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はじまり


長い坂道。

桜並木。

今年は春が遅れたから4月の今も桜がちらほら残ってる。

風に揺られ花びらがはらはらと舞う。


「キレイだよね、私、この坂道好きだなぁ」


隣を歩く今井チカに話しかけた。

チカは中学からの親友だ。

2人で同じ高校に行こうねって約束して念願叶って今、こうして登校している。


私、高校1年15歳。木下七海


「ナナミ、部活入らないの?」


うーん。


と生返事。


「ナナミって運動神経ないしね。

かと言って芸術センスもないしね。」


チカが笑う。


「ひどいなぁ。で、チカは?

またテニスするの?」


中学の時は軟式テニスの部長だったチカ。


高校生になったら、

硬式テニス部に入りたいって、

ずっと言ってたもんね。


にっこり笑って、チカがピースサインをする。


「今日、仮入部してくる」


そっか、チカ、部活始まるんだ。

ちょっと寂しい。


「でもナナミ、ツバサと遊べばいいじゃん。

最近またよく会ってるんでしょ」


ニヤニヤして私の脇腹をつつく。


「うん、まぁ」


私もニヤニヤする。

ツバサくんは中学の同級生で、

高校は別々だけど時々2人で会う。


友達だけど、友達じゃない。


私がずっと好きだから。


もう3年も想ってる。


「早く告っちゃいなよ。どーせOKなんだろうし。」


そう言ってチカは背中を押してくれるけど、

たぶん、ツバサくんは私を友達としか見てない。


ツバサくんって恐ろしいくらい

恋愛に疎くて鈍い。


毎日に近いくらいメールしてるし電話でも話す。


時々会いに来てくれたり、ツバサくんが行きたいところに付き合う事が多い。


だけど、それは恋愛感情は絡んでない。


ツバサくんに1番近い私がよく分かる。


ツバサくんは私を女の子としてさえ見てないかも。


でも今はこれでいいんだ。


友達でいいの。


近くにいられるから。


近くにいたい。


好きだって伝えて距離ができるのは何よりも怖いから。


「じゃあまたね」


そう言ってクラスの前で別れた。

チカは隣の3組だ。

私は2組の教室に入り窓際の1番後ろの席に座る。


ここは特等席だ。


誰もが座りたいでしょ、窓側、1番後ろ!


だから他の子もみんな羨ましいって言う。

まだ深く話した事のない子にも


「木下さんって窓側の1番後ろの席だよね、いいな」って言われるから。


アタリなんだ。


それにしてもみんな、そんなに羨ましがるほど景色がいいわけでもないけどね。

席に座ってカバンを掛ける。

ポケットで軽い振動を感じて携帯を取り出した。


ツバサくんからメールだ。


―おはよ、なぁな、今日暇?―


思わず笑みが浮かぶ。


暇だよ、というか暇じゃなくても暇にする!


暇だよって打った所で隣で椅子を引く音がした。

顔を上げて横を見ると隣の席の工藤くんだ。


「おはよう」


そう挨拶をした。

だけど、彼は今日も無愛想。

こちらを見もしないで


「ああ」

と答える。


ホント、この人陰気。


いつも暗くてなんか感じ悪い。


こんなにいい席なのに、なんなの、この人。


これだけはツイてない。


私は窓の外に目を向けて、

放課後、ツバサくんと会える幸せをかみしめた。


隣の陰気野郎の事は忘れよう。


おはようって挨拶は基本だよね。


人間としてどうなの?


あーイラつく。

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