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「そう。ありがとう、シア」

 華やかな笑顔で笑いかけるアステリア様。その笑顔を見てシアもうれしくなる。

 皇太子の花嫁候補の身代わりなんて無茶なことを引き受けたかいがある。アステリア様も体調が許すならば自分で舞踏会に出るはずだった。しかし下がらない熱に断念してシアに頼んだ。アステリア様にどうしてもと願われればシアは嫌とは言えなかった。

 近くで見れば二人はそれほど似ていない。身長や顔の造形はともかく雰囲気が全く違う。大人びた微笑みで年齢よりも上に見られるアステリア様と、あどけない表情が幼く見えるシア。実際の年齢差は一つなのに三つか四つは離れて見えた。

 舞踏会では素顔が出ないようずっと気を張っていたので、誰にも気づかれた様子はない。

「でも城内で迷うなんて、器用ねえ」

 城に行ったことのあるアステリア様はおかしそうに笑っている。シアが抗議をするとさらに声をあげて笑った。

「うう…。 そんなに笑わないでください。 本当に帰ってこれなくなってしまうかと思ったんですから」

 あの騎士の人が案内をしてくれなかったらどうなっていたかわからない。

「そんなに心配しなくても城内には他にも働いている人がたくさんいるんだから、歩きまわってたら誰かに会えたわよ」

「そうかもしれませんけど…。 そこの廊下には誰もいなかったし、あの人が声をかけてくれなかったら、まだ迷っていたかも…」

「ふふ、でも本当にありがとうね、シア」

「いいえ、お姉様の役に立てたのなら、私もうれしいですから」

「あ、そうそう。 その騎士の人の名前は聞いた?」

「え? そういえば…、聞いてません」

「そう。 それじゃあお礼のしようがないわね」

 特徴を聞くアステリア様に昨日の恩人の姿を頭に思い描く。

「真っ黒い制服を着ていましたね。 装飾もあまりなくって、刺繍とかも黒っぽくて。 それから髪や目も黒かったですね」

「特徴的なのかそうでないのかわからないわね。 黒いだけ?」

「優しい人でしたよ」

「それはわかるけれど、それだけじゃ探しようもないわね…」

 もう一度思い出してみる。闇から出てきた姿、前を歩く姿、馬車に乗り込むときの笑顔…。

「…シア、顔が赤いわよ」

 指摘されてさらに顔が熱くなる。

「え? え、そうですか?」

 手のひらで頬を押さえて冷してみる。冷めるどころか手のほうが熱をもってきた。

 アステリア様はそんなシアを不思議そうに見ていたが、ドアを叩く音に視線を移した。

 入ってきた執事から、シアに来客が伝えられる。

「お客? シアに?」

 アステリア様がこちらを見るがシアに心当たりは無い。

「どんな方?」

「それが、王宮からの使いだとしか言いませんので…」

 執事の答えにアステリア様が眉を寄せる。それを見てシアの心にも不安がよぎる。

「もしかして、昨日の『替え玉』がバレちゃったんでしょうか?」

「それはないと思うけど…。 だって、特に失敗したわけでもないでしょう?」

「でも、もしかしたら会場の誰かが気づいたのかも…」

「だとしたら、なおさらシアを会わせるのは気がすすまないわね」

「わたし、確かめてきます!」

「シア?」

「だって、もし気づいていて確かめに来たのなら出ていかないと余計に怪しいですよ」

「だからって…」

 言い合っていると執事から建設的な意見が出てきた。

「まずはお姿を見てから判断してはいかがですか?」


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