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面倒な授業といつもの友と

 教室へ着くと望が話しかけてきた。

 望はこの学校入った時に隣の席で話をするようになった友人だ。

 進級した後も同じクラスで近い席にいたので何かと話をする事があるせいで、だいたい望と一緒にいる事が多かった。


「おはよう、馨。相変わらず気のない顔つきしてるなぁ、今日も桃香ちゃん怒らせてきたのか?」

「そんなことないよ、あいつが勝手に不機嫌になるだけだよ。」

「あ~あ、こりゃまた適当なことを言って怒らしてきたんでしょ。幼馴染の縁もあまり気のない事ばっかりしていると見捨てられちゃうよ」

「うるせぇな、」

「まぁ、そんな不機嫌になるなよ。」

「もっと普通にしていればいいのにねぇ、幼馴染っていうのも難しいもんだな。俺は親が転勤族だったから幼馴染なんてのは全然分からないけどな」

「そうは言っても昔の友達くらい残してきてるんだろ」

「まぁ、多少はね。それでも年賀状の付き合いくらいしか残ってないよ、せっかくいるんだから大切にしとけよ。」

そういいながら望は席に戻っていった。


 授業が始まる。先生の話を聞いて、板書を書き写すだけのノートは飽き飽きする。

 とりあえず自由に見たいところを読んで自分のペースで勉強している方が俺には合っていた。

 そう言い訳をするわけじゃないが、授業中の時間は勝手にネットにつないで自分の知りたい情報を集めてオリジナルのデータベースと人工知能のペットを作ることに専念していた。


 学校の授業は試験前にそれっぽい範囲が出されるので、そこさえ抑えておけば何とかなったし、授業の内容はネットにも載せられていたので真剣に先生の話を聞かなくても試験に困る事は無かった。 それに学年一位とか称号を取るために頑張るのは性に合わないので、そこそこでいいと思っていた事もある。


 それよりも新しいソフトを作成して動かす方が自分にとって有意義だった。思考をプログラムに織り交ぜるのは難しい。一応フリーの素材はネットにいくつか落ちていたが、機械的な対応に留まるし、複雑な質問になるとエラーで止まってしまう事が多かった。


 難解な質問に規定のユニークな返答をするソフトが賞賛を得ることもあったが、そんなソフトも結局は作った人がそう組んだだけであって別段特別な仕掛けは特に無いのだ。

 俺の作っているソフトは新しいことを吸収して選択肢を再構成させるようなロジックを盛り込んでいる。


 初めは気の聞いたユニークな事は言えないかもしれない。でも会話のやり取りをしていく中でオリジナルのソフトに成長するようなソフトを目指していた。

 人工知能には限界がある。そんな諸説もあるが、そんな壁があるから挑戦しがいがあるのだ。ひたすらプログラムを打ってトライアンドエラーのデバックをする。

 そうしていると授業はすぐに終わって昼休みになった。


 だいたいは望とご飯を食べている。今日も望と学食にやってきた。

「ところで夏休みどうするのか予定はあるのか?」

「いや、特になし。」

「こっちも特になし。気をつけないと去年みたいに夏休みぼーっとして、毎日ゲームして終わってしまいそうだよ。」


「それは避けたいとこだな、どっか出かけたりしないのか?家族旅行とか」

「その予定もなし、親も仕事で忙しくてそんな暇ないんだとさ、もう中学生なんだから友達か彼女と自由にやりなさい、だとよ。なぁ、どっか出かけるか?海とか、山でキャンプとか」

「悪いけどパス、何が寂しくて男二人で海に行かなきゃ行けないのさ」

「相変わらず連れないねぇ、何も男二人なんて言ってないだろ、桃香ちゃん誘えよ。幼馴染なんだろ、その友達とかも呼んでさ」


「なんだよ、桃香頼みか?あいつは海に行って映えるような奴じゃないよ。それにあいつに海に行って水着姿をみたいとか思われるのも、エロ親父とか言われるのも嫌だしな」

「桃香ちゃんのことそんな風に言うなよ、桃香ちゃん結構人気はあるんだぞ。お前の知らないところで彼氏とか作ってるかも知れないぞ。それに海が嫌なら山ならそんな事にはならないだろ、とりあえず家でゴロゴロしてるくらいならどっか付き合えよ。お互い部活もしていない身だしさ。」


