戦いに介入することを想定していなかった。

いやあえて計算のなかから弾き出していたといううべきか。

ともかくアダムにとって天使がいることは意外だった。

しかしそう呼ばれたその一人は不機嫌そうだ。


「貴様のような薄汚いものにそう呼ばれるとその名が汚れる。神への侮辱か?」


ウリエルと名乗った男は、吐き捨てるようにアダムに暴言を向ける。

人間にその名前で呼ばれたことが余程気に食わなかったようだ。

敵意と警戒心がその場にあふれる。

イグニスは緊張感で唾を飲み込んだ。


「そうだそうダ」

「いや言葉が弱いな君は」

「だって、ここで話し合っても意味がないだロ?どうせ捕まえるんだし」


一人だけマイペースを保っているものがいるが

その人物もアダムに対する厳しい対応は変わらないようだ。

アダムは、その二人を訝しがる。


「……法皇国の天使がなぜここに集まっているんだい?観戦なんて薄汚い趣味があるとは思っていなかったが」


どうやらアダムでさえ、天使たちの気配に気づくことはなかったようだ。

イグニスもそれにきづけなかった。

それともアダムは、気付いたうえで【天使】たちは

この戦いに介入することはないと考えていたのだろう。

ウリエルと名乗った大柄の男性は、アダムに問う。

それは、この世界における大罪だった。



「質問がある。アンデットの生成を確認した。答えろ貴様は、何者だ」

「何って、人間さ。真のね」

「真の人間だと?」


アダムは、頑として【人間】であることを主張する。

そこには、一種のこだわりがあるように感じられた。

その意味を理解することができず、ウリエルとラグエルには少し沈黙が漂う。

ラグエルは問う。


「人間?獣王国で行方不明になった最後の人間は、少女のはずダ」


最後の人間。

それは、確実にアラギのことなのだがそれが豊穣国にいることは法皇国は知らない。

アダムと、法皇国がつながっている可能性もあるがこの様子ではないだろう。

しかしそうなると獣王国の侵略と同時に、

法皇国がアーティオに【異端審問】(でっち上げ)した理由が見つからない。

それとも、法皇国と獣王国は互いに手札を隠しているのか?

連携が取れていない。

違和感を感じる。

そんな感想をイグニスは持つ。


アダムは、忌々しそうにため息をつく。


「君らにわざわざ説明するとでも?」

「説明させるに決まっているだろう?」

「君らはおとなしく法皇の命令を聞いてればいいのに」


何度も何度も、自分の計画が邪魔されアダムの顔には苛立ちが募っていた。

少なくとも彼は魔法を手元で準備している。

二人の天使は、アダムを本気で止める気でいた。

両者それぞれ個人の武器を構え、厳戒態勢をとる。

しかしアダムには最も気になることがあるようだ。


「それよりだ。なぜ【天使】が個人の争いに介入するんだい?違和感しか感じないが」

「人間ごときに答えるつもりはない」

「つれないな。モテないよ。君」

「そうダ。私たちは、この人を助けに来ただけダ」

「おい、なんで言った……」

「あ、……ごめん」


ラグエルと呼ばれた天使は、

その白い仮面で隠された顔に手を合わせる。

その様子は、自らの失言を隠す幼児のようであった。


やはり天使の片方は、どこか抜けているところがあるようだ。

アダムは、その発言を聞いてイグニスと天使に一体何のつながりがあるのだろうと考えていた。

目を瞑り思考する。


「……君、天使と知り合いなのかい?そうとは思えないが」

「……知らないな」


アダムはイグニスに確認をするが、

その様子には興味のなさが表れていた。

だがイグニスが即座にそれを否定する。


イグニスは、この二人とは知り合いだ。

しかしアダムはそれを知らない。

今後のことも考えると今そのことがばれる訳にはいかない。

それを察してくれるといいが二人の現在の立ち位置とアダムの関係が読めない。

だがそんな中、ウリエルが言葉を発する。


「今回、この場に訪れていたのは偶然だ」

「偶然ね。どうせ神の御意思とかだろう」

「アンデットが発生し、人を襲っているのならたとえ国が違っていても救うのが神の意思だ。お前に文句を言われるようなものではない」


そんな真面目な模範解答にいら立ったようで、アダムは拍手をする。

それは嘲笑うかのようなわざとらしい拍手だった。


「いかにも法皇国くさいね。実に虚無で無意味で下らない。顔も見えない神に祈って何がいいんだい?……まあ、いいか。今ここで天使二人とやり合いたくない。重要な戦力がつぶれたばかりなんでね」

