第8話 記憶なき少女
第8話 記憶なき少女
1
紅葉に似た少女を保護した俺は、彼女が目を覚ますまで城内の医務室のベットに寝かした。医者曰く、命に別状はないらしい。
一安心した俺は、自分の部屋に戻り、ベットに腰掛けて天井を眺めた。
(まさか紅葉がこの世界に居るなんて…)
人違いなのは分かっているが、やっぱり無視するわけにはいかない。俺の大切な家族だったからだ。でも彼女は…。
「姫、どうかされましたか?」
一人ボーッとしていると、いつの間にかカステラが部屋なた入ってきていた。
「何だカステラか…」
「もう名前に関してのツッコミはしませんよ? さっきから元気がありませんが、どうかしましたか?」
「いや別に…」
あの子の事は後で分かるだろうし、正直俺の過去をこいつに話す気分にもなれない。今は一人で考えさせてほしいぐらいだ。
「もしかして、医務室に運び込まれた女の子の事ですか?」
「ん? 知ってるのか?」
「姫が連れて来られたんですよね」
「そうだけど」
「姫の事なら何でも知ってますから私」
胸を張っていうカステラ。何か怖いぞ。
「まあそれなら、話が早いか。実はちょっと気になるんだよ」
「あの子をですか? もしかして最近流行りのロリ…」
「そうじゃねえよ!」
何でこいつその言葉を知ってんだ? 最近流行りのって、この国でも流行ってんのか?
「姫がそんな特別な性癖をお持ちだとは流石の私も知りませんでした。ビックリです」
「だから違うっての」
駄目だこいつ、何を言っても聞きやしない。
「あ、そうそう。その事で一つご報告が」
「報告?」
「その子先程目を覚ましたらしいですよ」
「それを早く言えよ」
2
俺は慌てて医務室へ向かい、先程の女の子に会いに行った。
「お姉ちゃん誰?」
「私? 私はねこの国のお姫様なの」
俺自身は認めてないけどな。
「わぁすごい」
「だから私はねこの国で一番偉いんだ」
「いいなぁ」
目を輝かせながらこちらを見てくる。結構可愛いなちくしょう。
「そういえばあなたの名前を教えてほしいんだけど」
「私の名前?」
「そう。名前を聞かなきゃ家に帰らせてあげられないでしょ?」
とりあえず少女の名前を尋ねてみる。身元さえ分かれば、家に帰らせられないだろうし。
「名前…分からない。私、何にも分からない」
「え?」
「お父さんもお母さんも、何にも分からない」
「それってもしかして」
この子記憶喪失なのか?
「お姉ちゃん教えて、私の名前。私は一体誰なの?」
「そんな事聞かれても」
「ねえ教えて!」
これは随分と厄介な話になってきたぞ。
色々確認するより先に、まずは彼女の記憶を紐解いて行く必要がありそうだ。
続く