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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

幸せボタン

作者: きころう


「何度言えば分かるんだ! 同じミスをするんじゃない!」


「すいません……」


 俺は今、都内のオフィスで怒鳴られている。 あのくそ課長め……。 悪いのは俺だけじゃないだろ?




「……ったく」


 こんな会社辞めてやる。 そう、何度思ったことか。 結局、俺は居座っている。 仕事がうまくいかないのは運が悪いだけだ。 俺だってやれば出来るはず。


 仕事が終わり、会社を出る。 今日はついてないな……。 ラーメンでも食って帰るか。 そう考えた俺は、いきつけの好みのラーメン屋に向けて暗くなった道を歩き始めた。




――ビチッ


「うわっ!」


 最悪だ、スーツに鳥の糞が落ちてきた。 空を飛ぶカラスに悪態をつきつつ、ティッシュで糞を拭き取った。


 再びラーメン屋へと歩き始める事、数十分。 ようやくたどり着いた……。 腹も丁度良いし、旨いもん食って家に帰ろう。




「ちーっす」


――ガガッ


 扉が開かない。 よく見てみると張り紙がしてあった。 なになに……? 本日、臨時休業? ……まじかよ。




「はぁ……」


 今日はもう駄目だ。 何をやってもうまくいかない。 大人しく家に帰るとするか……。


 外食も諦めた俺は、コンビニで適当な弁当を買って帰路につく。 帰りの電車は、混んでいて座れなかった。 ……まぁ、これはいつもの事だ。 狭い車内に押し込まれながら、最寄の駅でなんとか降りた。




「はぁ」


 全く。 明日も仕事だと考えると憂鬱だ。 またあのくそ上司に怒鳴られるだろう。 自宅近くの公園が見えてきた。 自販機でコーヒーでも買って帰るか。




――ピッ ガタン


 自販機で買ったコーヒーを取り出し、家に向かおうとすると人の気配を感じた。 ちらりと横を見ると、帽子を深く被った男がこちらを見ている。 ……絡まれる前にさっさと行くか。




「貴方、今日はついてないですね?」


「は?」


 男が俺に話しかけてきた。 意味のわからないことを言い出したので、思わず返事が短絡的になってしまう。 続けて男はポケットから小さな物を取り出した。




「こちらをどうぞ。 ボタンを押すと、貴方に幸運が訪れます」


「あー、そういうの良いんで」


 宗教の勧誘か。 適当にあしらって公園を出ると、背後で物が落ちる音がした。 振り返ってみると、先程いた男が見当たらない。 地面に落ちているのは、差し出された小物だった。




『ボタンを押すと、貴方に幸運が訪れます』


 その言葉が頭を離れなかった俺は、さっと小物拾ってポケットに入れた。 回りに先程の男が居ないことを確認し、そのままアパートに帰宅する。




「持ってきちまった」


 拾ってきた小物を眺める。 それは小さな箱に赤いボタンが付いているだけの、玩具のような物だった。 馬鹿らしくなった俺は、そのボタンを机に置いて買ってきた弁当を食べ始める。 寝る頃には、その存在をすっかり忘れていた。




――ジリリリリ!


 スマホから鳴るアラームを止め、ベッドから起き上がった。 いつものように支度を整え、テレビをつけた所で冷や汗が走る。




「……おい、マジかよ!」


 そこに映る時刻は八時半。 会社の始業は九時だ。 ここから会社まで、電車を乗り継いで一時間かかる。 遅刻は確定だが、急いで準備を整えた。




――カッ


 机に置いてある腕時計を取る時に、横に何か弾いた。 昨日の赤いボタンだ。 藁にもすがる思いだった俺は、それを拾い上げてボタンを押した。




――カチッ


「……」


 何が起こる訳でもない。 元から気休め程度だった。 ボタンを机に戻して家を出た。




「はっ……はっ……はっ……」


 間に合わないと分かっていても、建前上走って向かう。 汗の一つでもかいていけば、少しは誠実さが伝わるか? いや、あのくそ上司の事だ。 最悪、減給もありえる。 それでも止めさせないのは、俺が都合よく動く駒だからだろう。


 駅にたどり着き、定期をかざしてホームに入ろうとする。 けたたましい音を立てて、改札口は俺の侵入を拒んだ。




「おいおいおい、勘弁してくれよ」


「お客さん、今は入れないよ!」


 何度も定期を叩き付けていると、駅員から声がかかった。 そこで気づいたが、いつもより駅に人が多い。 電光板を見上げると、そこに書いてあったのは……。




「人身事故のため、運休?」


「ええ、丁度さっきの電車だね。 お客さん、運が良かったよ。 乗ってたら大怪我だった」


 駅員さんの話を聞くに、閉じた踏み切りに車が突っ込んできたらしい。 電車は衝撃で脱線。 ニュースにも乗るほどの大事故だ。 俺が呆けていると、スマホに着信があるのに気づいた。




