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災厄指定アレン  作者: 大きい橋


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第四話 「王家の秤」

王家側です


王都。


白亜の城は、遠目には神殿のように見える。


だがその地下には、理よりも重いものが眠っている。


 


王城中央塔、第二会議室。


円卓を囲むのは四人。


 


第一王子にして王位継承者、

ルークレシア・アルヴェイン・グランディオス。


年は二十代半ば。

金髪を後ろに流し、青い瞳は氷のように澄んでいる。

整った顔立ちだが、笑わない。


 


宰相、

マルケウス・ディアード。


痩せた男だ。

指は長く、常に机を軽く叩いている。

計算を止めない癖。


 


魔導院長、

エルフェリア・ノクス。


黒衣の女性。

年齢不詳。

目は深い紫で、感情をほとんど見せない。


 


そして監察卿、

セラフィオン・レイ=アークライト。


地下牢で僕を見下ろした男だ。


 


円卓の中央には、水晶映像。


そこに映るのは、爆心地。


抉れた中庭。


残滓魔力の解析結果。


 


セラフィオンが淡々と告げる。


「六属性同時展開、融合痕を確認」


 


宰相が眉をひそめる。


「理論上あり得ない」


 


魔導院長が静かに返す。


「“現行理論”では、です」


 


第一王子が初めて口を開く。


「魔族は」


 


「生存。重傷。撤退を確認」


 


沈黙。


 


王子の指が、円卓を一度だけ叩く。


 


「魔族が回収に来た可能性は」


 


「高い」


とセラフィオン。


「少年は“歪みの核”と呼ばれました」


 


宰相が顔を上げる。


「核、だと?」


 


魔導院長の視線が細まる。


 


「古文書に記録があります。属性分断以前、“融合原理”を扱った王家直系が存在した」


 


空気が変わる。


 


王子が静かに問う。


「封印したのではなかったのか」


 


魔導院長は答えない。


代わりに言う。


 


「分断は安定を生みました。融合は、不確定を生む」


 


宰相が冷笑する。


「つまり、制御不能ということだ」


 


セラフィオンが首を振る。


「制御不能ではありません」


 


「未管理です」


 


その言葉に、王子の瞳がわずかに動く。


 


未管理。


 


王家にとって、それは最大の脅威だ。


 


「処刑は」


宰相が口にする。


 


「不可能です。もし、失敗し

融合原理が覚醒すれば、王家の理論基盤が揺らぎます」


即答したのは魔導院長。


「融合原理が覚醒すれば、王家の理論基盤が揺らぎます」


 


王子が続ける。


「魔族が“核”と呼ぶ以上、敵に渡す選択肢はない」


 


円卓の上に、別の資料が置かれる。


 


ヴァルディス伯爵家の家系図。


 


長子、アレン。


次男、エドワード。


 


宰相が呟く。


「弟は火属性特化。腕を失ったが、生存」


 


王子が静かに言う。


「利用価値はある」


 


セラフィオンが視線を落とす。


「少年は精神的に不安定。強い劣等感を抱いています」


 


魔導院長がわずかに笑う。


「それは都合が良い」


 


円卓に、婚姻契約書が置かれる。


 


王家と縁深い侯爵家の娘。


 


「血縁で縛る」


宰相が言う。

「逃げ道をなくす」


 


王子はしばらく沈黙し、やがて告げる。


 


「災厄指定は公表するな」


 


全員が顔を上げる。


 


「恐怖は制御できる範囲で使え」


 


「少年はまだ“核”ではない」


 


「覚醒するまでは」


 


静かに会議が終わる。


 


部屋を出た後、魔導院長がセラフィオンにだけ囁く。


 


「もし融合が完全に成功したら?」


 


セラフィオンは答える。


 


「そのときは」


 


 


「王家が、理を書き換えられる」


 


地上では、祝祭の鐘が鳴っている。


平和な王都。


 


その地下で、一人の少年が眠れずにいる。


 


彼はまだ知らない。


 


自分が処刑されなかった理由を。


 


守られたのではない。


 


 


秤に乗せられただけだ。


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