「逃がすとでも?」


ウリエルと名乗った大柄の男は、大剣をアダムの首元に向ける。

アダムは、首に大剣を向けられたことで動きが止まるが

その挑発的な目と口は変わることがなかった。


「別にやってもいいんだけどね。僕にも都合ってもんがある」

「なにを……」

「魔術構築【衝撃】」

「ウリエル!」


ウリエルは、アダムの魔法により吹き飛ばされるが、翼により態勢を整える。

ラグエルは、そんなウリエルを心配するがウリエルは否定する。


「大丈夫だ!防御に専念しろ」

「わかっタ!」

「飛来せよ、岩よ!!【ウォラーレ・ルーペス】」


人の頭よりはるかに大きい一つの石が、詠唱によりウリエルの手元に生成される。

しかしそれに対する、アダムの対応は変わらない。

イグニスの魔法の時と同じように、魔術を構築する。


「気をつけろ。そいつは魔法から守る方法を持っている」

「さっきの戦いを見ていなかったのかい?」


そしてその手は、神々しく輝き魔法を発動する。

アダムの目の前には魔法を阻む透明な壁ができた。


「魔術構築【障壁】」


しかしそんなことを気にせずウリエルは、魔法を発射する。

それは、高速で発射された岩石だった。

当然一定以上の硬さを持っていなければ、

その魔法は致命となるだろう。

しかしアダムの魔法は違う。

全てを防ぐ防御の魔法だ。

それは果たして通じるのか。


そして障壁に当たる瞬間、ウリエルはラグエルに声をかける。


「ラグエル!!」

「うん!」


その時、ラグエルは大きなラッパを取り出した。

ラグエルは-ラッパを吹きだすとそのラッパからは軽やかでさわやかな音色が響きだす。

そしてその効力は、アダムに大きな結果をもたらした。


「構築が作動しない……?」


そう、アダムの【障壁】は生成されなかったのだ。

障壁ははることのできなかった。

アダムの体には、ウリエルの魔法が直撃することとなる。

口から大きく血を吐き出した。

人体にも多大な影響がでており、そのほとんどが傷ついていた。


アダムは自分自身に呆れるようにため息をつく。


「まずいなぁ……正直忘れていた。敵意を為すものすべてを封じる法皇国の国宝を」

「消えろ、人間よ」


大きくダメージをおったアダムに

ウリエルは大きく大剣を振りかざす。

飛翔し、高速で近寄った。


「うるさいよ、黙りな」


アダムは、魔術構築【衝撃】を発動する。

ウリエルは再び、アダムによってはじき返されることとなった。

その羽で飛翔していたはずが、衝撃により吹き飛ばされ

地面にたたきつけられる。

鎧が少し砕けていた。


「ウリエル!!」


さきほどより、強烈な威力の魔法を浴びたウリエルは立ち上がることができていなかった。

それに、ラグエルは歩み寄る。


「近寄るな!!警戒……を……」


ラグエルは近寄ってきたことにウリエルは強く拒絶した。

もちろんそれは、アダムの更なる追撃を警戒してのことだった。

彼女の道具があれば、どんな攻撃だって止めることができる。

今のメンバーで失ってはいけないのは彼女だ。


既に体の再生は進んでいる。

体に空いた穴は、その表面から再生を始めていた。

骨は元の場所に戻ろうと

強引に肉を破り形成する。

その歪な光景に、三人の動きは止まる。

アダムは、大きく嗤う。

その口に、真っ赤な血を垂らしながら。


「やっぱり、この体はもろすぎる。再生速度が高いのはいいんだけどね……」


さきほどまでの苛立ちや、戦闘が全くなかったかのように

アダムは三人に笑いかける。

それはいたってどこにでもいるような青年の笑顔だった。

その【普通】というものに

三人は全身に悪寒が走るのを感じた。


「君らとやり合うのは、別の機会にしよう。この死体もせめて貰っていくよ。じゃあね天使と剣士さん」


そういって、アダムは【転移】を発動する。

青白い光が、発光し姿が見えない。

それを追おうとするウリエルをイグニスは止める。

やがてその光は消えていった。

この戦いの元凶であるアダムとゾラの死体は去る。

争いの後だけがその場に残る。


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