表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒューマンヘイトワンダーランド  作者: L
二章 異物の少女
42/231

三十七話「歪なる回帰」

骨折りの背後からは、歪な音が聞こえた。

肉と肉が、骨と骨がぶつかりあうような気色の悪い音であった。

もし自分の想像があっていればと骨折りは、恐怖する。

背後を見た。

その光景は異常なものであった。

強い生命力によって人体の損傷。

そのほとんどを修復していたのだ。

出血していなかった訳ではない。

現に人間の服装には、血が付着しておりところどころ破れていた。


「人間の技術には、いくつか消失したものがある。それは科学と魔法の融合。君の鎧と同じだよ。君がどうやってその鎧を手に入れたかはしらないけどね」

「なるほど……そう簡単に事は運ばないか」


骨折りは、自身の鎧に触れる。

どうやら自身の装備まで把握されているようだ。

少女以外の人間であることを加味してもこの男性は得体が知れない。

人間は、自身の首を揺らし、コキコキと音を鳴らす。


「頂点にたつものだ。人間の残した技術に触れるタイミングがあったんだろう。だが骨折り。君ですら僕にとっては欠陥品だよ」

「欠陥品ね。哲学には興味がないんだ。俺」

「強さにおいて君は一つの極みだろう。だが生命体としてあまりに不純物だ。不愉快なんだよ。君」


その瞬間、人間が消えたように見えた。

否、高速で移動していたのだ。


「とっとと、盤上から消えてくれ」


人間はそう発し、骨折りに【衝撃】による一撃を与えようとする。

しかし骨折りは、それさえも防御した。

骨折りは、剣による攻撃で。

人間は、衝撃を与える魔法、自身の素手による攻撃で

殴打を加えようとする。

しかしお互い痛恨の一打にはいたらない。

骨折りは、内心焦っていた。

どこまでもそこがみえない。

敵の一撃。

まるで骨折りの攻撃が見透かされているようだ。

ときおり攻撃に入ってくるネイキッドの見えない一撃も

恐ろしくタイミングがいい。

恐らく二人とも自身に匹敵する強者だろう。

イグニスでもこの二人それぞれ相手にしたとしたら状況下では勝てない。

この場に自分が来れて良かった。

そう思わせるほどの強者であった。

このままでは、ジリ貧だ。

一瞬だけでも、自身の最大火力を二人にぶつけなければいけない。

骨折りは、自身の剣を大きく振り二人を引きはがす。


「おや……君らしくないね」


人間は、骨折りから距離をとる。

いくら大振りとはいえ、

骨折りの攻撃ではあたった場合瀕死まで持っていかれる。

アダムは骨折りによる追撃だけは避けたかった。

ネイキッドは、あくまでアダムとの連携がなければ

骨折りに攻撃を与えられないと考えているのだろう。

突如として再び姿を現す。

骨折りからしたら近距離の状態から脱しなくてはいけなかった。

これは好機だ。

そうして得た時間により魔法を詠唱する。


「灰燼に帰せ。命を晒せ。炎よ、全てを破壊せよ。【ぺルド・フランマ】」

「おや……本気だね。シェヘラザード」

「はい」


骨折りは今までの中でも特段大きな火球を生み出した。

その火によって血まみれになった城内には、

表面がひりつくような空気が生まれる。

しかし人間は、少しの動揺は見えたものも特段焦りは見られなかった。

なぜならシェヘラザードと呼ばれたその褐色の女性によって、

火球は消されてしまったのだ。

膨大な熱量が消滅してしまったことにより、

軽く風圧のようなものが両者に訪れた。


「ご主人様、要求には答えられたでしょうか?」

「ああ、十分だよ。さすがにあれをくらったらまずそうだしね」

「なるほどな。最初から三体一だったってわけだ。姿が消えるお前すらもブラフか」


ネイキッドは、呼びかけられたものの無視をする。

姿が消える魔法を使える人物がいることに意識を向けさせて、

そもそも常時姿を隠している人物を気付かせない。

完璧な伏兵だ。

恐らくこちらの最大火力を防ぐこと。

それだけのために隠れていたのだろう。

もしくはとどめを刺す際の切り札か。


「悪いけど、こっちは手段をえらべなくてね。君は徹底的にやらないと勝てないと判断している」


骨折りに話しかけている人間にシェラザードは耳元にささやきかける。


「ご主人様。報告があります」

「おや、なんだい?」

「どうやら、門に向かったコ・ゾラが敗北したようです」

「なるほど、なるほど。どうやら腕のいいやつがそこにはいたようだね」


骨折りは気付く。

そのコ・ゾラに勝ったのはイグニスだろうということに。

幸いだ。恐らく戦力のほとんどはこの城に集中している。

自分さえ負けなければ中立国の柱が崩れることはない。

それにこの城には、獣国の王子がいる。

彼さえいれば中立国の女王に手を出されることはない。


「うまくいかなかったようだな」

「そうだね……こうなると無理やりにでも君を倒さなければいけないといいたいところだが。今回はやめておくよ」

「おい、引くのか?」

「ああ、これ以上はメリットがない」


骨折りからすると好都合だ。

このまま引いてくれる分なら、立て直しがしやすい。

これ以上手出しをすることはない。

これはあくまで防衛戦なのだ。


「ああ、そうそう。僕の名前はアダムだ。ピースメーカーと女王様によろしくね。また来るよ」



そういい、混乱の元凶たる三人は魔法による転移によって帰っていったのだった。

そこにはただ混乱だけが残っていた。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