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桃の実

前回に続き、桃ちゃん目線でお送りします!

 あいつ、何者?今まで、戦ってきたザコどもとは明らかに気迫が違う。大峰は千切られた網の残骸を投げ捨て、あの大型フォークを構える。

 観客がざわつく。そこかしこから私が負けるのではないかと、噂話が聞こえる。

 五月蠅いな。私が負けるはずない。今までだって負けたことなんかない。

 すぐさま連射式の銃を構え、放つ。大峰は、まさかで真っ直ぐこちらへ向かってくる。そんなの自殺行為だ。と思いつつ、大峰めがけて連射する。しかし大峰は降り注ぐ銃弾をフォークの柄で全て受け、私にたどり着いた。右手に持っていた連射式の銃を刃の部分で引っ掛けられる。


 横に避けた私は、がら空きだった大峰の左肩に槍をぶち込んだ。痛みに顔を歪めた大峰は血が出た肩を押さえている。

 どうだ。槍型は風に煽られるから狙いを定めるのが難しいんだ。なんて脳内で自慢してみる。

 客席から歓声が上がり審判が笛を吹こうとした瞬間何が、起きたのだろうか?


 靴が大型フォークで靴が縫いとめられ、両腕を踏まれ、身動きが取れない状態で、首筋に小さなナイフを突き付けられていた。

 審判は笛を吹く事も忘れ、客席からは何も聞こえない。ただ聞こえたのはあいつが耳元で囁いた言葉だった。

「残念でした。」


--------------------------------------------------


 その夜は眠れないでいた。正確に言うと、負けた事を考えると脳が「何故?」という言葉で埋め尽くされ、思考が止まらなくなってしまったのだ。

 不思議な事に、顎が痛まなかった。怪我を負わずに敗北って、どれだけ手加減をされていたのだろう。大峰は実力の半分も使わずに私を倒したのではないだろうか。

 ベッドに大の字になり、ベッド脇の小さな淡い明かりだけを付けていた。

「ごめん、柚。敵討ち出来なかったや。」

 そっと声に出してみた。


「桃、起きてる?」

「はうぇ!?う、うん。起きてるよ!?」

 あまりにタイムリーな声の主にものすごく気味の悪い声を出してしまう。さっきの声を聞かれてはいないだろうか?

 柚はズカズカと私の部屋に侵入し、ベッドの端に膝を抱え込むようにして座った。仮にも女の子の部屋なのに、恥じらいというものが無いのか?

 先程の考え事の所為で、もし泣いていたとしたら見られたくないので、うつ伏せになる。

「僕の考えてる事わかる?」

「……残念だったね。次は大丈夫?」

 いくら双子でもわかる事とわからない事があるので、今言ってほしい言葉を並べてみた。

「違う。僕は大峰と友達になろうって思ってる」

「なっ!!」

 あまりに意外な言葉に思わず、顔を向けてしまった。

「僕もちゃんと勉強してきたし、これからもするつもりだ。でも、どうやっても大峰に勝てないってなった時。あいつは敵じゃなくて味方にいてくれた方が良いに決まってる。自分が負けたからって、無闇に敵意を向けるより、もっと将来的にいい方法があるはず。桃だってこれからも富豪の娘だって言うつもりなら、賢い判断をしなよ。」

 もっともな事を言われ、返す言葉を無くしてしまう。でも脳よりも先に言葉が形になって口から飛び出した。

「柚は冷静なんだな。私もそんな事はわかってる。でも自分の力が信じられなくなった今に混乱しているんだ。……明日大峰に話しかけてみようか。」

 私の言葉に、柚は少し表情を和らげた。

 それから私たち仲良くなったんだ。

ただの番外編のはずが、少し長引いてしまいました。

あと少しだけお付き合い願います。

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