表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔械戦争  作者: 製造物
オープニング
2/5

1、日常

 ーー暑い・・・


 今は八月、もう少しで秋になる。

 それにも関わらず暑い。

 これはどういうこと?

 ワラの屋根の影で汗を流す身体を冷やしながら僕はそう感じる。


 見渡す限り、森森森木木木森木虫虫森川田田虫・・・正直に言ってウザい。

 しかもこんな環境で何が悲しくて畑仕事に所為せいを出さないといけないのか・・・。

 せめて王都で剣の稽古ならまだしも・・・農民という職業は本当に損だと思う。


 剣を握る人はそれを振るだけでお金がっぽり、毎晩美女と酒池肉林間違いなし。

 羨ましい。

 一方でこちらは生活に必要な食べ物を作っているのに地味な仕事扱い。

 ・・・理不尽だと思う。

 確かに僕は魔法の才能はない。

 それどころか魔力が体内にない。

 だからこそほぼ世間的には意味を成さないだろう。

 つまり欠陥品だ。

 なんたってこの世界では魔法が全て。

 強力な魔法は一騎当千の力を誇り地形すら変える。

 対人戦しか行えない剣技や拳技など古い時代の文化・・・というのが関の山。

 それでも体術だけならばそれ相応の自信はある。

 少なからず将来親の剣士の職業を継ぐパパヤよりかは実力はあると確信する。


 それにも関わらずこちらは農民、しかも親もいなく魔法の才能もないためただの雑魚として認定されている。

 服装は一枚の布を縫ってなんとか着れるようにしたものでパパヤの新調の鎧が羨ましい。

 こんなにも魔法の能力、そして家系で違うものなのか?

 ・・・確かに水魔法は農作業には便利だが。

 ・・・ついでに土も便利だが。

 ・・・やっかみではございません。


 僕は今日も八つ当たり気味にクワを振るう。

 この時の気分はさながら剣士のように。

 標的は暑い日光で硬くなった土。

 それを柔らかく、細かくしていく。

 いつも通りの日常で、もうすぐ作物を植えるので準備を行なっている。


 だからなのか。

 いつもよりも数倍も濃い影に敏感に反応したのは。

 非日常、それを求めていたからではないだろうか。

 理不尽を理不尽で吹き飛ばす、そんな出来事を。


 どうせ入道雲でもやってきたのだろう。

 そう思っていた。

 しかし予想は見事に裏切られる。


 それは大きな鉄塊。

 雲と並走するように浮かぶそれはおそらく縦幅500メル、横幅100メル。

 クワの先端の鉄の光沢、それを確かに持っている。

 だが質が、重量が、凶悪さが違う。


 ーー何何何何何何何何何アレはおかしい何何何何何、何何何魔法?何何何何何何未知何何違う 意味がわからない 何何何何何何未知何何何何何未知未知何何何未知未知未知何 未知未知未知 未知何何何何何未知未知何未知未知何何何何 雲? 違うだろ!? 敵? 剣? 何何未知未知何未知何未知何未知何未知何何何何????


 一瞬にして混乱におちいる。

 思考も呼吸も照準もままならない。

 未知の物体。

 普通ならば空中に浮いている時点で新たな魔道具だと考えるべきだろう。

 しかしそれにしては形状が複雑すぎる。

 様々な、数多くの凹凸おうとつで組み上げられている。

 形はU字型。

 魔道具ならばそんな形をせずとも飛ぶ。

 あんな形状である意味がない。


 未だに思考の渦の中にいる僕。

 だがさらに事態は進んでいく。


 謎の物体の円筒から黒の巨球が落ちる。

 それは凶悪な光を反射しながら重力に従う。

 そして加速する落下速度。

 僕が息のリズムを思い出した頃には球はいくつも地面に接触していた。


 地面が怒るように揺れる。

 揺れる揺れる。

 めくれる地表、刻まれる亀裂、砂塵は空気に混じり出す。


 これが平和ボケしていた僕らに絶望の始まりを告げた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