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対峙 ①

 気づくと朝になって目覚ましが鳴っていた。

目覚ましを止めて起き上がる。

頭は妙に冴えていた。


学校は今日と明日の二日間しかない。

その間に決着をつける必要があった。


「おはようございます、馨さん」

「おはよう、ハル」

「頼みがあるのだけどいいかな?」

「わかりました、何でしょうか?」

「学校の生徒会にタケシと名前のつく人物はいるかな?」

タチバナ タケシという三年生がいます。」

「そうか、ありがとう。」


「ちなみにそいつの行動履歴とか探れないかな?」

「随分と物騒な事をいいますね。検索できるだけします。少々お待ちください。」



「出ました。」

「どうなんだ?」

「SNSとブログに名前が出ています。地域・年齢からして同一人物でしょう」

「検索結果を携帯に入れておきました。電車の中で見てください。」

「ありがとう。助かるよ」


 俺は朝食もほどほどに学校へ出かけた。

 電車の中でハルが纏めてくれた資料をみる。

 どうやら学校では優等生を気取っているようだが、あまり評判は良くなさそうだ。「無理やり連れて行かれそうになった」とか「街で一年生相手に大勢で囲っていた」など、何故こんな奴が学校で堂々としているのだろう?


 俺は資料を見ながら昨日見た光景が嘘ではないと確信に変わって言った。

 桃香と橘の光景を確認したとして、どうやって橘を退けるかそこまで考えは回っていなかった。ただ、簡単に検索しただけでこれだけボロボロと出る奴だ。何かしらの弱点はすぐに見つりそうな気がした。


 学校について望がやってきたが、望には話さないでおいた。

 なによりまだ推測の域を出なかったし、もし柚子ちゃんも絡んでいるとしったら望は飛び出してしまいそうな気がした。


 放課後を待って俺は桃香のいる校舎へと足を運んだ。

 何人か下校時間に学校に向かって歩く俺を不思議そうな顔をしてみていたが、全く気にならなかった。学校にいる間にSNSに橘の書き込みをしていた人をハルに割り出してもらっていた。そしてメールを送って、具体的にどこで見たのか聞いていた。



 まぁ、まずは橘と桃香の姿を探さないといけない。



 俺は昨日二人をみた生徒会室へと移動する。

 生徒会室はまだ数人の人が仕事をしていた。

 その中に橘も桃香も含まれていた。

 俺は彼らが出て行くのを待つ事にした。

 時間が過ぎてゆく、俺は階段に腰掛けて目を閉じた。

 そしてエフにアクセスしようとする。

 俺はエフにアクセスして彼らの動向を探ろうとした。


 眼を閉じて部屋を思い浮かべる。すると何故か学校の生徒会室か出てきた。

「お前が見たかったのはこの風景だろう?」

 横を見るとエフの住人が立っていた。


「悪いな」

「毎回、部屋からアクセスしていたんじゃ遠いんだよ」

「さっさと行きなよ」

 俺は生徒会室のドアを開けて中に入る。


 彼らは黙々と作業をしていた。

 なんだか真面目な奴らなんだなと思っていたが、どうやらそういう訳ではないようだ。

 生徒会は橘によって仕切られていた。

 表向きは優秀な生徒がみんなに指示を出して進めている、という風にしていたのかもしれないが、エフを通してみると橘が他の人に仕事を押し付けているようにしか見えなかった。


 ますます俺は橘が許せなくなっていった。


 俺は橘の中を覗こうと思い、目を閉じてエフの世界を広げてみようとした。

 するとエフの住人である俺がまた出てきた。


「いいのか?あれだけ他人の中を覗く事を拒んでいたのに。」

「俺は俺自身のためだけでなく、桃香のために罪を受け入れる。」


 罪という言葉は自然に出てきた。

他人の考えを無理やり引き出す行為を罪だと感じたのだろうか、ただそれを受けいれてでも桃香が汚されていくのが許せなかった。


「あいつは相当な悪い感情が渦巻いている。お前みたいなピュアな奴がいけばたちまち毒されてしまうだろう」

「そんな事はない。自分の心はここにある。あいつの毒に当たった所で、桃香の苦しみに比べればたいした事はない」


 頭の中は桃香でいっぱいになっていた。

 もし本当に俺のために桃香が我慢しているのなら、そう思うと胸がいっぱいで締め付けられそうだった。


「エフの中で悪い心にあたればお前の精神にも影響が出るだろう、」

「覚悟はいいのか?」


「大丈夫だ」


「本当に問題ないんだな」


「大丈夫だ」


 俺は自分と何度も確認しあった。

 覚悟を決めて眼を閉じる。

 集中してイメージする。


次に眼を開けると体が宙に浮き、エフの無限の暗闇が広がる世界へ俺は立っていた。

直感で行き先はわかった。というより彼が教えてくれていたのだろう

まっすぐ前を向いて橘の中へ進んでいった。


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