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ヒューマンヘイトワンダーランド  作者: L
三章 多眼竜討伐戦
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四話「豊穣国への改名」


部屋の扉がコンコンとなる。

どうやら客人のようだ。

その音によって、その場の張り詰めた空気は消える。


「女王様宜しいでしょうか?」

「入れ」

「お久しぶり。イグニスさん。対面では初めてだね」

「その声は……ペトラさん……?」


車いすでエリーダによって運ばれたペトラが出てきた。

その体は、左腕がなくなっており、右目にも眼帯をしていた。

かすり傷などの小さい怪我は見られなかったが

それでも重大な損傷は深く見なくてもはっきりとわかる。

この女性はまさに命を懸けたのだと。


「ごめんね。マールちゃんは助けられなかった」

「いいんだ……むしろ俺がいけなかったことが悔しい」

「ペトラさんはなんとか話ができる状態まで治しました。それとこの子が骨折りさんに会いたいと」


「骨折りさん…‥」

「どうしたんだ。アラギ」


アラギと呼ばれた人間の少女が骨折りに抱き着いてくる。

骨折りもその頭をいとおしそうに優しくなでる。

イグニスは、その様子をみて自身と、マールを重ねる。


「骨折りさん、あそぼ」

「ごめんな、今は大事な話の途中なんだ。それが終わってから話そうな」


明らかに骨折りの口調は弱まった。

それは戦闘の様子からは想像できないほどであった。


「骨折りも修羅ではないということか。大切にするものができた分やわらかくなるとよいだがな」

「この子を無条件で預けられるのは、この国だけだ。少なくともこの国がなくなるのは俺としても困るんだよ」

「その子の世話をしてた僕の身にもなってよ。実験の途中にも容赦なく預けるんだから」


ペトラはそんなことをいいながらも苦笑する。


「その子が……人間か」

「ああ、イグニスは初めてだな」

「初めまして……えっと名前は」

「アラギです。骨折りさんが付けてくれたんだ」

「そうか。アラギよろしくね。私はイグニス」


イグニスのその口調は、まるでマールと関わっているときと変わらなかった。

イグニスは、マールとアラギのことを重ねているようでもあった。

しかしその場にいるものは、イグニスとマールの関係を深くはしらない。

故に気付くことはなかった。


「イグニス、法皇国での人間への考え方はどんなものなんだ」


骨折りは、イグニスに法皇国の人間の考えかたを聞く。

イグニスは、少し考えながらも言葉をだす。


「いや、そもそも人間がおとぎ話みたいなものだからな……過剰な反応を示すのは獣王国ぐらいなものだろう。それでも敬虔な信徒はやはり人間のことは気に入らないだろう。なにしろアンデットを生み出した神の敵なんだから」

「そうだよね……」


半獣は、現存する劣化人種の差別が主にあった。

しかし人間に対する差別は、かつて追い詰められた、

苦しめられたという物からきている。

それは、得体のしれない恐怖心に近い。

憎しみ、憎悪と一言でいってもその種類が違う。


「違うんだ。今の君に言ってないんだよ」


焦りながらも、イグニスは先ほどの発言を撤回しようとする。

実際本意ではなかった。

人間という種族と相対するのが初めてなので気を使うことができなかった。


「しかし人間が他にもいるとは思わなかった」

「ペトラ、骨折り。その男は本当に人間だったのか」

「ああ、あれは亜人でも獣人でもなかった」

「魔法の使用は見られた。でもあれは魔法と表現できないほどの高等なものだ。アンデットと同じ人間の生み出した技術だ」


最強と呼ばれる骨折りがそう発現し、魔法分野ではペトラがそれに賛同する。

両者、真剣に手を合わせた。

その発言に虚言はないだろう。


「アラギを処刑しようとした。獣王国がなぜまた別の人間を持っているか想像がつかないな」

「多眼の女性の発言を信じれば、人造の子か……マールちゃんをさらわれたことといい気味が悪い」

「静まれ、お主ら。獣国を相手にしなければいけないのは変わらない。そして我が国が庇護するべき民も傷ついた。迎えうつぞ」

「それは、獣王国とやりあう決心がついたということか?」

「違う、だが獣王とは道をたがえた。いまよりこの国は【中立国】から【豊穣国】に名を戻す」





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