表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/22

第十六話 恋の日記

一旦、日記を閉じて、息を吐く。

とりあえず、彼女が、自分の心に気が付いた日までの日記を読んだ。

それから、しばらくして、彼女は、僕に告白をした。

緊張で顔を真っ赤にして、いろんなところは、ぷるぷると振るえていた。

まぁ、そこらへんが、すっごく可愛かったし、触れても、違和感もなければ、ストレスも感じなかったし、彼女が僕に対して思ってくれていたように、彼女といた空間はとっても楽しくておもしろくて、暖かかった。

だから、当然、答えはイエスだった。

むしろ、僕自身が、いつ告白しようか迷ってたぐらいだし。

ただ、相手が相手。

すっごい美少女で、今までたくさんのイケメン達を振ってきた彼女だ、オーケーしてくれるとは思えない。

どうしても、尻込みをしてしまった。

なんて言っても、単に、僕がやっぱりチキンなだけだったんだけど。

いつもいつも受身だった。

自分の病気を理由にして。

触れられないから。

だから、進んで、触れ合おうとはしなかった。

奏穂ともそう。

鈴穂さんに頼まれたから、だから、僕は一緒にいた。

彼女からのお願いがなければ、僕はきっと、彼女と付き合うことも、出会う事もなかった。

だからこそ、彼女は深く傷ついているんだ。

自分が引き起こしてしまったと、後悔しているんだ。

軽く伸びをして、部屋を出る。

身体がちょっと冷えてきた。

適当に暖かいコーヒーでも飲もう。

どうせ、日記は今日の内に読んでしまうつもりなんだから、長丁場になるだろう。

それなら、コーヒーでも飲んで、頭をすっきりさせて置いたほうがいい。

キッチンに入ると、うんと濃いめのホットを淹れる。

「ふうふう」

淹れると、部屋に戻りつつ、それを冷ます。

それほど、猫舌ってわけでもないけど、さすがに淹れたては熱い。

熱いのを飲んだほうが、一気に目は醒めるだろうが、さすがに火傷はしたくない。

次の日のご飯が大変だし。

「あつつっ」

部屋に戻り、もうそろそろ大丈夫かと思って一口含んでみたが、どうやら、まだらしい。

仕方ない。

日記を読みつつ、冷めるのを待つしかないだろう。


8月3日

今日、ユーキに告白した。

自分でも、びっくりするぐらい、どきどきして、緊張して、どもったし、途中で何を言ってるのかわからなくなったし、最終的には、ほとんど逆切れに近いようないい方をしてしまった。

過去の自分に会えるなら、今すぐにでも絞め殺してやりたいぐらい。

でも、まあ、私としては、あまりにも情けない失態だけど、それでも、まぁ、結果はオッケーだったんだから、良しとしないといけないんだろうけど。

うん、ユーキと付き合う。

私が、ユーキの彼女で、ユーキが、私の彼氏。

……いやぁぁぁあああ!!