「おお、無事か? お前の使う路線だろ!?」


「は、はい。 なんとか」


 電話の相手は課長だ。 テレビをつけて焦って連絡してきたらしい。 俺は事故車両には乗っていなかったが、上司は巻き込まれたと勘違いしているようだ。




「病院に行かなくちゃいけないみたいで……」


「だろうな。 今日は来なくて良い。 ゆっくり休め!」


 さすがのくそ上司も、この大事故には焦ったようだ。 結局、俺は休みを三日貰うことになった。 しかも、全く使わせてくれなかった有給でだ。 久しぶりに回ってきた運に、俺は思わずにやけてしまった。


 アパートに戻って、机の上の赤いボタンを手に取る。 ……まさかな。 普通に考えればあり得ない。 再びボタンを机に戻し、俺はゆっくりと臨時休日を満喫した。




――ジリリリリ


「……ん、あー」


 いつもの癖で、タイマーをつけたままだった。 列車事故から数日たち、今日も家でダラダラとするつもりが……とんだ時間に起きてしまった。 目が覚めてしまって眠れない、大人しく起きるとするか……。




「……試してみるか」


 机の上にある赤いボタンを見て呟く。 あり得ないと分かっていても、試さずにはいられなかった。 ボタンを持って、近くのショッピングモールにまで足を運ぶ。




「さてと……」


――カチッ


 モールに入る前に、赤いボタンの押してみる。 ……やはり、特に何が変わった感じはしない。 少し期待しつつ、店の中へと足を運んだ。





――パンッ!


『おめでとうございます! 貴方は当店舗にいらした、十万人目のお客様になります!』


 店の入口で、俺に向かってクラッカーの音が鳴り響く。 店員に促され、記念のタスキを掛けられた。 写真を撮った後、渡されたのは商品券だ。 ……やっぱり、これは本物なのか?




「お母さん、惜しかったね」


「ふふ、そうね」


 後ろで子供連れが俺のことを羨んでいる。 すまないな、これは俺の幸運なんだ。 手に持った赤いボタンを眺めつつ、上機嫌で店を回った。




――カチッ


「こちら、新作の試供品となっていまして。 先着十名様に……」


――カチッ


「おめでとうございます。 こちらのレシートをカウンターにお持ちいただくと……」


――カチッ


「特賞! 旅行券出ました!」


 驚いた、これは間違いなく本物だ。 押す度に幸運が回ってくる。 これさえあれば、俺はなんだって出来るんだ。 あの時あった帽子の男に感謝しつつ、赤いボタンを大事に抱えてモールを後にした。




「はは、夢じゃないよな?」


 あり得ない経験に、軽く頬を抓ってみる。 ……痛い。 そうだ、これは夢なんかじゃない。 間違いなく現実だ。 次はどんな幸運が起こるだろうか。 気が大きくなった俺は、昼飯を食べに勇み足でレストラン街へと向かった。




――ガヤガヤ……


 モールに長くいすぎて出遅れてしまった。 流石にどの店も人が多く、すぐには入れそうにない。 よし、ここはこれの出番だろう。 特に深く考えず、赤いボタンを取り出して押す。




――カチッ


――『ガァン! ガシャン!』


 突然響いた轟音に、赤いボタンを落としてしまった。 慌ててそれを拾い上げ、音のした方に視線を向ける。 辺りには煙が広がり、小さく火も上がっていた。 どうやら、レストラン街の一店舗が爆発したらしい。 辺りに破片が散らばっている。




「おいおい、何処が幸運だよ!」


 これが幸運? 悪態をついて近くを見てみる。 隣りにいる人の腕には、飛んできたガラスの破片が突き刺さっていた。 反対側の人は、小さな瓦礫が飛んできて意識を失っている。 ……俺だけなんともない。 まさか、これが幸運?




「いやいや……。 違う、俺じゃない!」


 急に怖くなった俺は、慌ててその場を逃げ出した。 違う、これは俺が引き起こしたことじゃない。 関係ないんだ、悪いのはこのボタンで……。


 ごちゃごちゃと考えている内に、いつの間にかアパートまで戻っていた。 俺は運良く、誰にも止められること無く出られたらしい。 ポケットにある赤いボタンを取り出して、机の上に置いて眺める。


 無機質な、玩具のような赤いボタン。 それが急に怖くなった俺は、引き出しに隠してベッドに転がった。 思い起こされるのは、さっきの爆発事故。 違う、俺じゃない。 あれはきっと、誰かの不幸だ。 俺の幸運とは関係ない。




