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第84話:元村人A、よくやってくれました。

 おはようございます。俺はエルフの警察たちに助けられたあと病院で一夜を明かすことになった。


 いつも通りの太陽の光を浴びていつも通りの朝を迎えたはず……だった。


 俺の横に少女が立っていること、以外は。


「アラン・アルベルト様ですね?」


 少女っていうか幼女? 青色の髪に黄色の目をしているのだが、なんといっても一番特徴的なのは耳と尻尾が生えていることだろう。それは猫のものとそっくりだ。


「そうだけど……獣人か?」



「申し遅れました。私はビビ・カトミラーズ。獣人の国バルトロギアのギルドランキング1位、ヴィットリオ様の一番弟子でございます」



 目の前の少女は獣人だった。耳と尻尾以外は完全に人間なのだが。見た目は完全に少女そのものだが、喋り方は大人びており、なによりバルトロギアのギルド1位ランカーの弟子? とか言っている。


「で、ビビは何か用があってきたのか?」


 朝一番で状況がよく飲み込めていない。


「はい。アラン様へ現状の報告と感謝をお伝えしに来ました」


 ビビはそう言うと手元の資料を見ながら話し始めた。


--


 まずは和ノ国について。アラン様たち御一行がホヘト新聞社の社長、ナカジマを討伐してくださったことにより、彼によって洗脳されていた社員たちが正常に戻り、その後ゲンゴロウ様によって経営が再建されました。


 ホヘト新聞社がこれまで発表してきた嘘のデータや記事、そして社長が魔物であったという事実が大々的に報道され、これまで民衆の反エルフ的感情を抱く原因となったものがほとんど否定されました。


 人々は突然価値観が変わったことによりやや混乱し、パニックとなりかけましたが、シンゲン様による武士団の活動で被害は最小限に留まりました。


--


 すごいな。何がすごいってまだ二日ほどしか事件の解決から経過していないはずだ。だというのにゲンゴロウによってそこまで話が進んでいるのだ。彼の--ー彼女というべきか--ー行動力には驚かされる。


「それから、近日中にシンゲン様によってエンシェントドラゴン討伐の協力を行うという指令が発令されるとのことです」


 武士団も素早く活動したと聞く。それほどまでに念願の指令であるのだろう。今回は上手くいってくれるといいが。



「次にライクリシア王国です。神父ラクトが死亡したことにより、和ノ国同様に人々の洗脳が解けました。そしてラミア教のジーダル派は責任を問われ、国教から除外される見通しです。本日新しい神父が就任します。ちなみに名前は……」



「おう、ボウズ。生きてやがったのか」


 ビビが名前を言いかけた瞬間聞き覚えのある憎たらしい声の男が部屋に入ってきた。


「アーノルド!?」


 それはライクリシア王国のおっさんエルフ、アーノルドであった。前回あった時はエプロン着用だったわけだが、今日は黒くしっかりした服装である。まるで……



「神父様。おはようございます」



「神父!? アーノルドが!?」



「うるせえボウズ。そうだよ」


 アーノルドが神父だと!? あのふざけたおっさんが!? 少々気恥ずかしそうに返事をするアーノルドを見て本当なのだと確信する。俺は驚き、思わずため息が出そうだ。


「嘘だろ……なんでだよ」



「なんで残念そうなんだよ。俺はアーノルド・メルゾーレフ。これでわかるだろ?」



 メルゾーレフ……。ラクトと同じファミリーネームだ!


「わかったみてえだな。ラクトは双子の弟だ。あいつはある時突然何かに取り憑かれたみてえにおかしくなっちまったな。俺は教会とは関わらなくなっちまったんだ」


 要するに職権をラクトに奪われて場所がなくなった自分は食堂を経営してたってわけか。しかし世間は本当に狭いな。



「俺が神父になったら一番に人々にエンシェントドラゴン討伐の協力を命令する。ラミア教には『困難は皆で分担して立ち向かう』っていうのがあってな」



 アーノルドは得意げに言った。とにかく、これでエンシェントドラゴン討伐にライクリシア王国が協力してくれることになった。


「あれ? ということは……」




「はい。これで和ノ国、バルトロギア王国、ライクリシア王国の三国がエンシェントドラゴン討伐に参加できます」




 そういうことになる。まだどちらも決定ではないが、人々の洗脳が解けている今、皆で力を合わせてエンシェントドラゴンを討伐することが出来る可能性はぐっと高まっていることは確かだ。



「アラン様、この度は三国の連合に協力していただきありがとうございます。師に変わってお礼を申し上げます」



 ビビは俺に深々と礼をした。


「大丈夫だから! 頭上げてくれ!」


 幼女が綺麗な姿勢で深々と礼をしているのを見るとすごく申し訳ない気持ちになるので、俺は頭を上げるように言う。


「アラン様たちにはこれからバルトロギア王国に同行していただきます。エンシェントドラゴン討伐のための会議に参加していただくためです」


「もちろんだ。すぐ出発しよう」


「他のパーティメンバーの皆様は既にお目覚めですので準備が出来次第出発が可能です。そちらで改めて我が師にお会いしていただきたい」


 師……ヴィットリオって言ってたな。向こうにはカインも待っているはずだ。強者たちが揃っている場所に参加することになる。あれ、前にもこういうことがあったような……。


 その後俺たちは部屋から出てすぐにライクリシア王国から出た。


 バルトロギア王国に到着するとすぐにカインたちが向こうでの出来事を知っていたのか、出迎えてくれて、ここでもまためちゃくちゃ感謝された。


 到着する頃には、シンゲンがエンシェントドラゴン討伐の協力をするという意向を国民に示した。今回はホヘト新聞社のスキャンダルが明るみになった影響か、ほとんどデモ活動は行われず、早急に可決される。


 次の日には和ノ国の高い技術によりエンシェントドラゴンの復活が三日後であることが判明した。思った以上に時間がなかったとなり、バルトロギア王国は急いで他ふたつの国を迎え入れる準備を始める。俺たちもそれに参加した。


 とても忙しかったが、皆が生き生きとしていた。前とは違う、圧倒的な戦闘力でエンシェントドラゴン討伐を迎えることができるようになったからだ。


 それからまた、一日が経過した。

2019/05/28

2日に一度の更新をしていた本作ですが、本日より一週間ほど休載を行います。

エンシェントドラゴン戦から最終章まで、より良いクオリティで皆様にお届けしたいと思ったためです。

ダラダラと休載を長引かせたり、ストックが少し溜まって満足して投稿することがないように、一週間と期限を決めてお休みします。

休載後は更新を必ず行いますので、しばらくお待ちいただけると幸いです。よろしくお願いします。

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