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始まり。
誰か1人でも見てくれたら嬉しいです。
彼はいつも私の心臓を抉ってくる。
彼と出逢ったのは高校一年生が終わる頃。
校庭の端にどんと構える大きな桜の木。
その木の幹に彼は手を置いて。
どこか寂しそうに、それでいて懐かしそうに
大切なものを思い出すかの様に。
満開の桜を見上げていた。
私はそんな彼のまるで映画のワンシーンかの様な
光景をパチリと写真に収めた。
あまりにも儚くて綺麗で、この一瞬を撮り逃したくない。その一心で腕が動いてしまった。
だからこの時は彼の名前も存在さえも知らなくて
この後、彼と深く関わる羽目になることも。
私の日常が少しずつ変わっていってしまうことも
予想出来ていなかった。