彼の正体2
こんなに伸ばすつもりはなかったんですけどね。
まだあんまり悠雷のキャラは確定してないです。ちょいちょいブレています。
静かな部屋には時計と食器同士があたる音しかなくて、外の雨の音さえ響いている。
悠雷の部屋はキレイと言うよりも極端にものが少ないというべきだろう。
…本当に来ても良かったのだろうか?
勢いで、悠雷の家に来てしまったのだ。雨が降って来たからといっても私の家もここから近い。すぐに帰れるのだが、この機会を逃す事はない。
「お茶入れるから、待ってて。」と言われ待っているが。すごく気まずい。…いや、いきなり押しかけてしまった事もあるけど、この重苦しさを作っているのは何より悠雷の言葉だった。“実験番号1945”と確かに言ったのだ。どんな過去があるのだろう。
何故か考えてはいけない事のような気がして思考を止めてしまう。
―――何だろうこの気持ち―――
「はい。」
目の前に置かれたコーヒーカップには湯気の立つ、ココアが淹れてある。何を隠そう私はココアが大好きだ。
「ごめん。傘を貸した方がいいかもしれないけど機会だし連れて来た。やっぱり早めに話し合いたいからさ。」
ココアを飲もうとして出した手を止めた。
真面目な話だ。あまり知られたくない事も含まれているだろう。
「じゃあ。俺から話すよ。」
今時計がちょうど7時半を指したところだ。
「俺さ、とある国軍施設で生まれたんだよね。場所も知らないんだけど。そこで俺は…」
悠雷が言葉を詰まらせる。
「人を殺すために人に造られたんだよ。」
「えっ」
あまりに突飛な話に驚きを隠せない。
「簡単に言うと、オオカミとのハーフみたいなもので。オレみたいなのを半獣化型人間っていうんだ。それには、条件があって、
1、獣の姿と、人間の姿を持っている事。
2、常人の5倍以上の戦闘力を持っている事。
3、嗅覚、視覚、聴覚が異常に優れている事。
4、…」
悠雷はおもむろに、近くにあったカッターの刃を出し、自らの手首を切った。
「4、死ねない事。」
手首の傷は血が出るどころか、見る見るうちに傷口が閉じて再生している。
「あ、でも不死身じゃないよ?銅が苦手で、それを付けてるときは変化できないし、一つだけ殺す方法があるんだ。」
悠雷が一口、ココアを飲んだ。それにつられて私も口にココアを含む。
「それが、ワールドエンドブレイド。一騎当千の力を持ち、半獣化型人間と互角に戦える最強の剣だ。」