二十二話「医者の警告」
18日は誕生日でした。
繁栄の年となるよう頑張ります。
「それで話とは?」
「今伝えるべきこととしては骨折りのこと、あなたの背中のことです」
骨折りのことは全くわからないが、
どうやら治療の最中に背中の羽根を見られたようだ。
背中に羽の生えている亜人のことは法皇国以外では主に【羽人】と呼ばれる。
もちろん希少な種族だ。
恐らく奇異の目を向けられただろう。
「えっと……」
答えに困る。
自身がどういった存在か明言することも特にないので返答に困ってしまった。
「背中のことは特に気にしておりません。法皇国クレシエンテの天使信仰。貴方にも事情があることでしょう。ですが、中立国という国は他国の事情に関して一切踏み込みませんので」
「そうですか……」
法皇国の名前は出されたが
どうやらイグニスの悩みは杞憂のようだった。
中立国というのは、他国の信仰や宗派に触れることはない。
あくまで中立なのだ。
感心もなく、否定もない。
法皇国における扱いが独特すぎるのもあるが、
中立国ではあくまで人種として受け入れらるようだ。
エリーダはまた別の説明をする。
「背中の羽の影響でしょう。表面上の怪我はともかく、貴方の体内には魔法の元となるべきものが現在は回復していないことは覚えておいてください。体力の回復。魔力の回復。これにはあと数日は必要です。」
どうやら現在のイグニスの体には、魔力が不足しているようだった。
亜人にとって、魔力は恒常性を保つためにも必要なものだ。
魔法を使いすぎ、魔力が不足すると
日常生活にも支障をきたす。
「わかりました。できる限り回復に努めるように努力します」
イグニスの魔力の欠乏の原因。それは明白であった。
イグニスの「羽根」には、魔法の威力を加速させる効果がある。
それには予想以上の魔力や体力が持っていかれるのだが
威力は骨折りの鎧ですら捻じるほどの威力が合る。
そして「岡目八目」。
その本領は、近距離になるほど視認できなくなるというものだ。
逆に距離が離れているほどどんな弱者でもみれる。
距離がちかいと視認する時間はなくなる。
それに風はもとより視認しずらい。
ただ早くて見えずらいというそんな風の魔法なのだ。
ただ見えなく捻じる風の魔法「岡目八目」、
それと自身の羽の特性を混ぜた。
それこそが最強の傭兵「骨折り」を傷つけた魔法の正体だ。
「それで骨折りのこととは?」
エリーゼはため息をつきながらも説明をする。
その心中は複雑のようだ。
「手を合わせたあなたなら尚更気づいているでしょうが、あの人物は雇っている我々から見ても異常です。正直手に余るといっても過言ではないでしょう。人類最強の傭兵【骨折り】。その正体を明確に知るものはいません。私にとって心配なのはその骨折りと関わって貴方にどんな影響があるかということです。はっきり言わせても貰うと私としてはアンデットを生み出した人間より骨折りの方が私によっては恐怖です」
骨折りが恐怖。
それは当然だろう。
戦場に突如として現れ去っていく。
戦場の死神と言われても不思議ではない。
鍛え上げられた兵士ですら怯え震えていく。
そんな人物をみて一般人はどう思うのだろうか。
アンデットが民衆に被害をもたらすのもまた事実だ。
しかしそれより異質に映るのが骨折りなのだ。
過去を知るものは誰もいない。
いつから戦い続けてるのかもわからない。
一種の化け物となった存在。
それが骨折り。
そんなものと自分は戦っていたのかといまさらながら震えが走る。
「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているといいます。どうかあなたが深淵とならないことを祈っていますよ」
「わかりました。きをつけます」
会話は終わり、骨折りと合流する。
骨折りは話していた内容には特に関心を示していなかった。
少しばかりの会話をしたものの、マールのことが心配で
とりあえずシャリテの家へと足を運ぶと決めた。
イグニスと骨折りはともにシャリテの家に向かっていったのだった。