――ジリリリリ


 翌朝。 気分は未だに優れない。 ぼうっとしながら身支度を整え、いつものようにテレビをつける。 ニュースでやっていたのは、昨日の爆発事故の事だ。 思わずどきりとして、俺はテレビを凝視した。




『昨日。 ……市のショッピングモールで、爆発事故がありました。 警察によると、現場からは爆発物の跡が確認されたとの発表がありました。 監視カメラには小さな小箱を持った人物の姿が写っており、この事件との関連性を……』


 ……やっぱりな。 俺は関係なかった、全部こいつのせいだ。 こいつに巻き込まれそうになった所を、俺は幸運で跳ね除けたんだ。 そうだ、やっぱり俺は関係なかった。 ニュース報道に安心した俺は、引き出しから赤いボタンを取り出した。




「……ったく。 何があったか知らないが、お前の不幸に巻き込むんじゃねぇよ」


 テレビに映る容疑者に悪態をつきつつ、俺は数日ぶりの会社に向かった。 暫く休んだせいで足取りは重い。 また、あの会社に向かうのか……。 ちらりとポケットに目を向ける。




「……まぁ、なんとかなるか」


 そこに入っている赤いボタンの存在を確かめつつ、気分が軽くなった俺は足軽に駅へと進み始めた。 俺にはこれが有る。 何が起きたって、俺の幸運で跳ね除けてやるさ。




――『只今、人身事故の影響で列車に遅れが出ております……』


「はぁ……。 またかよ」


 人身事故だ? 全く……俺を巻き込むんじゃない。 ため息を付きながら、ポケットに有る赤いボタンを取り出した。 ちらりと周りを確認しつつ、そっとボタンを押し込む。




――カチッ


「あら?」


 押した瞬間、後ろから俺に声がかかった。 振り返ると、そこにいたのは会社の同僚だ。 俺は思わず息を呑む。 その"女性"は会社の中でもひときわ輝く、美人だったからだ。 俺も遠巻きに、お近づきになれればなと思ってはいた。




「貴方確か……。 営業課の……」


「はい! お世話になってます!」


 思わず声が上ずってしまった。 彼女は俺と違ってエリートだ。 上司よりも更に上の重役で、俺なんか相手にもされないはずの存在だ。




「久しぶりに歩いて来たんだけれど……。 電車止まってるのね。 タクシー乗るけど、一緒に行く?」


「はい! お願いします!」


 願っても見ない提案だ。 彼女と一緒に駅を出て、すぐ近くでタクシーを捕まえる。 二人で乗り込み、車はすぐに発進した。 俺は緊張で、彼女の方を向くことが出来なかった。




「貴方、この辺に住んでるのね。 私もそうなの、奇遇ね」


「え、そうなんですか?」


 タクシーの中で話が弾んだ。 趣味も似ていて、今度一緒に映画を見に行く約束まで取り付けることが出来た。 あり得ない、何だこれは。 会社にたどり着き、彼女がお金まで払ってくれた。 流石に情けないので俺も払おうとしたのだが、彼女は耳元で囁いた。




「今度、映画見に行く時に楽しませてね」


 俺の気分は最高潮だ。 そのまま雑談を続けながら、彼女と一緒に会社に入った。 周りの俺を見る目が心地良い。 どうだ、俺の彼女だ。 そう言わんばかりの態度に、同僚たちは呆けていた。




「おはようございます」


 気分良く、自分の課の扉を開ける。 課長が驚いた顔でこちらを見ていた。 彼女とは途中で別れたが、ガラス越しに様子を見られていたからだ。 俺は意気揚々と、自分の席に座る。 こんなにやる気が出たのは久しぶりだ。 割り当てられた仕事を、俺はさくさくと進め始めた。




「はい。 纏めておきました」


「お、おう。 ……ああ、問題ない。 良く出来てるな」


 書類を纏め終え、課長に渡す。 いつもならここで怒られていたが、今の俺は特別だ。 ミスなど有るわけがない。 気分が上がったまま、外回りの仕事へと繰り出した。




――カチッ


「はは、ははははは」


 そう、会社についてからも何度かボタンを押している。 おかげで絶好調だ。 何をやっても成功する。 営業の方も、尋ねる度に契約を貰えた。 俺の業績はうなぎ登り、人生は明るく輝いている。 俺はとても幸運だ!




