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第10話:元村人A、仲間探しをします。

 職業についた俺達は一階の酒場に向かった。クエストを行う上でふたりでは心もとないからだ。


「手品師……」


「あんたいつまでやってんのよ」


 落ち込んでトボトボ歩いている俺を見かねてか、リリーが呆れ顔で話しかけてくる。


「切り替えなさいよ。頼れる相棒さん」


「俺頑張っちゃおうかな!」


 ちょろいな…。


 酒場に到着すると、カウンターでお姉さんが冒険者と話をしている。


 いくつも並べられたテーブルの何個かでは、冒険者たちがパーティを組んで話し合ったり、昼間からどんちゃん騒ぎしていたりなど、比較的自由な空間となっている。


「なんでこんなに騒いでるのに二階はうるさくないのかしら?」


「防音の結界を張ってるみたいなパターンだろ。そういえば宿屋もうるさくなかったし」


 適当に結論づけて酒場のカウンターにいる女性に話しかけた。


「ようこそ。ここは酒場。何か飲む?」


「この国では何歳から酒を飲めるんですか?」


「16歳よ」


「じゃあ俺は16歳だから飲めるのか。アプリルジュースお願いします」



「なんで聞いたんだよ。あ、サンドウィッチもください!」



 華麗なツッコミにサンドウィッチ・・・・・・・も頼むなんてさすがリリー、伊達・・じゃないな。


「はーい。五百ギルね」


「それから仲間の募集をしたいです」



「じゃあこの紙に必要事項を記入して持ってきてちょうだい」



 渡された紙にはパーティのメンバーに関する情報や希望するメンバーの職業など、項目とそれを記入するスペースが設けられている。



 早速席について書いてみることにした。


「名前、レベル、職業はざっとかけたぞ」


「ご苦労」



「なんで上司みたいになってんだよ」



 リリーはアプリルのジュースを飲み、大満足の表情だ。それをよそに俺は働かされているわけだが。


「募集メンバーの職業は後方支援の弓士、魔法使い、癒術士とかでどうだ?」


「そんなところじゃないかしらね」


 リリーはそういうとまた一口アプリルジュースを飲んだ。


「ただ、ひとつ懸念していることがある」


「何よ?」


「俺達はレベルも大して高くないし、職業も手品師と戦士。知識もない」


「人が来ないって話ね」


「どうすればいいと思う?」



「うーん。ここのらんに全力を尽くすとか」


 リリーが指したところは、求人の紙の空きスペースだった。所定の欄に必要な情報を書き、最後に空きスペースで個性を出すのが一般的だ。


「でもここ、パーティの雰囲気とか書くところだろ? なんて書くんだ?」


「ふふふん、私に任せなさい!」


 リリーが紙を奪おうとするのを全力で阻止する。


「何をするの!?」


「……いや、オチが読めた」


 どうせ訳のわからないことを書くんだろう。


「何を書くのか、まずは案を出そうぜ」


「はい!」


 リリーが挙手をする。


「はい、リリーさん」


「クーポンをつける!」


「なんで主婦目線!?」


 それじゃ集まってくるのは主婦だけだ。


「はい!」


「はい、リリーさん」


「付録にトートバッグをつける!」


「雑誌感覚かよ!?」


 女子高生を集めてどうする!? あ、女子高生っていうのはこの世界では……禁則事項です。


「はい!」


「はい、リリーさん」


だんだん俺の声のトーンは低くなっている。


「折りたたんだらドラゴンになるようにするなんてどう!?」


「なんで子どもの知育おもちゃみたいになってんだよ!?」


 とうとうフリースペースからすらも離れてしまった。絶望的な状況だ。


「じゃあアランはどうすればいいと思うの!?」


 リリーが頬を膨らませ、ブーイングをする。


「ラクシュのガイドを載せるとか?」


「なんで村人A目線なのよ。」


 俺は昨日まで村人Aとして村の案内をしていたから、そういう発言をしてしまったのだろう。リリーと大差ないじゃないか。


 ……募集の張り紙はしないことになった。



 結局ふたりで行くことにして、クエストの掲示板に向かうと、数人の冒険者たちが壁に貼られたクエストの紙を見ながら何やら話し合っている。


 掲示板のスペースは充分にあり、何人かが掲示された紙をじっくりと見ていてもまだ余裕があるくらい。見た感じで大体五メートルくらいの横幅がある木の板だ。


 数十枚貼ってある紙の中から何枚かに目を通してみる。


「ランク2、巨大ミミズ討伐。ランク3、デビルコンドルの卵採集、ランク4、ジャイアントトロール討伐……。色々あるな」


「私たちが受注じゅちゅうできるランクは3までって言ってたわね」


「そうだな。なるべく効率よく稼げる仕事を見つけたいところだが」



 ざっと目を通したところ、ランク1の依頼は一万ギルから二万ギル。ランク2の依頼は一万五千ギルから二万五千ギル、と言ったように幅は一万ギルほどになっているようだ。



「俺達のパーティのレベルじゃクエストのランクは2が妥当なんじゃないか?」


「そうね。人数的にもちょうどいいと思うわ」


 俺はランク2のクエストを中心的に見ていく。


「これなんかどうだ?」



『ゴブリンの森に生える薬草の採集。推奨レベル2。ひとつあたり三千ギルで買取』




「なんでこれなのよ?」


 リリーは不思議そうに尋ねる。


「他の依頼を見てみろ」


 俺は試しに同じランク2の「アルーフ・ウルフ討伐」のクエストの紙をリリーに見せた。



『アルーフ・ウルフ討伐依頼。推奨レベル2。報酬二万二千ギル。違約金はその半額』




「違約金?」




「そうだ」




 違約金とは、万が一冒険者が依頼を達成出来なかった時に発生する料金だ。




 冒険者はクエストを失敗すると違約金を支払うため、出来る仕事をこなさなければならないのだ。ちなみに違約金はほとんどが報酬の半額程度だった。



「なるほどね。それに対して薬草採取は違約金が発生しない」



「そういうこと。腕次第ってわけだ」



 薬草がひとつも取れなかった場合、俺達は骨折り損のくたびれ儲けだが、仮に八つ以上採集出来た場合、先ほどのアルーフ・ウルフ討伐よりも高額を、ノーリスクで手に入れることが出来る。



「でかしたわ! それで行きましょう!」


 俺達は早速クエストを受注した。

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