「あぁ、わかった。気が向いたらな」

「なんだよ、その返事は。まさか、お前、彼女が出来たとか・・・、それでデートするから俺なんかに割いてる時間は無いという事なのか・・・、そうか桃香ちゃんか、だから幼馴染の桃香ちゃんに人気があるとかいっても動揺しないで平然としているのか。そういうことならもっと早く言ってくれよ、くぅ~、そうであれば致し方がない。男、望はお前のために孤独な夏休みを耐えようではないか」

 望がふざけて顔をふさいで泣くふりをして、人の肩に手を当てて勝手に納得し始めたのであわてて訂正を入れた。


「何、くだらない事言ってんだよ。俺と桃香はそんな関係じゃないよ。」

「そうですか、まぁ細かいところまで詮索はしないけどさ、女子との触れ合いの少ない人からしてみればお前と桃香ちゃんは十分うらやましい関係だけどな、」

「はいはい、そんな事言ってないでご飯食べないと昼休み終わっちまうぞ、それに夏休みの前に試験があるだろ、そっちをまずは頑張れよ」

「言ってくれるねぇ、お前、毎回授業をまともに聞かないくせに平均点は軽くとるんだからむかつくよなぁ、馨が本気出せば学年一位だって簡単に取れるんじゃないのか?」

にやにやしながら、また肩を叩いてきた。


「人をそんな買いかぶるなよ」

「それを平均点であまんじてるなんてねぇ、よっ、ミスター平均点さん。どうせ今日言ってた試験範囲も楽勝だと思ってるんでしょ?」

「えっ?今日言ってたっけ?」

俺はちょっと焦りながら聞き返す。

「あれれ?ミスター平均点さん、試験範囲分からずついに落第ですか?」

望はかなりにやけた顔でこちらを伺っている

「いや、大丈夫、試験範囲って、あそこ、そうあそこだよな。あそこなら楽勝だよな、ほらあの何ページだっけ?な、なぁ?」


 この学校は試験の前日に試験範囲を言うという、鬼畜な事をするので試験範囲を聞きそびれるというのはかなり致命的な事だった。

 まぁ普段の授業でやっている範囲なのでそれほど慌てる事はないはずなのだが、普段授業を聞いていない俺には右ストレートのパンチを顔面に決められたようなダメージがあった。


 それに「いつもちゃんと聞いていれば解けるはずです。」みたいなメガネを指先で押して持ち上げ「きりっ!」と目線が光る、テンプレートに載っていそうな女先生もいて、後から聞きに行く事は許されなかった。

 だからこそ、今目の前にいる望は貴重な情報を持った重要参考人なのであった。

「そうだなぁ、夏休み海行きてぇなぁ、あぁ、潮風が俺を呼んでいる。いや~、あそこ、あそこだよね。そう、あぁ、どこだったっけなぁ、海に行く人が集まるか心配で試験範囲忘れそうだ。あぁ、大変だ。このままだと試験範囲がぁぁ~~」


 なんともわざとらしい奴だ。俺は他の人に試験範囲を聞くか、こいつの茶番に付き合うか、少し迷って唸ったが、茶番を始めたのは自分のような気がするし、望がチラチラこちらを伺う様子をみて観念した。

「分かったよ、桃香に声かけておけばいいんだろ?」

「お、話が早いね、お兄さん。いい場所セッティングしておきますぜ。」

「言っとくけど、桃香が来るかどうかは分からないからな。」

 俺は朝の桃香の不機嫌っぷりからどうやって頷かせようか頭の中でシュミレーションしながら、難易度が高い事を自覚していた。


「あれ?なんか急に頭痛が、やばい、試験範囲なんてどうでも良くなってきた。もうこれは駄目だ、死ぬかもしれない。おおぉぉぉぉ、このまま海に行かずに死ぬなんて、俺はなんて不幸なやつなんだ。」

頭を両手で抱えてそう言いながらもこちらをチラチラ見てくる。


「分かった。分かったよ。」

そういうと望はニヤリとして

「おぉ、さすが馨くん、感謝するよ。」

そう言って望は試験範囲が書かれた紙を俺に手渡した。

「ありがとう」

俺は若干イラつきつつその紙を受け取った。

「親友の頼みだ。はじめからそう言うと思ってメモって置いたよ。まぁお前が悪ノリを途中で投げ出さずについて来たのは予想外だったけどな。」

「お前・・・・・・、」

「まぁ約束は約束だからな、夏休みの事、考えといてくれよ。」

 望はそう言って目の前にあるカレーに集中しだした


 午後の授業も適当に交わしつつ一日が終わる。試験範囲も手に入れたので奴の言うミスター平均点を取るべく試験勉強をしないとな。放課後は部活にも入っていないので特にやる事も無い。さっさと帰って勉強しよう。

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