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ワールドアップデート! ~コミュ障ボッチの俺が神々を殺す話~  作者: 百里
-Phase.06- 大切な人を守ろう!
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56 嘘と偽りのアフタースクール

前回までのあらすじ


 ボッチコミュ障の高校生・柴田は、電脳の女神エレクトラにだまされて契約を結ばれてしまう。

 彼女の目的は、自分の神格ゴッドランクを上げること。そのためには有名人になり、お供えを捧げ、魔鬼フラクを倒せというハードモード!


 和の生徒会長立候補。

 その真相とは?

「どうだ?」


 放課後、俺はグラウンドの隅でエレクトラに語り掛ける。


「生徒会長さんはスマホをほとんど使っていないですね。ときどきメッセージをやり取りしていますが、1か月さかのぼっても学校内の話題はありません」

「……華子はなこは?」

「華子さんも動きはなしです。というか、柴田さんの隠し撮りがめちゃくちゃあるんですが……」

「寒気がするからやめてくれ……」


 今考えれば、初めて会ったとき俺に突き付けてきた写真は、華子自身が撮ったものなのかもしれないな。

 あの頃の俺って起点マーカーレベル15とかだ。駅に偶然居合わせたにせよ、誰が気づくんだよ。


「柴田さんが華子さんの下僕になってしまった場合、私の立場はどうなるんでしょう……」

「俺が下僕になるの確定かよ」

「そりゃ、なんとか回避してほしいですけど」

「まあ、心配すんな。生徒会選挙中に立候補辞退するから」

「えっ? なんですか、それ」

「賭けはあいつに負けた場合だろ。投票日までに辞めちまえば、勝敗はつかないからな」

「……華子さんの不戦勝じゃないですか、それ?」

「そんな約束はしてない。俺は知らん。そんなので勝って嬉しいか? ──それで押し通す。あいつはプライド高いし、ド変態だし、そんなんじゃ満足できないだろ」


 俺が言い捨てると、エレクトラがため息をついた。


「キタネェ~……ですね。さすが柴田さんです」

「俺は起点マーカーレベルが上がればいい。やまとより目立てばな」


 俺は学校のことなんざ興味ない。

 和を助けれればいい。

 鳴子なるこの言う通り、私情しかない。


「あと推薦人はわかったか?」

「ええ……」


 エレクトラが生徒たちのSNSグループをチェックした結果を知らせる。


「……この名前は、男か」


 和と同じクラスだ。

 いままで同学年は女子生徒しか関わりがないと思っていたが、男子生徒もイジメに加わっていたのか。


「あの。この生徒さん、柴田さんが話しかけた子ですよ」

「……いつ?」

「和さんの魔鬼フラクが暴走する直前に……」

「……」


 隠された和のスマホの場所と、和たちがいる場所を教えてくれたおとなしそうな男子生徒。あいつが……。


「こうなったいきさつが、手に取るように分かりますねえ」

「だからって、許せるわけない」

「彼じゃなくても、誰かがやらされていましたよ。見逃してあげましょうよ」

「それは本人と話して決める」

「……柴田さん、彼の勇気のおかげで魔鬼フラクの暴走があれで済んだのかもしれないじゃないですか。そのせいでまた彼は辛い目にあって、いまも自責の念に苦しんでいるかもしれません。これ以上、追いつめても仕方ありませんよ」

「ダメだ」


 たしかにあいつは勇気があった。他の連中と同じく、黙っていてもよかったはずなのに。

 だが言った以上、覚悟するべきだろう。

 自分が次の標的になるかもしれないと。


「柴田さんは強いというご自覚ありますか?」

「……なんだよ、いきなり」

「普通の人は、柴田さんのように孤独と向き合うなんて無理なんですよ。そりゃコミュミジンコだのなんだと、柴田さんだってボッチをこじらせたり、コミュ障でヘコんだりしてますけど、妥協しなかったですよね?」

「俺だって妥協できりゃ、してたって」

「普通は集団に合わせて己を曲げるものなんです。そうやって窮屈さを感じながらも、独りじゃないと安心するんですよ。席替えがあれば前後左右のクラスメートと雑談ぐらいできますし、部活に入れば自然と知り合いができます。男衾おぶすまさんの動画研究部《アニ研》の方とだって、仲良くできたはずです」

「だから、それぐらいわかってるよ。俺はそれすらできなかっただけだ。強いわけじゃない」

「私の言う強いというのは、良いという意味じゃありませんよ?」

「あーそうかい、強情だって言いたいのか」

「お父様のことを考えてですか?」

「お前……」

「監視されているわけではないんですから、なんとでも誤魔化せるじゃないですか。自分から行動しなくても、一人や二人ぐらい話しかけてきた人はいるはずです。実際、コミュ障だって言っても和さんと仲良くなったし、バニャさんのようにネットゲームでも知り合いがたくさんいます。私とだって……」

「俺はいくじなしだから、自分が傷つきくないだけだ。リスクがなけりゃ、俺だって……」

「じゃあ、なぜ和さんにはこんな必死なんですか? 傷つきたくないなら、深くかかわらなければ良かったですよね?」

「そりゃあ、だって……」

「自分と同じボッチコミュ障だったからですか?」

「もしほかの奴だったら、友達がかばってくれるだろうし……」

「それなら、眉村尊さんにうまく打ち明けることもできたはずでは?」

「あの状況じゃ、俺にはできなかったの分かるだろ! それに和が男だったら、ほっといてるって」

「可愛い女の子だったから、下心があったと言いたいわけですね?」

「そ、そうだよ」

「それでも和さんと付き合うおつもりはないと?」

「さっきからなんだよ、お前は! 神格ゴッドランクが上がるんだから、都合がいいだろ。俺を利用してるくせに、説教とかやめろよ! 俺は誰も許すつもりはないからな」

「そうやって、みんな和さんのために犠牲になれと言うんですか?」

「……お前までそういうこと言うのかよ。もういいって!」


 いきなりなんでエレクトラはこんなことを言い出すんだ。

 今までなら俺が何をしようと呆れこそすれ、こんなに責め立てなかったはずだ。本当に説教をしているのか、それとも他の思惑があるのか。

 たしかに俺がこれ以上敵対者を増やしても、生徒会長選挙ほど効果があるわけではないだろう。だが、お供えをよく考えろと言ってみたり、魔鬼フラクの討伐に消極的だったりで、今までと一貫性がない。


「──それで。和の様子はどうなんだよ」

「バニャさんとやり取りはしていますが、ほかはなにも。もう下校されたようです」

「……そうかよ。じゃ、銀行行くぞ」

「わかりましたが、供する(もやす)のはまだですよ。バイト代だってあんなに惜しんだのに、なぜもっと大切なものをぞんざいに扱おうとするんですか」

「ちっ、うっせーな」

「……もー! 怒りますよ!」


 バタバタとエレクトラが腕を振る。

 前のちびっこの頃ならともかく、いまの図体じゃ残念な子にしか見えんな。


「反省してまーす!」

「柴田さん!」


 俺はカバンを背負って歩き出す。

 と、ポケットのスマホが鳴った。

 俺は無意識のうちに期待してしまった。


 スマホにメールが一件。

 それは知らないメアドだった。

 自分も驚くぐらい落胆している。


「なんだよ、スパムかよ」

「あ、柴田さん……?」


 件名は、「女子テニス部室」とある。

 本文はなし。

 一枚の画像が添付されていた。


「……!」


 俺は走り出した。

 それは女子生徒に囲まれて歩いている和の姿だった。


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