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第63話:元村人A、依頼を決めます。

「じゃあな! 兄弟!」


 ローズの恋愛相談に乗ったことで俺は兄弟にされてしまったらしい。悪い気はしない。彼の友人共々強面だが根はいいやつのようだ。


 そのあとはまたパーティの三人と合流して受注するクエストを探すことになった。


「なあ、たしかポイントが高くないと難しい依頼受けられないんだったよな?」


 少し前のことだがもうすっかり昔のことになってしまったクエストに関する記憶を掘り起こす。


 冒険者には「ポイント」というものがあり、クエストをこなすことで増えていく。


 ポイントの量に応じて冒険者が受注できるクエストの難易度である「ランク」も上がっていく。ランクが高いほど難しいが、その分報酬も高い。


「……こんな感じだったはずだよな?」


「そうね。私たちのポイントは……5って書いてあるわ」


 ということは前の薬草採取と不思議な世界攻略の成果として5ポイントが振られているわけだ。薬草採取は何の成果もなかったのでおそらく0として、行方不明の冒険者全員の救助でも5ポイントなのか。


 色々考えたが、そもそも何ポイントでランクいくつなのかみたいな基準が無いから実感がない。


「そうだ、受付の人に聞いてみよう」


 早速看板の横の受付のウサギの女性に聞いてみることにした。


 が、その前にひとつ気になったのはその女性がどう見ても人間であるということだ。


 ではなぜウサギの女性と表現したか? その答えは、彼女がウサギの耳の飾りをつけているからである。


 しかしそれはウサミミをつけた普通の人間の女性にしか見えない。


「あのー、顔に何かついてますか?」


 あまりにも俺がガン見していたので女性はやや恥ずかしそうに困惑して聞く。


「いや、お姉さんは獣人なのかなって……」


「ああ、はい。れっきとした獣人ですよ」


 受付嬢は耳をピンと伸ばしたり折ってみたりして動かした。


 うーん、俺には獣人の定義がよくわからなくなってきた。


「何かご用でしたか?」


「ああ、クエストのポイントとランクについて話を聞きたいんだ」


「そういうことでしたらお教えしますね」


 受付嬢の説明によると、依頼をこなして『5×ステージアップ回数』分ポイントを貯めなければいけないらしい。


 つまり、ランク4の依頼を受けるには5ポイント×ステージアップ回数1回で結果的に5ポイント、ランク5の依頼を受けるには5ポイント×ステージアップ回数2回で10、前のと合わせて合計15ポイント必要なわけだ。


「要するに俺たちは5ポイント持ってるわけだから受けられるクエストはランク4までってことか」


「左様でございます。貰えるポイントはランクの数字と同じとなっております」


 確か行方不明者の捜索クエストのランクは1だったから5ポイント貰えたっていうのは相当評価されていたというわけか。なるほど、だんだん基準がわかってきた。


「ありがとう。よくわかったよ」


 知識もついたことなので、俺たちは実際にクエスト選びを始めることにした。


 各自いいと思ったクエストを選んで一枚ずつ持ち寄り、そこから決める形式にした。


「『ランク4、マーダーエイプの討伐。報酬四万ギル。違約金はその半額』」



 俺が持ってきたクエストの紙には恐ろしい毛むくじゃらの猿のようなイラストが書かれている。爪は長く、鋭い目でこちらを睨みつけている。


「なんでこんな恐ろしいクエストにしたのよ……」


 リリーが嫌そうな顔をして言う。


「エンシェントドラゴンと戦うんだぞ!? こんな猿に勝てないようじゃ先はないだろ」


「戦うのアンタじゃないじゃん」


 バレたか。攻撃に特化しているという点ではどう考えても手品師は魔法使いや戦士には劣る。俺が出来るのはせいぜい花火をあげるくらいだ。


「でもこいつどう見ても猿というよりかはゴリラだし、リリーとも親和性が高そうだなと思っ」


「はったおすぞ」


 リリーが禍々(まがまが)しいまでのオーラを出す。殺気だ。これは殺気。こいつに殴られると冗談じゃ済まないことになるのを一瞬でも忘れていた自分を呪った。


「じゃ、じゃあリリーはどれにしようと思うんだ?」


「私? これにしたわ」


「なになに……『プリン試食会! 先着で30名様までなのでふるってご参加ください!』」


 リリーは目を輝かせながらこちらを見る。期待にあふれている、そんな目だ。


「な、何かしら?」


「お前これクエストじゃなくてプリンの試食会の募集じゃねえか」


「え? あ、いやーうっかり……」


「わざとだろ」


「ギクッ」


 リリーは素っ気なく紙を手元に戻そうとしたが、俺が指摘するとビクッと肩を震わせて動きを止める。


「お前クエストじゃなくてプリンの試食会に行きたかったんだろ」


「えーと? そんなことないわよ?」


「まあいい。ただ……太るぞ」


「ギャアアアアアア! うるさい!」


 女子にとって弾丸とも言えるその言葉を発することでリリーは心に大ダメージを受けた。まあこれくらいで許してやろう。


「次! ニーナ!」


「はい、私はこれで……」


「『ランク3。ユニコーンを見つけろ。ユニコーンを見つけたら10万ギル』」


 依頼の紙には目がキラキラと輝いた、ツノが額に生えた白馬が行儀よく座っている。


「……ちなみになんでこれにしようと思ったんだ?」


「はい、ユニコーンさんと仲良くなったら空とか飛んだり、一緒に遊んだりできて楽しそうだなと思って!」


 可愛い……。


 リリーもおそらく同じことを思っているだろう。可愛いけどレベルが上がらないしポイントも増えないからダメなんだ。


「次! セシア!」


 セシアは一枚の紙を掲げた。


「どれどれ……『ランク2。エクスペリエンスキャロットの討伐。報酬は一匹につき千ギル」


 紙の真ん中にニンジンに手足が生えた可愛いキャラクターが書いてある。


「……これどっかで見た覚えがあるんだけど、なんだこいつ?」


「……地球の経験値を吸って成長したニンジンのモンスター」


 セシアの補足が入る。ということは貰える経験値が多くてレベルが上がりやすいみたいなアレか?


「こいつ強いのか?」


「……そうでもないけど素早い。レベルが高いと羽が生える」


 羽が生えたニンジン……? 既視感は増すばかりだが同時にクエストへの興味も増してきた。これなら目標のレベル20まで近づけるはずだ。


「決めた! ニンジン捕まえに行くぞ!」

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