なんか、恥ずかしい。

そんな事を書いてる自分が恥ずかしい。

かなり赤面物。

というか、意外と私も女の子してるんだと、思う。

枯れてる気なんて、さらさらないけど、こんな事で、いちいち赤面するとは思ってなかった。

うーん、意外と恋って言うものは奥深い物なのかもしれない。

なんて、何語ってるんだろう、わたし。

まあ、今日は早く寝よう。

とりあえず、明日も、ユーキは会いに来る。

なのに、寝不足でぼろぼろの顔を見せられない。

百年の恋も冷めるってもんだ。

というわけで、寝よう、おやすみ。


8月4日

……来なかった。

来るといったのに、来なかった。

こっちは、結局、興奮と緊張で眠れず、すっごくどきどきしたというのに、来なかった。

とりあえず、姉さんに聞いてみたけど、また、適当にはぐらかされた。

たぶん、姉さんは理由を知ってる。

だけど、教えてくれない。

なんか、それがすっごくむかついた。

恋人は私なのに。

なのに、恋人のはずの私よりも姉さんの方が、ユーキの事を知ってる。

それが、すっごくむかつく。

やっぱり、ユーキの事は何でも知っておきたい。

で、ユーキの事を一番に分かっているのは、私でいたい。

とりあえず、明日、来たら、盛大に文句言ってやろう。


8月5日

ユーキが来た。

来るまでは、延々と文句を言ってやろうと思ったけど、ユーキの顔を見た瞬間、それが吹っ飛んだ。

それに、しっかりと謝ってくれたし、だから、許してあげた。

とりあえず、それが女の度量ってもの。

私は器が大きいからね。

でも、器の大きい私でも、ちょっと腹立つことがあった。

姉さんだ。

恋人である私を目の前にして、何をとち狂ったのか、ユーキのほっぺにチューをしたのだ。

まだ、私もしたことないというのに、だ。

今思い出しても、むかつく。

とりあえず、それは、私の特権だ。

だから、注意と言うか、攻撃しまくったんだけど、効果はなし。

散々からかわれて、やりたい放題した後、姉さんは帰っていった。

だけど、私にしてみたら、そら、すっごくむかついた。

むかついたから、無視。

無視したけど、うん、やっぱり、無理。

いや、だって、やっぱり好きだし。

うん、せっかく一緒にいるんだから、楽しく過ごしたい。

結局、数分と持つ事なく、イチャつき始めた。

うわ、なんか、自分で書いてて、すっごい恥ずかしい。

でも、まあ、それ以上に恥ずかしい事があったけど。

うん、すっごく恥ずかしかった。

まぁ、ユーキもめっちゃ恥ずかしそうにしてたけど。

お互い初めてだから、仕方ないけど、それでも、ありえないぐらいの緊張振りだった。

うん、付き合って三日目。

ていうか、実質二日目なんだけど、キスしちゃった。

うわぁぁぁぁぁ、なんか、更に照れるんだけど。

なに、この恥ずかしさは。

自分でも気持ち悪いぐらいなんだけど。

でも、すっごく幸せ。

これが、恋。

うーん、すごいな。


8月12日

いきなり、退院許可がおりた。

正直、わけがわかんない。

体調は、確かに悪くはない。

だけど、逆に言えば、いつも通りと言えばいつも通りで、良くなっているとは思えない。

とはいえ、退院。

いったい、どれぐらいぶりだろうか。

正直覚えてない。

でも、ちょっと嬉しい。

今まで、ずっと病院の中だけだった。

そこだけでしか、会えなかった。

だから、せっかく退院したわけだし、ユーキとデートしてみよう。

時期的には夏休みだし、いろいろと遊びまわれるはず。

明日にでも会いに行って、予定でも立てようっと。


8月13日

とりあえず、予定が決まった。

王道どころは、海と遊園地。

後は、適当にぶらぶらしてみたり、お祭りがしばらくしたらあるみたいだから、それも観に行く。

なんだか、すっごく楽しみ。

最高の夏になりそう。

ホント、ユーキに会えて良かった。

姉さんに感謝感謝。

ユーキのいない生活ってもう考えられないし。

ホント、日に日にユーキの存在がどんどん大きくなっていく。

いつかは、ユーキが全てになってしまうのだろうか。

なんか良さそうっぽいけど、それはそれで、なんかダメそう。

うん、他も大事にしないといけないよね。

そこらへんは、ちょっと気を付けておこう。


8月17日。

海に行った。

行ったけど、ちょっと凹んだ。

良く良く考えてみたら、今の私の身体は海に行けたもんじゃない。

胸ないし、がりがりで細いし、病室から出る事なんてほとんどなかったから、肌は病的な白さだし、とりあえず、すっごい劣等感を感じた。

だから、選んだ水着もワンピース型の露出の少ない奴にした。

姉さんだったら、きっとバインバインのすっごい露出度の高いビキニを着るんだろうな。

女の色気全くなしの私の水着姿を見て、ユーキは褒めてくれたけど、やっぱり姉さんみたいなのが良かったんじゃないのだろうか?

