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元村人A、繰り返しの日々から抜け出します。  作者: 艇駆 いいじ
第3章 王都ラクシュ騒乱編
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番外編4:元村人A、プレゼントを決めます。

「ただいまより誕生日プレゼント購入会議を行う!!」


 宿屋の一室。リリーはドンと壁にある黒板を叩きながら言う。


「……リリー、これは一体なんなんだ?」


 俺は急に呼び出されたのでどういう顔をしたら良いかわからず、苦笑いに似た面持ちでリリーに聞く。




 俺の周りには真面目系次期女王のアリシア、不思議ちゃん魔法使いセシア、うるさい魔法使いアンジェラ、天真爛漫な情報屋ポーラ、好青年の聖騎士レイウス、変態ナースのルリアの合計八人が集まっている。




「つーかなんだこの人数は!? 読んでる人が追い切れるようになってるんだろうな!?」



「何を言ってるかわからないわね」


 俺のメタ発言を軽く受け流すリリー。個性が強いメンバーをこんなに集めて収拾がつくのか。もう知らんぞ。




「ここに皆に集まってもらった理由は他でもないわ! ニーナの誕生日プレゼントについてよ!」




 確かに、このメンバーの中には元奴隷の少女、ニーナの姿がない。しかし、その話を始める前に俺には疑問があった。


「ニーナって元奴隷だよな? なんで誕生日がわかるんだ?」


 確か親に売られたとかで誕生日はおろか、自分の名前すら忘れてしまっているはずでは?


「甘いわね。ステータス欄よ。ここには自分のパーソナルデータが載ってるのよ」


 ステータスか。レベルやスキル情報を把握するのにしか使ったことがなかったから知らなかったな。……いや、待てよ?


「じゃあニーナの本名もステータス欄で見れるんじゃないのか?」


 本名を忘れ、27番と呼ばれてきた彼女にニーナという名前を付けたのはリリーだった。ステータス欄にパーソナルデータがあるなら本名もわかるのでは?




「続きは本編で!」




「投げるなぁぁぁぁぁ!!」



 粗を見つけた瞬間にリリーにメタで逃げられてしまった。……いや、俺が最初にメタ発言をして逃げ道を作ってしまったのだ。ここは飲もう。



「で、誕生日プレゼントとやらはどうやって決めるのだ」



 アリシアが挙手をして話を切り出した。ナイスアシスト。



「いい質問ね。皆でアイデアを出して一番よさそうなものにするのよ! では何か案がある人は挙手!」



「はいはいはーい!」


 リリーの呼びかけに率先して手を挙げたのは情報屋のポーラだった。


「ではポーラどうぞ!」




「どうでもいいんですけどニーナさんのパーソナルデータ教えてくれませんか? 高く売れそ……」



「うちのメンバーの個人情報で金を稼ぐなぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 俺はポーラの頭に思い切りチョップをいれる。勢いでポーラの顔面が地面に叩きつけられ、床にめり込んだ。


「いたたた、何するんですか旦那! いいじゃないですか減るもんじゃないんですから!」



「お前にはプライバシーの概念がないのか!?」



「……というかそもそも誕生日プレゼントですらないんですけど」


 俺とポーラが揉めているのをリリーが止めた。仕切り直そう。



「次! 何かアイデアがある人!」



「はーい」


 次に挙手をしたのはナースのルリアだった。ニーナの師匠的なポジションだしまともなアイデアを期待する。




「ニーナちゃんのスリーサイズだけでもいいから教えて貰えないかしら!?」




「お前もかぁぁぁぁぁぁ!!」



 このルリアという女性、普段は真面目に王都ラクシュの衛兵の救護班として活躍しているのだが、ニーナの話になると突然変態になる。迂闊うかつだった。一番ここに来てはいけない部類の人間だ。



「やっぱ知りたいですよね!? 気が合いますね姉御!?」



「ええ! あなたも話がわかるタイプね!」


 ルリアとポーラが結託けったくし始めてしまった。他人の個人情報で仲良くなるのはやめてくれ。



「……とりあえず軌道を一度修正しませんか? プレゼントを決めればいいわけですから」


 まとまりが無くなり、もうここまでかと思われた瞬間、聖騎士のレイウスがナイスアシストを決める。この場で唯一まともな人間だ。今後の話し合いのキーパーソンになりうる。


「コホン、レイウスさんの言うとおりね。ちなみにレイウスさんは何か案はある?」


「そうですねえ、無難に花束とかでいいんじゃないですか?」




「つまんねーーーーー!」




 レイウスの案にそれだ、と言って早めに場をまとめてしまおうと思ったのに思わぬ大声によってまた掻き乱されてしまった。俺はもう一つ危険分子を見逃していた。




 アンジェラ。彼女は魔法使いなのだが、とにかくうるさい。喧嘩っ早くおしとやかとはとても言えず、時代錯誤的な言い方をすれば男のような性格だ。




「花束はないだろ! もっとこう、ヤバい、みたいな面白いのにしようぜ!?」



 悪いやつではないんだ。レイウスを侮辱するために言ってるんじゃない。ただこいつはバカなんだ……。


 てんやわんやになってしまった。ルリアとポーラは噛み合ってない話で盛り上がってるし、アンジェラはなんか騒いでるし、リリーも皆を鎮めようとしているがよく見たら騒いでるだけだ!




「落ち着け! 皆のもの!」




 もう終わりと思われたその瞬間、アリシアが声を上げた。


「おお! 流石アリシアさん! 終末と化したこの場をまとめてくれてる!」



「まずは皆で騒ぐよりも話し合わないと意味がないではないか!」



 でかした。アリシアがうまく場をまとめてくれた。やはり次期国王となる女、リーダーシップに長けている。


「ちなみにアリシアは何がいいと思うんだ?」


 俺は聞いた。この場が団結し書けている状態で話をまとめてしまえばこれより楽なことはない。




「ダンベル」




「え?」



「だから、ダンベル」



 しまった。こいつ鍛練バカなんだった。



 その発言を受けてまた場がめちゃくちゃになってしまった。八人もいるんだぞ!? その八人がバラバラに喋り出したら混沌と化すに決まってるだろ!?


 もうダメだ。おしまいだ。どこかの戦闘民族の王子のような言葉が頭に浮かぶ。足の力が出ず俺は地面に座り込んだ。



「ういーす、遅れたー」



 その時、俺たちの部屋に一筋の光が差した。



 時間にルーズで30分も遅れたその男は扉を開けて颯爽とこの混沌と化した会議にやってきた。



 ラクシュ最強の男、カイン・スティールだった。



「カインさああああああん!!」


「なんだお前。話はまとまったのか」


 俺は思わずカインの膝に泣きつく。こういう時だけ頼りになる男だ。このてんやわんやな状況を変えてくれ。


 それから俺たちは落ち着いてカインに事情を説明した。説明に数分がかかった。




「え? それ皆で一品ずつ買っていけばよくね?」



 解決した。

三章のメンバー全員出したかったんだけど、やっぱりカオスになりました。

本編は感情描写が多かったので、SS的な感じで。

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