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元村人A、繰り返しの日々から抜け出します。  作者: 艇駆 いいじ
第3章 王都ラクシュ騒乱編
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第42話:また村人Aたち、またバラバラになります。

「セシアさんよー。本当にやるのかよ。てっきり冗談だと思ってたぜ」


 アンジェラはやれやれと言わんばかりにめんどくさそうに前を歩く。私は松葉杖で彼女に着いていく。


「……魔法の練習は怪我してても出来る」


「そうは言っても今は休んだ方がいいと思うけどなあ。絶対そっちのが楽だぜ」


 アンジェラは恐らくベッドでゴロゴロしていたいのだろう。彼女も軽症者としてリハビリをするべきたが、面倒くさがりで誘わなければ外にも出なかっただろう。


「で、本当にやるんだな?」


 アンジェラが足を止めてクルッと振り返る。ここは王都ラクシュから少し外れた滝である。


 ラクシュの門から出て、少しすると小さな森がある。そこには大きな滝が出来ており、そこから流れて来る水が王都ラクシュの河川として通っている。


 ザザザザザと滝の水が重力で下に落ちて水とぶつかり、大きいが神秘的な音を立てている。ここは自然が多く、閑静で修行するにはもってこいだ。


「……うん。教えて。『魔力増強』のスキル」


 時は、昨日にさかのぼる。


「……気になる」


「なんだ!? 恋か!? セシアよお、今のうちに酸いも甘いも経験しておいた方がいいぜぇ!? なんてったって私たちは……」


「魔力を増強するスキル」


「だーーーーー! 突っ込まんかい!!」


 アンジェラは頭をかきむしる。


「一週間で習得したい」


「……一応訳を聞いていいか?」


 私はアンジェラにセーニャから聞いたことを……といっても脳にイメージが伝わってくるだけなのだが、全て話した。


 ゴーレム達が来る前に、何かしらの力はつけておきたい。


「なるほどな、わかったぜ」


 アンジェラは全てを聞くとウンウンと頷いた。


「……信じるの」


「ああ。なんたって魔法使いの猫だからな。それに、セシアが冗談を言ってるように見えない」


 彼女はうるさいが、魔法使いらしくない真っ直ぐな人間だ。


「ゴーレムを退治したら報酬とか貰えるかな!? ザクザクじゃねえの!?」


「……気楽に考えすぎ」


「だぁぁぁぁぁ!! ストレスでハゲる!」


 このようなやりとりがあった。


 こうして、今に至る。


 滝を背に、アンジェラはピースのような形で、指を二本立てる。


「私が教えられるのはふたつ。スキルの使い方と、コントロールの仕方」


「……それで充分よ」


 あの悲劇を繰り返さないために、ゴーレム達を前に今度は戦えるように、今やれるべきことをやるまでだ。


*(ニーナ視点)


「ニーナちゃん。じゃあ、今日は回復魔法を使ってみましょう」


 朝になって、ホールの外に出た。


 ルリアはパンと手を叩く。昨日は恐ろしい一面を見てしまったわけだが、こうしていると普通のお姉さんという感じだ。


「ニーナちゃんは、他の人と比べ物にならないほどの魔力量を持っているの。それは決して悪いことじゃないわ。でもね、使い方を覚えなきゃよね」


 もっともだ。この前のように気を失ってしまうのでは皆を救うヒーローどころかただのお荷物になってしまう。


「魔力が多いってだけだから。心配しなくていいのよ」


 ルリアは微笑みかけてくる。あれ、デジャブを感じる。それ昨日ホールの外で叫んでたやつだ。


「とりあえずステータスを表示してみてくれるかしら?」


「あ、はい!」


 言われるがままこの前やったようにステータスを表示する。パッと見てみて大きな変化として気づいたのは、レベルが0から1になっているという点だ。


「あ、レベルが上がってる!」


「やっぱりね。回復魔法は使えば使うほどレベルが上がるのよ」


 それは初耳だ。周りを癒して自分のパワーアップに繋がるなんて、嬉しいことだと思った。まさに自分にピッタリというか。


「もちろん、レベルが上がるまでにたくさん回復しないとダメだけど、それでも回復魔法を素で使える人は少ないのよ。ニーナちゃんは凄いわ!」


 ルリアに褒められて素直に嬉しい。今まで愚図と言われ続けてきただけに、自分に才能があると教わって驚いたのと同時に、誰かのために使ってあげたいと思う。


「今日はレベルが上がったことで手に入ったスキルポイントを使って、回復魔法を習得してみましょう」


 重要なワンステップ。ルリアに教わるままに、スキル一覧を開き、指定されたスキルを習得する。


「『ヒール』、習得!」


 私が宣言すると、私の体が白く光った。あの時と同じ感覚だ。スキルが習得されたということだろう。


「よく出来ました。じゃあ一度やってみせて」


「わ、わかりました」


 手のひらを胸の前に掲げてみる。手のひらから魔法を放つイメージで。


「『ヒール』!」


 私がスキルを発動した刹那せつな、手のひらが目を開けていられないほど眩しくなる。私は即座に目を閉じた。


「な、何が……」


「失敗しちゃったみたいね」


 ルリアが肩をポンと優しく叩き、言う。また失敗してしまったようだ。


「ニーナちゃん、(たきぎ)に火が付いているイメージをしてみて」


 ルリアに言われるがまま、乾いた枝を何本か地面に転がし、そこに火をつけるイメージを頭の中でしてみる。


「そこで上手に温まるには、火の大きさはどれくらいにする?」


 火をどのくらいにするか。大きくしすぎると薪が保たないし、熱い。逆に小さすぎると風で消えてしまいそうだ。


「それが答えよ。スキルの発動には適切なエネルギーを捻出する必要があるの」


 なるほど。わかりやすい。私は勢いよく魔力を放出したからさっきみたいに、火が大きくなるようにスキルが暴発してしまったのだ。


「わかりました。これからは適切な量の魔力を使う練習をするってことですね」


「その通りよニーナちゃん。練習には魔道具のランタンを使うといいから、ギルドに行くついでに今から買いに行きましょう」


 ギルド。職業に就くということか。専用スキルが覚えられると聞くし、ステップアップには必要な行程だ。


「はい! お願いします!」


 私とルリアはギルドに向けて歩き始めた。


 ……でもルリアの鼻から血が出てるけど大丈夫なのかな?

おまけ:ホールにて

アラン「なんで誰もいないんだーーー!?」

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