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ワールドアップデート! ~コミュ障ボッチの俺が神々を殺す話~  作者: 百里
-Phase.03- いろいろな人と仲良くなろう!
18/85

17 毒炎氷雷モーニング

前回までのあらすじ


 ボッチコミュ障の高校生・柴田は、電脳の女神エレクトラにだまされて契約を結ばれてしまう。

 彼女の目的は、自分の神格ゴッドランクを上げること。

 そのためには有名人になり、お供えを捧げ、魔鬼フラクを倒せというハードモード!


 チート同然の方法でなんとかエレクトラの神格ゴッドランクを上げた柴田だったが、もう一つやらなければならないことが残っていた。

 それは眉村(やまと)にハンカチを返すことだった……。



「おう」

「よ」


 月曜の朝。

 また憂鬱な平日の始まりだ。

 しかも決まって最後の休みの夜ってのは寝るのが嫌でグダグダした結果、だいたいが寝不足である。


「スリップダメージってのは盲点だったなあ……」


 頭は重く、身体はだるい。

しかしながら、昨日の夜はある意味とても充実していた。

 俺のやっているVRMMORPGでこのあいだイベントが始まった。そのボスというのが厄介で、短時間で2体を同時撃破しないとクリアにならないのだが。


 すでに超廃人の集まるトップギルドが、ボスを撃破したという情報は入っていた。

 その攻略動画も上がっていたが、それは大量の高級アイテムを投入し、超レア装備と神業めいた連携でもって倒すという正攻法だった。


 その動画が公開され炎上が収まったかといえば、さらに大きくなった。そこまでしてやっとクリアというのは、一般プレイヤーには希望より絶望のほうが大きかったというわけだ。


 うちのギルドでもそんな真似ができるはずなく、別の攻略法を考えた結果、編み出したのがスリップダメージ戦法。


 ボス2体を10秒以内に同時撃破しないといけないのだが、通常だと1体のHPを削るにはだいたい20分かかる。つまり1体を20分かけて瀕死状態にして、2体目を瀕死状態にした頃には、1体目が回復してまたそちらを削り直して調整して、さらに2体目を……と管理がやたら面倒くさい。ので、同時に削っていこうという戦略だ。


 そこで防御主体で動きつつ、確実に一定量の数値を出し、なおかつHPの自然回復を止めてしまうスリップダメージを使ったらということを言い出したのが、男衾だ。


 スリップダメージというのは、毒とか炎上のように、少量だが決まった時間決まった量のダメージを与え続ける状態異常のこと。

 この種の状態異常をとっかえひっかえ、ひたすらかけ続ける。かけたあとはただ防御で見守る。

 幸いにもボス2体とも同じステータスなので、同じ状態異常攻撃をすれば同じように状態異常になることは確認できた。


 というわけで、俺のタンクが2体を引きつけつつ、各種状態異常を与える武器を2本ずつ揃え、アタッカー二人で合わせながらボスを殴って毒やら炎上やら凍結やらで削り続けること6時間半。


 ……ついに撃破した!


 クリアリザルトを見る限り、俺たちのパーティは全サーバーで4番目のクリアだった。

 ちなみにトップギルドのタイムは55分。

 周回するには効率が絶望的に悪い。


「おはようございます」


 校門では、今朝もいん華子はなこが数人の女子生徒を引き連れて挨拶運動をしている。相も変わらずの人気ぶりだが、あれだけ人だかりができて暴徒化しないってのもうちの学校のお上品さゆえなんだろうか。


「さーせん」

「さー」


 俺と男衾は群がる生徒の中をチョップでかき分けていく。

 とりあえず1限目の古文と3限目の世界史の授業は寝よう。で、昼休みも寝て、午後の体育は無理だから美術で寝るか。


「あ、待ってください」


 できるだけ睡眠を取って戦いに備えなければいかん。

 ボスを撃破したと言っても、もっと速くできるはずだ。

 ギルドのメンバーを入れ替えながら練習して、より効率的な周回方法を見つけ出さないことにはレアアイテムのドロップも望み薄だしな。


「待って」


 それとできるだけ考えないようにしてるんだが。

 眉村和まゆむらやまとにハンカチ返さないといけない……。

 昨日、洗濯してきっちりアイロンも掛けてきた。もちろん柔軟剤は無香料だ。

 やっぱり返さないとだよな。

 気が重い……。


「柴田君!」

「はい?」


 誰だよ、こんな人だかりで呼び止めるやつは。

 俺が振り返ると、その場に居合わせた生徒すべての顔がこちらを向いていた。どの顔も「なにが起こっているんだろう」というようなポカンとした顔。


「放課後、生徒会室に来ていただけませんか?」


 そのマヌケな集団の中でただ一人、にっこりと微笑んでいたのは院華子だった。


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