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ヒューマンヘイトワンダーランド  作者: L
二章 異物の少女
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二十九話「絶命の拳①」


「お初にお目にかかる。中立国の住人よ。すまないが拙僧の糧となってくれ」


そういったのは、上半身裸のトカゲの獣人だった。

武人のような男で話し方にはどこか癖がある。

いきなりの爆撃で、多くの門番たちが傷を負っていた。

その周りにいた商人たちも多くが傷ついてしまっている。

ここは何とか話で時間をつながなければいけないと門番の一人カウェアは考えた。


「先輩、大丈夫ですか?」


セーリスクは、自身の先輩であるカウェアに対し質問をする。

セーリスクも同じようにかすり傷などの軽傷を負っていた。

カウェアは、セーリスクが軽傷であることに安堵していた。


「大丈夫ですよ。セーリスクあなたは傷を負っていませんか」

「悲しき事よ、返事がないとは。それとも中立国の住人はこれほどまでに貧弱なのか?心躍る強敵がいないとは」

「獣人よ。あなたは何のためにこの場所を攻撃したのですか?」


火薬でも、魔法でもまた爆撃されてはこっちが一方的に不利になる。

なんとかして目的を聞きださなければ。

しかしその獣人は嫌悪感を丸出しにし、苦い顔をする。


「獣人という呼び名はやめろ。それは個を害する。拙僧はコ・ゾラ。コ族のゾラだ」

「では、ゾラさん……質問です。なぜ私たちを攻撃したのです」

「目的はいえん。情報戦は好かん。ただ拙僧は、強き友を蒼穹に求めるのみ。戦え剣士よ。こうして死線で出会う友よ」

「話は通じませんか」


幸いこのゾラという相手は単騎でここに乗り込んでいる。

自分一人でも対処できる可能性はある。

元々ここの門番はそれほど多くない。

まず先ほどの爆撃で、けがをしたものと、気を失ったものがいる。

必然的にそれの救助で尚更人手は足りないだろう。


「セーリスク!君はすぐさま引いて増援をよんでくだ……」

「退屈だ。よそ見をする暇はないぞ」


ゾラは、カウェアに拳の一撃を入れ込む。

しかしカウェアは、その一撃を剣によって防いだ。

獣人の硬き鎧のような皮膚は、剣の刃をたやすく止める。

これだから獣人は嫌だと、カウェアは考える。

いくら魔法で亜人が獣人に優れていようと、身体能力やその動物的特徴は

接近戦において無類の強さを誇る。

おそらくこの獣人もその特徴を生かした武道家のようなものだろう。


「ほう、止めるか。良き友に成れそうだ」


ゾラは、にやりと楽しむような愉悦するような笑顔を浮かべる。

カウェアは、まずいと思った。

先ほどの一撃でこの敵が自身を上回っているのは明白。

しかし自身がここで引けば恐らくこの先に住んでいるものは殺されてしまうことだろう。


「ではもう一撃」


怒涛の拳撃が、カウェアを襲う。

しのぐので精いっぱいだ。


「貴様、獣人との戦闘経験がないな」


ゾラは宙を回り回転蹴りをくらわすかと思ったら、尾による一撃を入れてきた。

まるで金属の塊をそのままぶつけられたかのような経験したことのない一撃であった。

その一撃により地に打ち付けられる。

呼吸はできなくなり、息はとまる。

脳の思考を止めるほどのp威力であった。


「獣人の特長に慣れることができないものは多くいる。やはり友にはなれぬか」


ゾラがカウェアに対し、とどめの一撃を指そうとする。

ここまでかとカウェアが考えた時、とどめの一撃を防ぐものがいた。


「セーリスク!なぜ……」

「先輩……こいつは僕からみてもやばいです。なんとか二人でしのぎましょう」

「だが……」

「他のところも攻められています。こいつを二人で倒し切らないと他に負担が出る。家に奥さんと赤ちゃんがまってるんでしょう」


どうやら自分には足りないものが多くあったようだ。

それを後輩のセーリスクに気付かされるなんて自分はなんとも

情けないのだろう。


「精一杯あがこう。それが未来のためになる」

「はい!」

「感動的だな……」


その男は空を仰ぎ泣いているようにみえた。

その慟哭は、戦闘で見るようなものではなかった。


「自らを認める友のために死に挑むとは感動的だ。

さあ、ともに殺し合いをしよう。時を忘れるほどに」


獣人とセーリスク、カウェアの戦いはまだ始まったばかりだ。

獣人の力は、二人の力を足しても勝てないのではないかと思うぐらい強大だった。

二人でタイミングを合わせ、

それぞれの剣をぶつけてもその鉄骨のような太き両腕でいとも簡単に防いでしまった。

剣が砕けるほどの一撃は、加えてこないがこのままではジリ貧だ。

どこかで皮膚のやわらかい箇所に大きな一撃与えないと勝機はない。

そうセーリスクは考えた。




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