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ヒューマンヘイトワンダーランド  作者: L
三章 多眼竜討伐戦
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八話「異端問答」

「それでご客人、突然きてご用件はなんじゃ?」


豊穣国女王デア・アーティオはその玉座に座りながら客人を見下す。

その客人が、連絡もなく自らの国にやってきたからだ。

逆にいえば、その客人は突然来ても大丈夫な地位にいるということ。

客人は二人いた。

一人は、細身な筋肉質な男。

二人は、頭の被り物から白い髪を垂らした女性であった。


客人は簡潔に要件を伝える。


「あなたが我ら法皇国における神の敵ではないかという疑惑が持ち上がっております」


法皇国からきたという男がそう語る。

神の敵。それは法皇国における異端であるということ。

法皇国は、アーティオに異端審問をかけていた。

理由はいくつかある。

もともとアーティオは謎の多い女王であった。

亜人の寿命を大きく超えた年齢。

そして出自を知るものが誰もいないということ。

一部では、この世界における古代の神の血を継いでいる【神血】と呼ばれ

宗教的な信仰も集めている女王。


近頃アンデットが少なくなってきたこともあり、

法皇国の求心力は以前よりかなり落ちていた。

それに加えて豊穣の女王の庇護下に入ろうと考える移民は多い。

法皇国にとってデア・アーティオは目の上のたんこぶなのだ。

さきほどの二人組と同じ格好をした細身の男性がアーティオに話しかける。


「ふんっ、ばかばかしい。貴様らの神も本当に存在するのか疑わしいものじゃ」

「どういうことだ。アーテが法皇国における敵だとでも?」


プラードが怒りをあらわにしながら、法皇国の男に質問をする。

しかしその男は、意に介していないようだ。

興味もなさげに、質問をする。


「獣王国の王子よ。貴方こそこの国にいてもいいのですかね?あなたはは獣の国の頭にいるべき存在だ。道草を食っている場合ではないのでは?おや、失礼。貴方は草も食えない獣でしたね」


この男は、獣人をバカにしているのは明らかだった。

獣とは大きく離れた獣人を動物並みだとバカにしている。

そんな気持ちが漏れていた。



「わざわざ愚弄しているのか?ご苦労なことだな。それに私はもう獣王国の立場を捨てた。もう関係のないことだ」


プラードは、吐き捨てるように男に言葉を返す。

既に舌戦ははじまっているようだ。


「それより……どこから神の敵であるという判断をした」


アーティオは本題を切り出す。


この世界における法皇国の判断は重い。

神の敵だと判断されたならば尚更だ。

アンデットが今よりも多かった時代の話。

法皇国を中心としてアンデットを討伐するという軍が編成された。

そのとき多くの国は法皇国を敬い尊敬した。

その時の名残は、現代にも強くのこっている。

法皇国周辺には、 

属国とならずとも強い信頼関係をもっている国が多く存在する。

また天使信仰はそれらの国からなるものだ。

今この場で、神の敵として判断された場合。

豊穣国は、法皇国における【天使】の名を関する者はすべてが

全力を持ってアーティオを叩き潰しにくるだろう。

それは、蝿のようにいやらしい存在として。


もちろん、法皇国はわざわざそんなことを口に出して言ったりはしない。

あくまで一つの正義として勧善懲悪するのだ。

それは外野からみたらとても気味がわるいものだ。

アーティオとプラードは、理解しがたい気持ち悪さを感じていた。

細みの男は話しだす。


「獣国の進撃。とても悲しいことですね。しかしそのなかで我々は、ある情報を手に入れました」


わざとらしい演技を、その細みの男性は会話のなかで挟む。

おもわずプラードは、イラっとしてしまったがそれを出すわけにはいかない。


「ある情報?」


法皇国がなんの情報をかぎ取ったか、それによって事情は変わる。


「ええ、それはこの王宮内にアンデットが誕生したという情報です」


なぜそれを知っているのか。

一瞬、そんな思いで心が動揺する。

しかし二人は、それ顔に出さない。

男は続けて話し出す。


「通常アンデットは、このような場所に生息しない。まあ、当たり前ですね。しかしアンデットはこの王宮で誕生した。不思議ですね。実に不思議だ」

「ようは何がいいたい」

「豊穣の女王よ。貴方は、人間の技術を模倣しアンデットを誕生させたのではないですか?」


男の口はまるで頭の中に台本があるかのように紡がれる。

いや実際に台本があるのだろう。

どこかで情報がながれ、

それを法皇国が都合よく利用しようとしていると考えるのが自然だろう。

そうとなると、獣王国のだれか。

もし獣王国と法皇国が、豊穣の女王の殺害を狙っているとしたら

これからの盤面はとても不利になる。

亜人と獣人との関係で、仲たがいをしがちな

この二国が手を組むだなんてそもそも

頭に入っていなかったとアーティオは、一瞬苦い顔をする。

恐らくプラードも、このタイミングで法皇国が介入してきたことに驚いているだろう。

自身の国まだそんな柔軟性がのこっていたなんて。

そんなことを考えているだろうと考えた。


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