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陰気野郎


昨日、ツバサくんに言われたから、仕方なしに陰気野郎に挨拶をした。


「おはよう」


まぁ、安定の無視!


もう、ツバサくんのせいだからね!


もう2度と話しかけない。


窓の外を眺めた。

桜並木が見える。

もう緑の葉がほとんどだけど、まだところにピンクが見える。


私、葉桜好きなんだよね。


あの緑が深くなる感じが好き。


また大好きな季節が来るなぁと思っていたら

ウトウトしていた。


ふわふわの雲の上を歩く私。

ツバサくんに呼ばれてる。


―どこ?―


呼びかけながら不安定な雲の上を必死に歩く。

見つけられず落ち込む私の肩を誰かが叩く。


―ツバサくん―


でも顔を上げたら隣の陰気野郎でガッカリしちゃった。


なのに、その陰気野郎に「早く起きろ」と吐き捨てられ、私も怒ってついつい言っちゃった。


「話しかけんな、中2病の陰気野郎!」


そう言った途端にまたツバサくんの声が聞こえて声の方に行く。


どこなの?ツバサくん。


背中が見えて嬉しくて駆け寄った。


その途端、足を踏み外し雲の隙間から

下に落ちそうになりドキッとして飛び起きた。


ふと、周りを見渡した。


誰もいない。


え、なんで?


みんな、どこ?


時計を見る。


え、と、今。


うそ。


私、まるまる1時間寝たのか!


という事は、みんな、体育してるんだ。


そっか、夢か。


夢なら尚更、ツバサくんに会って「好き」って言ってみたかったな。


夢の中のツバサくんは何て答えてくれるんだろう。


私の夢のだから、都合よくいくのかな。


たとえ夢の中でもツバサくんに受け入れてもらえたら、

その記憶だけで生きていける気がする。


そんな事を考えながら体操着に着替えて体育館に向かった。


みんな、バスケをしていた。

そっとバレないように仲間に入る。


良かった、先生にバレてない。


「ナナミ、やっと起きたんだ」


最近、仲良くなった前の席のさなちゃんに言われ


「なんで起こしてくれなかったの」


そう言う私にニヤニヤして


「え、何回も起こしたんですけど。ナナミ、全く動かないしなんか嬉しそうな顔してたから寝かしてあげた」


嬉しそうな顔か。


でも会えなかったんだよね。


体育の授業終わりに先生に体育委員が呼ばれた。

陰気野郎がチラっと私を見て鼻で笑った。


本当、感じ悪い。


話しかけんなって言うなら私の事も無視して欲しい。


「木下、どうした?

遅れて来たよな。体調不良か」


そう先生に聞かれ、それに乗った。


「はい、すみません。」


先生は優しくて


「おお、お大事にな」


そう言ってくれた。

陰気野郎がまた私を見下した目で見る。


「体育測定の結果を配るから、あとで取りに来てくれ。

あと来月の球技大会でバスケやるよな、その時にデモンストレーションで各体育委員のシュートショーするからよろしくな。

まぁ軽いお楽しみみたいな感じだ」


ガハガハ笑う先生!


シュートショー?


何ですか、それ。


「いや、だから、体育委員がさ、各々、

カッコよくゴール決めてみせてくれればいいんだよ。

リレー形式にどんどん回るからさ

緊張せずに楽しめ、楽しめ。

まぁ、外す奴もいるけどリトライしてもゴールすればいいから。」


じゃあよろしく!と先生は帰って行った。


え、私、自慢じゃないけど、あのカゴにボールが入った事がない。


どうしよう。


体育委員が運動神経いいなんて誰が決めたんだ。


青くなる私をよそに陰気野郎はさっさと背中を向けて教室に戻って行った。

陰気野郎は確かバスケ部だ。


コイツは華麗にゴールを決めるんだろうな。


なんか悔しい。


中2病の陰気野郎になんか負けたくない。


練習しないと。


でもどうやって。


考えてる暇はない。


思いつく限りの事をしようと思った。


まずは目から。


毎日バスケ部を見学しよう。


あとは実践。


帰りに公園のバスケゴールで少し練習。


あとあと、そうだ、昔、漫画で見た。


サッカー少年がいつもボールを持って生活してたやつ。


さすがに学校まで持ち歩いてたら怪しいから、

家ではバスケットボールを側に置いておこう。


先生に許可をもらい、ボールを1つ借りた。


「なんだ、お前、気合い入ってるな。

期待してるぞ」


お門違いな期待をされ、追い込まれた私。


ネットでバスケゴールの動画も見ないと。


ヤバイ。


運動、もっとしておくんだったな。


教室に戻り席に着く。

私の大きなため息に陰気野郎が腕組みをしたまま、チラっと見た。


「あの、工藤くん?

工藤くんってバスケ部だったよね?」


出来心で声をかけた事を、ものすごく後悔した。


その目に軽蔑というか汚い物をみるようなそんな嫌悪感が浮かんでた。


「だから何?チャンスだとか思った?

残念だったな、俺はそんな事に乗らない」


また頭がハテナでいっぱいだ。


この人はまともに話ができないんだな。


質問と答えが合ってないと思うのは私だけ?


「あのさ、工藤くんって国語苦手?」


私の質問にあからさまに敵意むき出しの視線を投げつけ、そのまま話しかけんなオーラを出した。


「苦手なのか」


悔しいから、それだけ呟いといた。


でもこの人、大丈夫なのかな。


コミュニケーション苦手。


なんか話が通じない。


いつも不機嫌。


何か大きな問題を抱えてるのかな。


ツバサくんが言う通り、本当に病気なのかな。


優しく、か。


そっか、そうなのかもしれない。


こんなにこじらせるんだもの、

ツライ家庭環境とかかも?


でも。


そうだとしても。


ツバサくん、この人、どうしたらいいと思う?


私、苦手だ。


というか、嫌いかもしれない。


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