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小田からの贈り物

そして、またひとつ。

作者: 小田虹里
掲載日:2015/09/01

 僕は、長く生きるつもりはなかった。


 流れゆく雲のように、運命を風に委ね。


 そして、ちぎれ逝くのだと思っていた。




 ずっと。




 僕は病弱だった。


 こころも、からだも。


 弱っていた。




 ふとした事に怯え、ふとしたことで病を発する。




 青空は、僕には眩しすぎて。


 夜空の月明かりの方が、生きていく上でちょうどよかった。




 僕は、もうすぐ死ぬのだろう。




 そう、思っていた矢先のこと。




 母が、死んだ。




 元気だった、母が死んだ。


 僕より後に病んだ、母が先に逝ってしまった。




 どうして?


 どうして、僕を連れて行かなかったの?




 この世に「死神」なるものがいるならば、間違っている。


 連れて行かれるものは、「僕」の方だ。




 どうして、「生きたい」という母を連れて行く?


 どうして、「逝きたい」僕を連れて行かない?




 あぁ、これはきっと「罰」なんだ。




 前世で犯した「罰」を、僕は受けているに違いない。


 今日また、僕はひとつ年を重ねる。




 複雑だ。




 生まれ落ちた喜びを知るには、まだ早い。


 ただ、母の最期のひと呼吸が忘れられない。




 「今まで、ありがとう」




 そんな声が聞こえてくる。




 「あのね、じいちゃんが迎えに来てくれたの」


 後に見た、母との夢。


 母が大好きだった、母の父。


 僕の祖父にあたるひとが、母を迎えに来ていたらしい。




 確かに、母が死んでしまう前夜。


 母の病室には、多くの白いモヤが飛び交っていた。


 「死」が近いのは見えていた。


 迎えが来ていることは、わかっていた。




 「ママ、じいちゃんと一緒なんだね」




 今、僕はお墓の前にいる。


 母の墓前。


 そこには、今は母だけが眠っている。




 「僕はまだ、逝けないらしい」




 背を向けて、歩き出す。




 生まれ落ちた喜びは分からない。


 ただ、母を愛している。


 父を愛している。




 それはこれからも、変わらないこと。


 ずっと、変わらないと誓えること。




 年を取るということは、生きているからこそ出来ること。


 生きている「証」。




 辛いことは、たくさんある。


 目を背けたいことだらけだ。




 それでも……僕はまだ、生きている。




 だから、この人生に終止符が打たれるまでは、生き抜かなければ。


 そうしなければ、迎えには来てもらえないから。




 最期のひと呼吸を……この世にさよなら告げるそのときまで。




 約束する。




 僕は、生きる……と。



 こんにちは、はじめまして。


 小田虹里です。




 これは、ほぼ実話です。


 そして今日は、何度目かの小田の誕生日であります。




 夢で母のことを見たのも事実。


 母が亡くなった翌日に見た夢は、母は「ごめんね、ごめんね」と、謝っていました。


 子どもを残して死にゆくのは、宿命かもしれません。


 ですが、母はまだ若く、母の母(私の祖母)は健在です。




 「親」よりも先に、逝ってしまいました。




 今年は、母の手作りケーキが食べられないのか……。


 今年は、母からのプレゼントもないのか……。


 今年は、誕生日会もないのか……。




 気は滅入り、最近はよく泣いていました。




 それを知ってか知らずか、珍しく。


 一体、何年ぶりでしょう。


 父が、誕生日プレゼントを買ってくれました。


 「虹里ちゃんの、ケーキも買わなきゃね」


 とも、言ってくれました。




 だから、救われたのだと思います。




 まだ、私には「父」という救いがある。




 「父」まで亡くしたら、絶望しかない……。


 でも、そんなことを考えていたら、本当に自分も最期のひと呼吸に導かれそう。




 そんな思いを胸に、「詩」という形で残させていただきました。


 どうか来年も、無事に息をしていますように。




 ここまで読んでくださり、ありがとうございました。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 親を失う事は過去を失う事、兄弟友人を失う事は現在を失う事、子供を失う事は未来を失う事。 そんな言葉がありました。 そんな喪失感を経験しながら、今を生きてるが故か、心に響くものがありました。…
2015/09/02 14:49 退会済み
管理
[良い点] 泣けた。 [一言] …どこがどうとか、 細かい事は書けないけど なんか、しんみりした。 言葉が優しかった。
[良い点] 哀しいけれど、救われた気もしました。 ちゃんとお母さんは迎えに来てくれる人がいるのですから。 忘れず心に留める者がいるのですから。 実は私の父は交通事故で不意に逝きました。集中治療室で長…
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