そう思うとげんなり。

海行ってる間は楽しかったけど、思い返して見ると、どうしてもそんなふうに思えてしまう。

とはいえ、太ろうとしても、太れないのが現実。

そんなに食べれないし、自分なりに頑張っても、肉がつかない。

ダイエットを頑張ってる人達にしてみたら、羨ましいだろうけど、こっちはこっちで、胸がなくて、すっごく悩んでるんだ。

きっと、胸がある人には分からないんだ、この気持ちは。

特に、姉さんなんか。

腰とか腕とかは、めっちゃ細いくせに、胸はでかい。

メロンだし。

あまりにも、恵まれすぎだ。

というか、羨ましすぎ。

私にも、あれぐらいあったら、きっときわどいビキニ着て、ユーキを悩殺できたんだろうけどな。

まあ、仕方ない。

とりあえず、別の方法で、悩殺してやろう。


8月19日

今日は映画を観に行った。

とりあえず、カップルらしく恋愛映画を見たけど、正直つまらない。

なんていうか、あれ。

リアリティがなさ過ぎて、感情移入が出来ない。

そもそも、演技も下手すぎ。

とりあえず、配役は顔で選んだとしか思えないぐらい、美形ばかりがずらっと並んでる。

正直、金返せって感じ。

ユーキも同じらしく、しきりにダメだしばっかりしてた。

それが、逐一私と同じだから、ちょっと嬉しかった。

そういう意味では、この映画デートはありだったのかもしれない。


8月23日

祭りに行った。

昔、ちっちゃい頃に行った事はあるけど、正直覚えてない。

だから、初体験と同じ。

で、いろいろと見回ったけど、正直な感想、すっごくおもしろかった。

別に、何かしたわけじゃないし、露天の食べ物だって、そんなにおいしいわけでもない。

でも、すっごく楽しかった。

そして、最後の花火も良かった。

二人並んで座って見てたんだけど、すっごく感動。

病室に居たときも、たまに見てたけど、全然違う。

迫力とかもそうだし、肌に感じる空気も違う。

それに、隣にはユーキもいる。

すっごく楽しかった。

まあ、帰り際に、キスしてくれたのも、もちろん、それに入ってるけど。

ユーキとのキスは、まあ、何度かした。

したけど、あれ。

いつまで経っても、慣れない。

てか、すっごい恥ずかしい。

ありえないぐらい恥ずかしい。

でも、それは、きっとそれぐらい好きって事なんだと思う。

いつでも、私にとって、ユーキとのキスは新鮮で、幸せで、いつもどきどきしっぱなし。

それが溢れ出てきちゃうほど、好きってこと。

うん、私は、ユーキの事が好き。

大好き。


8月31日

とりあえず、夏休み最終日。

というわけで、朝から晩まで遊びまわった。

行き先は遊園地。

とりあえず、絶叫系は一回までと決められ、後、お化け屋敷も禁止された。

正直、ちょっと痛い。

絶叫系が一回だけなんて、つまんないし、何より、お化け屋敷がダメとか、ありえない。

せっかく、びっくりしたふりして、それこそ、半泣きの演技でもして、しがみつこうと思ってたのに。

やっぱり、こういう場所でのそういうのは、大事だと思う。

それに、うん、やっぱり、ユーキも喜んでくれるだろうし。

そりゃ、肉付き悪いし、胸もないけど、それでも、自分の彼女が抱き付いてくれるんだ、喜ばないわけがない。

もしかしたら、それで意識して、そのまま、とかだって十分ありえるし?

いや、さすがに、遊園地で、っていうのは、なしだけど、ユーキの家なら、オッケだし……

て、何考えてるんだろう。

もしかして、欲求不満?

てか、付きあって一ヶ月で、エッチってやっぱり早いんだろうか?

そういう経験もないし、話もしたことないから、わかんないけど。

てか、女の子だったら、普通は考えないのかな?

どうなんだろう。

まあ、でも、恥ずかしい事ではあるんだろうけど。

うん、まあ、超恥ずかしいよね。

……うわ、やばい、すっごい恥ずかしい。

ちょっと、想像しただけで、もうダメだ、失神しそう。

それぐらい、恥ずかしい。

ま、まあ、まだ、付き会って一ヶ月も経ってないし、早いよね。

うんうん、考えないでおこう。

それに、今は遊園地の話し。

一回だけだけど、絶叫乗った。

すっごい楽しかった。

まあ、ユーキは、しんどそうだったけど。

うーん、やっぱり、男子は絶叫系苦手だって聞いたけど、ホントだったんだ。

まあ、その後は、定番のコーヒーカップとかメリーゴーランドとかのときは、恥ずかしそうだったけど、割かしはしゃいでた。

うん、きっとユーキも楽しんでくれてたはず。

最後に、観覧車に乗った時は、すっごく満ち足りた顔してたし。

観覧車……

うわ、恥ずかしい事思い出したし。

うん、恥ずかしいよねぇ。

まさか、自分も同じ事するとは思わなかったわ。

いや、まあ、でも、恋人だしね?

いいじゃないかと、思うのよ、私は。

うん、昔の私だったら、もう大爆笑だったろうけど、今の私的にはありね。

ちょうど頂上に来た時に、キスっていうのは。

バカみたいだけど、すっごくどきどきしたし。

頂上だから、他には何も見えないし、見える景色は、全部独り占め。

なんだか、幸せ過ぎて、舞い上がっちゃうっていう感じなんだろう。

普通なら、恥ずかしいと思ってしまう事を、あっさりとやっちゃったし。

でも、うん、恥ずかしいけど、後悔はしてない。

いい思い出。

すっごく楽しかった。

また、行きたいな。

てか、今年の夏休みはホント楽しかった、海や祭り、遊園地。

すっごく楽しかった。

また、行きたい。

また、来年の夏も、今年の夏みたいであって欲しいな。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