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ヒューマンヘイトワンダーランド  作者: L
二章 異物の少女
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十三話「把握と提案」


「そうだな……いまだからこそ伝えるんだが、俺はこうなることをほんの少しだけ知っていた」

「どういうことだ?」


イグニスがシャリテにそう問い返す。

会話に少しばかり違和感を感じる。

シャリテの言い方は、獣王国における周囲の変化というより

獣王国自体のことを指しているようだった。


「俺があの時、イグニスと出会った時俺は獣王国で御世話になった人にお別れを告げてきたんだ。その時に俺は人間の処刑を見ていた」


イグニスはその事実に驚いていた。

シャリテがそういった処刑などの類を好む人物だとは思えなかったからだ。


「もちろん、おれは人間の処刑なんて見るつもりじゃなかった。ほんの少しの好奇心だったんだ。だが俺はその場にいたことをすぐに後悔した。そのあと獣王国を捨てることを決意したんだ」

「シャリテからみて、獣王国というのはそのような国だったか?」

「いいや、違った。それぞれが自身の種族を誇り、獣王の一族を尊敬し希望ある活気盛んな素晴らしい国だった。あの国は変わってしまったんだ」


「なぁ、シャリテ……中立国と獣王国。この二つの国で戦争は起こるとおもうか?」

「イグニスはどうしてそう思ったんだ?」

「いや、単なる質問なんだ。いろんなことが起こりすぎて自分でも少し混乱しているんだと思う……」

「俺は戦争が起こるとおもっている」


先ほどのラピスという女性の答えと同じ結論をシャリテは出していたのだ。



「獣王国のあの狂気の中、俺は自身がこのまま中立国にいていいのかと思っていた。そんな中イグニスさんと出会い、アンデット、そして竜という存在に邂逅した。世界は本当に変わっていく最中になるんだと思う。その時豊かな土壌を持ち、戦争における戦力をもたない中立国は狙われるだろう」


シャリテは自身の出した結論に苦しんでいるようでもあった。

獣王国が戦争になれば、自身の故郷は明らかに血で染まることになるだろう。

シャリテは立場としては国を捨てているがまだ割り切れていなかったのだった。


「まさかシャリテがそんなことを考えていたなんてな」

「ああ、だからイグニス。俺に提案がある。」

「提案?」

「マールちゃんの安全は俺が保証する。俺の家族と一緒に海洋国にいかないか?」


海洋国アルマダ。そこは海洋に関するものすべてが優れている国だ。

位置的には中立国とは離れており、どちらかというと法皇国に近い。

その国は、国のほとんどが海に面にしており

貿易も優れており、海洋戦における戦いも歴史上全てが無敗。


「海洋国アルマダか……」

「そこは商売の関係で中立国と同じぐらい種族の多様性にあふれている国だ。中立国とは違う理由で戦争が起こることは少ない」


海洋国アルマダは、先ほどもあった通り、水上戦においては無敗だ。

その功績が貿易国としての発展に通じた。

そしてその発展は国力の増強に繋がり、軍事金にも困ることのない国なのだ。

そのため、いざ他の国が戦争を仕掛けようとしても返り討ちにされる恐れの方が高い。

なにより戦争を仕掛けた国は商売において孤立する。

この世界の中で、確実な軍事力を持ちながら、経済的に圧迫をかけられる唯一の国だ。

しかしイグニスはその提案に保留の意を示した。


「すまない……その申し出はありがたいんだが、もう少し考えさせてくれ」

「いや、大丈夫だ。俺もつい少しばかり前に考えたものだからな。だが近いうちに海洋国で商売をやっている仲間に手紙を出す。それまでに考えさせてくれ」


シャリテは残念そうな顔をするも、落ち着いていた。


「戦争も俺自身の勘に近い。それに中立国での商売も落ち着いていないしな。準備にはまだ時間がかかるとおもうよ」



イグニスは考えた。

イグニスには、シャリテの情報だけでなく、

おそらくこの国の重要人物であるペトラの確実な情報もあった。

戦争は確実に訪れる。

獣王国という巨大な国が中立国に戦争を仕掛けたとき中立国には多大な影響があるだろう。

しかし今の自分にはマールという存在がある。

国との移動の中でこれ以上マールに負担をかけたくない、そんな気持ちも心の中にあった。


「食事も終わって、俺がしたい話も終わった。俺は風呂に入ってくるから先に、客室のベットで休んでいてくれ。アカンサスに連れて行かせる」

「お話は終わりましたか?」


そういってアカンサスは部屋の中に入ってきた。


「念のために聞くが、会話は誰もきいていないな?」

「ご主人様の会話を盗み聞く度量など私にはありません。他の者も一切近づいていませんよ」

「流石だな」

「ご主人さまは、お客様とお食事する際普通だったら、我々の誰かひとりをつけますから…‥大事な話だと思ったのです」


アカンサスはシャリテの心情を理解していたようだった。


「気を使わせてしまったようだな」

「その前にお嬢様にあってください。とても心配していらっしゃいましたし、お客様とお話していることにご立腹のようで」

「そうだな……、今日は全くあの子にかまってあげれなかった。すまない、イグニス。俺は娘にあってくるよ」

「ああ、きにするな。娘は大切だよな」

「有難い。失礼するよ」


そういい、シャリテは部屋から出ていくのだった。





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