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ヒューマンヘイトワンダーランド  作者: L
二章 異物の少女
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二十八話「混乱の始まり」

シャリテ宅にイグニスと、骨折りはいた。

この家に来るまでの時間でお互いの顔を見飽きていた。

しかしその時間のせいかなぜか妙な親近感がわいていた。


「おかえりなさいませ。イグニス様。ご無事だったのですね……その方はご友人のかたでしょうか?」


メイドが二人を出迎える。

朝からいなかったイグニスのことを心配におもってたようだ。

メイドのその顔は感激に満ちていた。

しかし知らない男性を連れていたことには素直に疑問に思っているようだ。

当たり前だが、骨折りのことは知っていても姿を知らない者はいる。

それゆえメイドは、骨折りをただの知り合いだと思っていた。

メイドが、イグニスに骨折りのことを聞く。


「ああ、そうなんだが……」


イグニスは言葉に詰まる。

シャリテをさらった張本人が目のまえにいるんだなんて口が裂けてもいえない。

そんなイグニスの気を使ったかは知らないが、骨折りが本題を出す。

今回は、マールを連れに来たのだ。

マールと会わなくては、話が始まらない。


「ああ、ちょっとマールちゃんと会いたくてね。マールちゃんは今いるかい?」

「ああ、マール様に御用があったのですね。ですが……マール様は出かけておりまして」

「出かけてる?」


どうやら、マールは出かけてしまったようだ。

骨折りはめんどくさいなという感情をうかべた。

それに反しイグニスは無事だろうかという保護者の顔になっていた。

メイドはマールが誰と行ったのかについて伝える。

心配しているイグニスの気持ちを察してくれたのだろう。


「執事長のアカンサスさんと一緒に買い物に出かけていますよ」

「買い物か……どれぐらいでかえってくるかな」


特段急ぎというわけでもない。

しかし今、エリーダの許しを得て外にでている状態だ。

早いには越したことはない。


「お急ぎの用事でしたらそこのバザールで探すのもいいとおもいますよ」

「バザールにいるのか」

「どうする?探すか?」


メイドが、シャリテの宅から少し離れている

バザールを指さす。

イグニスと、骨折りは二人とも

その指さされた方向を見る。


「そうだな……いつ帰るかわからないなら探した方がいいか」

「そうだな、探すか」

「ありがとうございます。ではマールを見つけたらすぐに帰ってきますね」


イグニスはメイドに手を振り別れを告げる。

メイドは、にこやかな笑顔でイグニスに手を振り返す。

その顔に悪意などは一切感じられず

イグニスの胸には温かい感情というものが湧いた。


「ええ、お二人が見つかったらお茶でもしましょうね」


メイドからのイグニスの心証は芳しいもののようだ。

そんなことに安心感を浮かべながらもイグニスはマールのことに切り替える。


「お前って変わってるよな」


骨折りは、イグニスのことを変わっていると評価する。

イグニスはその言葉の意味がいまいち理解できなかった。

どういった意味か質問をする。


「何が?」

「いや、特殊な環境下にいたやつって日常になじめないんだよ。どこかで違和感を感じちまう。お前はそうじゃないんだなと感じただけだよ」

「そうか……」


二人は、そんなことを話し合っていた。

骨折りにも、独自の経験があるのだろうか。

それとも自身と誰かを重ねているのだろうか。

そんなことをイグニスは考えた。


二人はシャリテの館を出た。

だが異変はそこで起こった。

王宮と入国門。

そこの二つで大きな爆発が起こったのだ。

轟音が、イグニスと骨折りの耳に届く。


「なに……!?」


イグニスと、骨折りはその爆破に驚くがすぐさま状況を判断することに努める。

辺りのひとは一目散に自身の自宅まで逃げ帰ってるようだ。

多くの悲鳴と動揺が辺り一面に広がる。

やはりイグニスの心には先ほどの予言と獣王国の戦争がよぎる。


「まずいな……早すぎる……」

「骨折りは、今何が起こっているのか知っているのか?」

「おそらくだが、獣王国が攻めてきてるんだ」

「なんだと……じゃあマールをさがさなくちゃ……」

「待て、マールに関していえば大丈夫だ。対処を取ってくれるやつが一人いる。だがまずいのは、王宮と入国門だ。王宮には俺と同じぐらい強いやつがいるがそいつは王宮全体を守れないから俺が行く必要がある。それはいい。だが入国門……俺の予想だが敵が来たら、門番とそこらへんに住んでるやつ全員死ぬぞ」


マールか、この国の住民か選択しなければいけない。

そんな瞬間が来てしまったのだとイグニスは悟った。

戸惑いながらも、イグニスは決断をする。


「わかった……俺が門に行ってくる」 


それはマールを選ばないという選択だった。

骨折りは、それに静かにうなずく。

イグニスが、自身の事情を受け入れてくれたことによる

感謝も少し感じた。


「ああ、おれは王宮にいく。俺がいくなら被害はでないよ。だがその前に……」


骨折りは、イグニスに注射のようなものを手渡す。

イグニスは、それがなにかはっきりとしないまま受け取る。

これは一体なんだろうかと疑問におもう。


「なんだこれは」

「痛み止めのようなものだ。戦闘中痛みに耐えきれなくなったらそれを使え。昨日はすまなかったな」

「ありがとう」



いままで素性も見えてこなかった骨折りの優しさが垣間見えたような気がした。

感謝と焦りを抱え、イグニスは入国門のところへと走っていた。


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