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ワールドアップデート! ~コミュ障ボッチの俺が神々を殺す話~  作者: 百里
-Phase.04- 学校の人気者になろう!
29/85

28 成金ソロプレイ

前回までのあらすじ


 ボッチコミュ障の高校生・柴田は、電脳の女神エレクトラにだまされて契約を結ばれてしまう。

 彼女の目的は、自分の神格ゴッドランクを上げること。

 そのためには有名人になり、お供えを捧げ、魔鬼フラクを倒せというハードモード!


 (やまと)の弁当は女子トイレに捨てられていた。

 さらに敵を作る柴田。

 二人は学校で孤立していた──。



「これが入会の申込用紙なぁ~?」

「おう」

「んで、これが料金表~。まずネカフェか、カラオケか確認して、1時間以上なら、パック利用金すすめろよ~」

「おう」

「ここに座席表あっからぁ、喫煙と禁煙席確認な~。で、客に選ばせてあとで忘れずマーク~」

「おう」

「ドリンク補充とフードはまたおいおい説明すっから~、とりあ~ずあたしの横立って接客から覚えようぜ~」

「おう」

「なんか質問あっか?」

「お前、マジで働いてるんだな」

「ど~いう意味だよ! バカにしてんのか、ブチ食らわすぞ!」

「いや尊敬っす、リスペクトっす、ゲキ憧れっす、バニャ先輩!」

「うへへへ~うへ~うへ~」


 超アホっぽい。

 放課後、俺は「ソロプレイヤー」に直行して、千羽せんばなな──バニャから指導を受けていた。


 今まで働いたことなかったからわからなかったが、ネットカフェも結構覚えること多いんだな。小売店みたいに商品知識もいらないし、コンビニみたいに業務が多いわけでもないから、きっと楽じゃないかというのは甘えだった。


「あとシフトとか連絡してぇから、ん」

「その手つき、パワハラだぞ、お前……」

「それもうやったし! いいからスマホ出せよ、バカか!」

「ツバ飛んでるって」

「うるるせぇ、ぺっぺっぺっ!」


 俺がスマホを出すと、バニャがアドレスを登録する。


「JK唾液無駄撃ちすんなよ。後半のステージで苦労するぞ?」

「ワケわかんねぇボケすんじゃねえ~よ! キモいわ!」

「あーあ、俺もツバ売れたらなー。お前みたいに、第6デバイスとか買えるのになー」

「ちょ、あたし売ってないかんね!? ちゃんとここでバイトして買ったぞ! ……まじでおめぇ、お客さんいるときにそういうこと言ったら、ぶっ殺すかんな!」

「むしろお客さん喜ぶんじゃね? 魚の醤油入れ持って殺到するかもよ?」

「アホかボケぇ! んなもんあたしのスマイルだけで十分愉悦だわ! あとなんで醤油入れ!」

「よーし、笑ってー?」

「にこりー! はぁい、バニャ~!」


 VRMMORPGでやってる決めポーズをとるバニャ。


「……ツバ売ったほうがいいな、うん」

「シネシネシネシネシネシネ! 目ぇ噛んでシネ!!!」


 などと遊んでいられたのも始めのうち。

 夕方になると学校や仕事を終えたお客さんが次々と来店し、それをバッサバッサとさばくバニャ。まさに豪腕。まざまざとコミュ力の違いを見せつけられた。

 わきにつっ立ってるだけでも、働くって疲れるなー……。



☆★☆★



 疲れ果てて帰宅。


「エレクトラー」

「呼ばれました! 飛び出ます! じゃん!」


 だから怒られるって。


「俺の起点マーカーレベル、教えてくれ」

「なんと現在、73です!」

「よーし! このまま行けば、すぐ100だな」

「それがですね柴田さん……お昼休みに見たのですが、やまとさんの起点マーカーが128になってます……」

「はあっ!? なんでだよっ!」

「有名税といいますか。柴田さんの話題が出ると、自動的に和さんの名前も出てしまうのでしょう。なにせ眉村お兄さんのこともありますし、どちらが注目されるかというと……」