――ジリリリリ


「ん……。 よし!」


 俺にしては珍しく、スッキリと起きることが出来た。 今日は休日。 憧れの彼女と、映画を見る約束をしている日だ。 決まった服に着替え、身なりを整えて鏡を覗く。 うーん、今日もイケメンだ。 ……いや、流石に気持ち悪かった。 忘れよう。




「おまたせ!」


 駅の近くの広場で、彼女が俺の方に走ってくる。 それを迎えて、一緒にモールへと足を運んだ。 さり気なくポケットに手をやる。 そこに入っているのは赤いボタンだ。 気付かれないように、ボタンを押し込んだ。




――カチッ


「きゃっ!」


 彼女の脇を子供が駆け抜け、驚いた彼女は反動で俺の腕に捕まる。 恥ずかしそうにしていたが、嫌がる素振りは見えなかった。 そのまま手をつないで、映画館へと足を運んだ。




――カチッ


「本日は、映画館開演一周年となっています。 こちらのセットをどうぞ」


 映画館でポップコーンでも買おうとした所で、豪華な記念セットを貰ってしまった。 思わぬ幸運に、彼女と笑い合いながらスクリーンへ向かう。




――カチッ


「あっ、当たったわ!」


 映画を見終わった後、彼女がチケットを見て喜んでいる。 一周年記念で、チケットにスクラッチがついていた。 当たりはペア旅行券。 見事に当てた彼女は、俺に一緒に行こうと提案してきた。 もちろんOKだ、断る理由は何処にもない。


 暫く遊び回ったあと、休憩できそうな広場を見つけた。 俺たちは設置されているベンチに、二人で腰掛けた。 彼女が俺にしなだれかかってくる。 その顔は幸せそうだ。




「今日はついてるわね。 貴方と居ると、楽しいわ」


「はは、そうだろ?」


 俺は既に恋人の気分だ。 彼女の方に腕を回し、頭を撫でながら返事を返す。 彼女も抵抗する素振りがない。 これは、今告白すれば間違いなく成功する。 最後に何かでかい事をと思った俺は、左手で赤いボタンを押した。




――カチッ


――ブゥン! ブロロロロ……


 目の前の光景に、息を呑んだ。 近くにあった移動販売車が突然動き出し、前へと進み始める。 そこにいるのは小さな子供だ。 遊ぶのに夢中で気づいていない。




「おい! ……くそっ!」


 彼女に回していた手を離して、俺は子供の方に走り出した。 ようやく気づき始めた周りの人が、悲鳴をあげる。 子供を抱きかかえて、連れ出そうとするが間に合わない。 咄嗟に俺は赤いボタンを押した。




――カチッ


――ザザッ! …………キキッ!


 子供を抱きかかえて背を向ける。 とっさに目を閉じたが、いつまで立っても衝撃が来ることはなかった。 ゆっくりと目を開けるとそこには……。




――パンッ! パンッ!


『成功です!』


 周りの人が歓声をあげ、クラッカーの音が辺りに響く。 車は目の前で止まっていて、運転手は俺を見て笑っていた。 俺は訳がわからず、混乱して周りをキョロキョロとしている。




「はいはい、こちらをどうぞ。 いやー迫真でしたね」


「は?」


 カメラを持った男が近づいてくる。 彼は俺にボードを渡し、褒め称えるようにマイクを向けてきた。 そのボードを見てみると、書いてあるのは……。




――ドッキリ大成功!


「貴方が幸運のボタンを渡されて、どんな行動をするか試していたんです! いやー最後の最後で他人のために使いましたねえ。 感動しましたよ!」


 は? どういう事だ? 今までのが全て仕組まれていた事? モールで当たった景品も、俺が契約を沢山取れた事も。 ……まさか、彼女も? そちらに目を向けると、彼女は笑いながら此方を見ていた。




「まじかよ……」


 いやいや、おかしいだろ。 それなら、列車事故は? レストランの爆発事故は? あれも仕組んでいたってのか? それならこいつらは、とんだテロリスト集団じゃないか。 頭の中がごちゃごちゃとして、その場に立ち尽くしてしまっていた。 近くにいた人達が、俺を持ち上げて胴上げしようとしてくる。 混乱していた俺は、そのまま流れに身を任せた。




『せーの! わっしょい! わっしょい! わっしょい!』


「は、はは、ははははは」


 乾いた笑いしか出てこなかった。 ポケットから赤いボタンがずり落ち、広場を転がる。 それは胴上げしている人達に蹴られて、遠くの方まで行ってしまった。 その拍子に赤いボタンがカチリと鳴った。




――ギギ……ガシャアアアアン!


――最後に俺が見た光景は。 真上から降ってくる、クレーンに釣られた鉄筋だった。








 悲鳴の上がる広場の中で、帽子を深く被った男が赤いボタンを拾う。 その視線は、先程まで胴上げをされていた男の方に向けられていた。




「このボタンは、貴方の幸運を前借りして持ってくるものです。 どうやら、貴方にはもう幸運は残っていないようですね」


 そう言いながら、帽子の男は静かに広場を去っていく。




「この先の人生、貴方には不幸しか訪れません。 しかし、希望を捨てずに必死に生きていくことを願っています。 ……もう聞こえていないかもしれませんが」


――慌てふためく人々が男の近くを通り過ぎた後、そこにはもう誰も残っては居なかった。



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