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ちょっとしたツテ

トモの視点です。

「もう、信じられません」


思い出すたび腹の奥からふつふつと怒りがわきあがってくる。


「なにがどうやったらああなるんですか!」

「いやあ、その」


大股でがしがし歩くぼくの後を、透さんがついてくる。コンパスの長さで負けているので、これだけ足を動かしていても振り切れないのが悔しい。


「ぼくたち、本気で心配してたんですよ?それを……」

「俺も、本気でピンチだったよ?」

「知らない人といちゃついてたじゃないですか!」


か!のところで足元に転がっていた小石を蹴っ飛ばす。勢い余って後ろにこけそうになり、ひやっとする。


「そういうわけでもないんだけどねえ」


ふう、と透さんがため息をつく。


「だいたいあいつ、誰なんですか」

「えっと……俺を助けてくれた人?なりゆきではあるけど」

「それは一応感謝すべきだけど……」


でもあいつはなんだか信用ならない。初対面のぼくのことをいきなり睨んできたし。絶対いいやつだとは思えない。ピンチのときに助けてもらったから透さんにはかっこよく見えてるのかもしれないけど、そういうのは吊り橋効果っていうんだからね。平常時に見たら絶対がっかりするんだから。


……まあ、容姿についてぼくがどうこう言えた義理はないんだけど。


頭の中にあいつのふてぶてしい顔と、顔を赤くした透さんの姿が思い浮かぶ。別にぼくは女性になったからって透さんのことがそういう意味で好きなわけじゃないし、だからやきもちじゃないけど。


透さんは真帆ちゃんのお兄さんで、ぼくたちの透さんなのに。ああいう女の人みたいな顔されると、なんだか透さんが別人になってしまったように感じるんだ。ぼくたちはこの世界でたった3人ぽっちの仲間なのに。助け合って元の世界に戻らなきゃいけないのに。




安宿の廊下をドタドタと歩き、壊さんばかりの勢いで扉を開ける。


「ただいま!」

「早かったね……ってなんで怒ってるわけ?」


部屋に最初に入ったぼくを真帆ちゃんが不思議そうに見て…………



続いて入ってきた透さんに目を丸くして、不自由な足でよろめきながら「お兄ちゃん!」と飛びついた。


「ただいま、真帆」


鼻をぐずぐずいわせながら透さんの胸に顔をうずめる真帆ちゃんの頭を撫でる表情はとても優しくて。ぼくの知ってる透さんだと思ったら、なんだか怒りも冷めていった。




さて、なんとか合流したぼくたちが次にすることはひとつ。真帆ちゃんの脚を治すため、街で治癒術師を探すことだ。


これについては全くあてがなかったが、真帆ちゃんから一つ申し出があった。


「出発する日に、ロッタが渡してくれたの」


それはベルダさんからの手紙だった。手紙は2通あり、ぼくが読んでみると(このメンバーの中で字が読めるのはまだぼくだけ…)1通は誰かに助力を願うような内容、もう1通は僕たちにあてたものだった。


「メガネがなくても文字が読めるの?」

「こっちにきてだいぶ視力が戻ったからね」


こっちの世界に来る際にはぼくたちの衣服は全部没収されてて、眼鏡ももちろんなくなってて。全然見えないわけじゃないけど遠方や小さいものを見るときは不便だったんだよね。でも不思議と村に住むうちに視力が回復してきて、今はちゃんと見えるようになった。レベルが上がったおかげか、村で緑ばかり見てたからか、それともババさまの目がよくなる薬(めちゃくちゃ苦い)が効いたのかはよくわからないけど。視力の悪い人間にとってそれがすっきり治るってのは感動的。


さて、手紙の内容によれば、ベルダさんは嫁ぐ前は街に住んでいたことがあるらしい。遠縁の人が街に住んでおり、今はあまり交流がないが、力になってくれるかもしれないとのことだった。


「どんな人なの?」

「昔は行商人として町と村を行き来していて、今は街で店を構えてるはずだって」

「なるほど……」


でも、田舎町とはいえ、街は街だ。名前が分かってたとしたって、この大勢の人の中ではそうそう見つけられないだろう……と思ってたんだけど。


「それなら知ってるよ」


意外や意外、僕たちの泊まった宿の主人が知っていた。


「直接顔は知らないけどね。貧しい行商人から出発して、頑張って店を大きくしたのさ。今は羽振りもよくて、大きな店と屋敷をかまえてる。俺もああなりたいもんさ」


宿屋のおじさんは顎のちょび髭を撫でながらうなずく。


おじさんから聞いた店とお屋敷の場所をメモして、ぼくたちは出かけることにした。

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