月に願いを
「お月見企画」参加作品
新月/
さらりと敷かれた夜だから
関係性を名付けぬまま
暴かないでと
目隠しする
まだ見ぬ輝きを
秘めた空
手のひらで
包めば広がる
わたしの闇が
どうか
瞬きの度 深まりますよう
上弦の月/
暗がりに
あなたの猫背に沿うように
巻きつけるからだ
ふたり
ひとつのハートになるよりも
ふたり
同じかたちの
ハートの片割れになりましょう
満月/
吐息の重なりかたも
繋いだ手の温かさも
交わす眼差しにこめられた熱も
みんな
みんな
完璧な仕上がりで
私たちは
あまりにも無防備な白さのまま
あの闇に浮かんでいたのです
下限の月/
愛の言葉だけが
摩耗されていく夜
思い出ばかりが
輝きだすから
わたしは
気付かぬふりをする
あなたのあたたかな皮膚の下
手を這わせた
強張る
背骨
に
そして新月/
さらりと敷かれた夜だから
関係性を問わぬまま
今一度だけと
目隠しする
まだ見ぬ輝きを
秘めた空
手のひらを
外せば広がる
あなたの闇が
どうか
瞬きの度 解き放たれますよう