ネズミの置き土産
ちょっと書くのが遅れ気味です。もう少し頑張りたい。
黄色い電気ネズミを倒した俺たちだが、内緒で危ないことをしたのがバートさんにばれて、後でこっぴどく怒られた。でも、畑や家畜を狙うモンスターを退治したということで一応感謝もしてもらえた。ババさまは喜んでくれたようだし、まあまあよかったんじゃないかな。
しかし、あいつを倒したらひょっとしたら帰れるんじゃないかっていう淡い期待は見事に裏切られ、あの後元の世界に戻れるようなイベントは一切起きなかった。真帆は気落ちしていたようだが、仕方ない。まだこの先そういう展開がないとは限らないので、絶望せずに待つしかないだろう。
ところであのネズミ野郎に脚を噛まれた真帆だが、傷は深かったものの手当が早かったおかげか、出血はさほどでもなかった。傷自体は体には残ってしまうものの、肉が食いちぎられてはいなかったのである程度きれいに治るだろうということだった。
ひとまず一件落着……と言いたいところだが、ここでひとつバッドイベントが起きてしまった。
真帆の傷は治療によってある程度治癒したのだが、噛まれたあたりから紫色に変色し、脚が腫れてしまったのだ。ババさまに見てもらったところによると、これは放っておけば脚が腐って切り落とすしかなくなるという。ババさまの薬でも進行を遅らせることはできるそうだが完全に治すまでは無理だそうで、いずれは脚全体に紫色が広がってしまうのだと。脚そのものは既にさほどの痛みはないそうだが、どうも脚の神経が麻痺しているようで、真帆はゆっくりとしか歩けなくなっている。これが徐々にひどくなり、脚が完全に動かなくなったらもう終わりだというが………
「ババさま、なんとかならないんですか?」
「とはいえ……ここで作れる薬では限界がある」
そう言わず何とかしてくれと詰め寄ったところ、ババさまが薬についての話をしてくれた。ババさまの作る薬は、傷をいやすのを早めたり、栄養を与えて体力を高めたりするものはある。だが、治せないものもあるという。
「これは動物の持つ病魔だからね。悔しいが、わしの薬では勝てん。病魔も、弱いものであれば自力で克服できることもあるんだが……」
俺は医学には詳しくないが何とか理解したところでは、要するにこれはチャックが持っていた病原体に感染したもので、抗生物質のような薬がないのでなんともならないと言ってるらしい。ちくしょう、この世界は医学が遅れてるのか。現代医学をもってすれば例えペストだって治る確率が高いっていうのに。
そうだ、この世界はファンタジーだろ?なら、傷や病気が一発で治るものすごいアイテムとかあっていいんじゃないのか?そう考えた時、「治癒術師でもいれば……」とババさまがつぶやいた。
「治癒術師?そいつなら治せるのか?じゃあすぐ呼んでくれ」
「無理だね」
「なんでだ!お金なら……あんまりないけど、働いてなんとか用意するから」
「この村にはおらんのさ」
ババさまの話では、治癒術師というのはその名の通り、治癒の魔法のような力を使える者であるらしい。さすがファンタジー、魔法なんてものがあるんだな。特に修行や信仰心といったようなものが必要になるわけでなく、完全に生まれつきの能力だという。そして、そういった能力者は生まれる確率そのものが低く、体もやや弱い者が多いため、実際はめったに会えることがない。少なくとも、人口の少ないこの村には該当する者はいないのだそうだ。
「じゃあ、どこにならいるんだ?!」
「確証はないが、ひょっとしたら近くの街なら人が多いから、おるかもしれんが」
「近くの街まで行くのにどれぐらいかかる?」
「順調なら3日、遅くても5日あれば着くだろう。わしの薬があれば、マホの脚は10日は大丈夫だよ。その後は確証が持てんが……」
そういうことなら、発つのは少しでも早いほうがいい。俺たちは必要最小限の荷物をまとめ、世話になった村の人たちに挨拶をしてから、翌朝には村を発つことに決めた。
俺たちが街に行くと話したところ、バートさんは村の化け物を退治してくれたお礼として銀貨を何枚かと、馬と牛の中間のような家畜を1頭くれた。
「今のマホの脚では歩くのは難しいだろう。乗って行って、街に着いてお金が足りないようなら売って治療の足しにするといい」
「ありがとうございます」
バートさんには何から何までお世話になりっぱなしだ。いつかできるようになったら、お礼をしたい。
「ロッタは本当は、3人姉妹でね」
バートさんが少し目を細めて、窓の外を眺めながら言う。
「その頃はうちはにぎやかだったが、5年前の流行病で上の2人は死んでしまったんだ。ババさまは力を尽くしてくれたが、村でも多くの人が死んだ。うちはロッタが助かっただけでも幸運だったよ」
バートさんが自分の子供にするように俺の頭をなでる。
「君たちが来てくれて、またうちはにぎやかになった。気落ちしていたベルダも明るくなった。わたしたちは、君たちのことを自分の子供のように思っているよ」
「バートさん……」
「わたしたちがしてやれることは少ないが、マホが無事に元気になることを願っている。何か困ったことがあったら、いつでも頼ってきなさい」
村の外は危ないから気をつけるんだよ、そう言ってバートさんは最後に護身用の短剣をくれた。
翌朝、俺たちは牛馬(と呼ぶことにした)に真帆を乗せ、お金と携帯食糧を入れた袋をくくりつけた。ババさまが徹夜で作ったと言って、トモくんが20日分ぐらいのマホの薬をもらってきたので、それも袋に入れた。旅立つ直前に、村の出口の当たりでロッタが転びながら走って追いかけてきて、涙と鼻水だらけの顔でマホにすがりついた。何か一生懸命叫んでいたが、涙声で何を言っているのかはよくわからなかった。
そうして、俺たちは村を出て西に向かうことにした。治癒術師を求めて、「川のある町」へ。




