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ヒューマンヘイトワンダーランド  作者: L
二章 異物の少女
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閑話「ライラックの憂鬱①」

食事処の看板娘「ライラック」。

どうやら彼女には悩みがあるようだ。

シャリテ家のメイド「フクシア」、

中立国の門番「カウェア」が相談に乗るお話。


ここは中立国アーリア。

亜人、獣人、妖精。すべて否定することなく。多くの移民を受け入れる国だ。

そのため、中立国における門番の仕事はとても忙しい。

偏見を持たないための教養もある程度求められるが、

国においての入り口を守るための存在なのである程度の武術も求められる。

そのため他の国とは比べある程度の実力を求められるのだ。

今日も、門番たちは働く。

それは、自身が生まれた国を守るため。

それは、自身を受け入れた国を守るため。

しかし疲労はたまる。

国を守るという対価は軽くはない。

その疲労を消すために、門番は癒しを求める。

ここは、食事処「豊饒の大地」。

門番たちが、食事をするのはここだ。



そこで働く少女、紫髪の亜人。ライラックは悩んでいた。

それは色恋沙汰である。

彼女は自身の恋について悩んでいた。


「どうしよう……」


彼女はここ、「豊穣の大地」の看板娘だ。

彼女を求めて、店に来るものがいるほど顔は美人であった。

しかしそれ故に純粋に好きになれるものが少なかったのだ。

店にくる男性客のほとんどは、自身を口説くものが多かった。

むしろたまにくる気の荒い男性などは、金を渡してくるものもいた。

それらの経験により、男性嫌いな部分が増大している感覚すら覚えた。

しかしそんな自分でも好きになれる人ができたのだった。

それは、門番を職としている若い男性であった。

その男性との出会いは、偶然であった。

ある日の夜、相変わらず口説いてくる男性がいた。

その男性は酒によっており、気分が高まっていたのもあるのだろう。

もちろんライラックは、嫌がり断った。

そんな男性についていくメリットなんて存在しない。

しかしそんなライラックにいら立ったのか、男性は手を出そうとしたのだ。

そんなときに助けてくれたのがその若い門番であった。

彼は名前の知らない自分のために、誰よりも早くその男性から守ってくれた。

酒を呑み、その上いら立っているその男性は、若い男に向かって殴りかかった。

決着がつくのは一瞬だった。

若い男は、殴りかかったその拳をいなし軽く捻じり伏せたのだ。

その光景には誰もが唖然とした。

加えて男性に忠告をしたうえで店から追い出してくれることまでしてくれた。

そこまでしたのに、

その若い男性はただ食事をしてそのまま同じ門番の男性と一緒に帰ってしまったのだ。

その時は名前も聞けなかったその男性に、ライラックは頭を占領された。

要は、ライラックはその男性に一目ぼれしてしまったのだ。

しかしライラックには一つ不運なことがあった。



「いままで恋愛経験の一つでもあれば……」


そう彼女は一度も恋愛をしたことがないのだ。

いままで恋愛に興味がなかったこともあり、その上男性嫌いもあった。

そんな環境では、恋愛をすることがないのも当然だ。


「どうしたの…‥?ライラックちゃん」

「フクシアちゃんはすごいなぁって……」


隣には、猫の獣人であるフクシアがいた。

フクシアは、シャリテの屋敷にメイドとして働いている一人だ。

今回は、恋愛相談のために来てもらった。

フクシアは、既に恋愛を通りこして恋人と同棲する段階までいっている。

相談相手としてこれ以上の人材はいないだろうということでいまは話している。


「そうはいっても、私もあの人から告白されちゃったわけだし、そんな大層なアドバイスなんてできないよ?」


どうやらフクシアから、付き合ったのではないらしい。

あくまで自分は受け身だと説明する。

しかしそれでもライラックからすると藁にも縋りたいようだ。



「それでもいいの……どうか私になにか助言を……」

「好きな人は、例の門番くんだっけ?」

「そうなの……セーリスクっていう名前らしいんだけど」





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