「それじゃ差が縮まらないだろ! いや、むしろ今日のは差が開いてる……」


 俺が目立てば目立つほど、和を巻き込むなんて。

 予想してなかった俺はバカだ……。


「柴田さん、じれったいかもしれませんが正攻法で行きましょうよ」

「ダメだ! あんなもの平気でいられるわけがない。弁当捨てられたり、メガネ隠されたり、おかしいだろ……」

「ですが、今のやり方では悪化させかねませんよ? 100超えの人に引き寄せられている魔鬼フラクというだけでも、影響力は大きいのです」

「なら、どうすればいいんだよ……」


 イヤガラセを止めさせるしかない。

 それが最善策だが、ともかく和への関心ヘイトを削いで俺へ向ける。その時間を稼ぐためには、対処療法でもなんでもやってみるしかない。


「予定変更だ。明日、拡張オーグメンテーションで和の魔鬼フラクを完全攻略は無理でもともかく叩く。いま一番レベル差縮まってるはずだろ」

「でもお供パワーが。柴田さん、バイト始めたばかりですよね?」

「多少はなんとかなる」

「おお、あるんじゃないですか~」

「そうなるから言わなかったんだよ! あと、ちょっと聞きたいことがあるんだが」

「なんでしょうか?」

拡張オーグメンテーションって、規模と活動時間がお供えパワーで変わるんだよな?」

「そうですね。あとは時間圧縮率です」

「時間圧縮率?」

拡張オーグメンテーションすると、現実世界の身体は抜け殻になります。その時間が長すぎると大変なことになります」

「お前! そんなこと聞いてないぞ……」

「聞かれなかったですから、言わなかったんですよ。──時間圧縮することで現実世界での経過時間を減らします。そうやって少しでも抜け殻状態を短くするのにお供えパワーを使います。……とはいえ、私の神格ゴッドランクも上がっていますから、圧縮形式もバージョンアップしています」

「……本当だろうな?」

「もし危険なら警告を出しますから、安心してくださいませませ」

「いやお前が一番の不安材料なんだが……?」

「あいかわらず疑い深いですねー。ほとほと感心しますよ、私」

「お前の感心って呆れると同義だろ……。まあ、いいや……それで規模の話なんだが、まず防具はいらない。ある程度はお前の力で防げるんだろ? アプリとか」

「致命的なのは防げるとは思いますが……それでもどんな悪影響が出るやら分かりかねますよ?」

「それでいい。あと武器も包丁ぐらいのサイズでいいから。さらに言えばポリゴン数を最低まで落とせば、消費を抑えれるか?」

「それは可能です。いっそ棒みたいにしてしまえば、相当節約できますよ」

「よし、それでなるたけ活動時間を伸ばしてくれ」

「やってみる価値はあるかもですね。では……お供えタイーム!ですよ!」

「……ちょっと待て。一つ、納得いかないことがあるんだが?」

「もー、なんですか! 水を指しますねえ。指しまくりますね。柴田空気読めない虎ですか?」

「無理やりすぎるわ! ──いやさ、食べ物とかのお供えは俺が食べてもいいのに、なんで金はダメなんだ?」

「あー、そこですか」

「ピンポイントでそこ! お前、俺の経済状況わかってるだろうが」

「えーっとですね。……お酒や食べ物は神とともに摂ることで血肉を分けるものですが、お金はものと交換するための道具ですから、それそのものに価値はありません。それでも自分にとって大切なものを奉り納めるゆえに、神は価値を認めるのです。ようは『お前のリスペクト見せてみろ!』ってことですよ」

「なんか都合よすぎるんだが?」

「いいから、早くやってください! このあと私、柴田さんの武器作って調整するんですから」

「……わかったよ」


 俺は財布から出した千円札に火を点ける。

 瞬く間に火が大きくなって紙幣は燃え尽きた。


「よろしいでしょう。続けてください」


 次々と燃やしていく。


「うー……」


 そして一万円札。

 キツい。

 1枚、2枚、3枚。

 火が点くたび、ため息が漏れる。


「どうだ明るくなっただろう」

「大正ロマンですねえ~」

「これでバイト辞めちまったら、俺しばらく歩いて通学するハメになるぞ……」


 昨日バイトに行く前に俺は持っていたゲームを中古屋に売り払った。さらに親父からもらった定期代も合わせて燃やした。計3万6000円。

 すべてが灰になった。

 やるしかない。


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