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ダンジョン時代と人見知り  作者: 酉名酉丁
新人冒険者ひっそりと爆誕

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8/8

ダンジョンで実験

AI補助利用のタグを付け忘れていたので付けました。

 昼寝して気付いたら夜ご飯の時間だった蒼は「流石にこのまま寝るのはちょっと」と思い、寝る前にAIさんに要約させたレポートを読んだ。

 読んだ結果、一晩明けてなんか転移が使えそうな気がしてきた。



 時刻は1時、お昼ご飯を食べてエネルギー満タン。なんなら眠くなってきたまである。


 ダンジョンで寝たら死ぬぞ!

 脳内のベテラン冒険者蒼が呼びかける。

 現実の新人冒険者蒼はすでにおねむなまなこ。


 曲がり角の先からゴブリンが現れる。

 ゴブ・即・斬。


 それなりにゴブリンを倒して身体能力が向上した蒼は、ナイフでゴブリンを一刀両断できるようになっていた。

 飛び散った血液が頭からかかるが、どうせすぐに消えるので気にしない。


 ……。血液の消失が遅々として進まない。


 稀代のラッキーガールである蒼は、ダンジョン最上層で二度目のアイテムドロップを引き当てた。


 目の前に転がっているのは、緑色のとんがり左耳五千円相当。

 前回のと合わせて肌色の悪いエルフごっこができるな、とか考える。


 五千円札が目の前に転がっているに等しいこの状況に、おねむだった蒼の脳は完全に覚醒する!


 ゴブリンの左耳を拾い上げ、大事そうにジャージのポケットに入れる。

 ジャージである。

 この娘、革鎧は重いからって、家に置いてきたのである。鉄の鎧を装備して動けなくなればいいのに。


 受付のお姉さんにも苦言を呈された。あと苦手意識を持たれてた。蒼ショック。

 最終的に2層より下に行かなければ良いということになって、今こうやってダンジョンに入っている。



 やってきたのは、かつて二度転移能力を使おうとして失敗してきた、なんか広い空間。

 なぜかモンスターがやってこないので安心して転移の実験を行うことができる。


 鞄の中からノートを取り出す。A4の方眼ノート。無理やり鞄に押し込んだせいで少し曲がっている。

 ノートには昨日の夜に呼んだレポートの内容や、今日の朝に考えた実験の方法とかが書いてある。

 家を出るとき、紙のノートじゃなくてスマホのメモ帳に書けば良かったと後悔したのは内緒だ。せめてもう少し小さいノートにすれば良かったのに。



 壁にスマホを立てかけて、これから行う転移能力の実験を撮影する。

 何に使えるかは分からないが一応撮っておく。その方が実験っぽいし。


 録画ボタンを押して、実験を開始。

 最初は普通に転移を使ってみる。おそらく発動しないけれど、発動しない状態を撮影するためにやる。


 カッコいいポーズ(笑)をとった蒼は掛け声と共に転移を発動させる。


「いざっ、転移!」


 もちろん何も起きない。見られている感覚もあった。

 掛け声を出したのは、後から録画を見返した時に転移を発動させたタイミングを分かりやすくするためだ。


 ノートに書かれた実験することリストの『ふつうに転移(1mm)』にチェックをつける。


 スマホのメモ帳じゃなくて紙のノートにしといて良かった。スマホは撮影に使うんだった。そう思ったことは墓場まで持っていく秘密だ。


 見られている感覚は、転移が使える海外の冒険者の人のインタビューで触れられていた。名前はなんだったか……。エディ……なんとかさんだった気がする。

 転移能力に関するレポートの要約ばかりを頼んでいたらAIさんが教えてくれたインタビューだ。英語だったので、翻訳はAIさんにしてもらった。


 それによると、見られてる感覚は転移が発動できるかどうかの判定のようなものらしい。思った通り!


 判定がある限り、条件を満たせば転移は可能である。その人はそう言っていた。

 まずはどのぐらいの距離までなら判定が発生するのかを調べる。


 ということで次は『ふつうに転移(2mm)』だ。

 最初の動きをなぞるように発動。

 もちろん何も起きないし、判定も発生した。


 次は『ふつうに転移(4mm)』

 判定の感覚がなくなるまで距離を倍にして実験する。

 判定がなくなったら今度は少しずつ距離を短くして、転移の限界距離を求める。



 §



 限界は早くも訪れた。

 5回目の16mmで見られている感覚がなくなった。

 最終的に10mmが転移の限界距離だということが分かったので、ノートに書き込む。



 やったことといえば、スマホのカメラの前でポーズを構えて掛け声を出しただけだが、ノートに書き込んでいると実験をしている感じが出て良い。

 白衣と眼鏡を装備したら天才研究者にでもなれそうな気分。


 さて次はどうしよう。

 AIさんの要約によると、転移発動時、瞬間的に能力が成立するかどうかを判定しているらしい。

 転移元と転移先の空間は合同でないといけなくて、かつ両方の空間の内外の境界線に物質が存在していてはいけない。それにプラスアルファで条件を満たせば、転移は発動するらしい。


 プラスアルファは置いといて、合同と境界線っていうのがキモだと思うんだよな。

 キモをキモしてキモすれば転移が発動すると思う。

 キモするってなんだ? キモがゲシュタルト崩壊してきた。


「あ、ゴブリン。キモ」


 即・斬。

 哀れゴブリン。すでに蒼の敵ではない。



 §



 ペンを回しながら蒼は考える。

 そういえば冒険者組合の公式サイトに載っていた情報の中に、似たような説明があった気がする。

 空間内外を横断する物質がない場合のみ転移が発動するみたいな。

 難しくて考えることを放置していたけれど、一番の原因はこれな気がする。


 ペン回しの最中に、手から逃れたペンが重力に引かれて地面に落ちる。

 蒼は拾ってペン回し再開。

 再び落ちるペン。

 再び拾ってペン回し再開。


 ふと思い立って、転移を使用してみる。当然、カメラの前に立ってだ。

 今回は転移元の境界線を意識してみた。頭のてっぺんから足の先まで、自分の表面をなぞるイメージで転移する範囲を指定する。

 これは海外の冒険者エディ……なんとかさんがインタビューで言っていた。転移の範囲を意識で云々。


 すると、今までの転移の判定とは少し違う感覚。

 見られているような感じが、より見られているような感じに。それも上から下までしっかりと。映画で見た網膜スキャンが近いイメージ。

 判定にかかる時間は変わっていないが、丁寧さが上がったように感じた。


 感覚の話なので上手くまとめることができない。

 手元のノートには『~な感じ』『~的な』『~みたいな』といった言葉が乱立する。


 良い感じにまとめられないかと頭を悩ましつつ、ペンを回そうとして、結果的に放り投げる。

 拾って回す。

 そうしていると、ひとつの答えに辿り着く。


「あのまま転移してたら一瞬でマッパやん。あぶな」


 ジャージも範囲に含めて転移してみようと思った。

 そしてふと気付いた。


 先ほどの転移の転移先の判定は、私と全く同じ形・大きさの銅像を置くことができるかどうか確かめるようなもの。 

 1mmしか位置が変わらないから、私の体と重なっているのが九割以上。

 転移先の判定は、私の体によって妨害されていたのだ。

 分かってしまえばなんと簡単なことだろうか。転移先の判定が、今私がいる場所と重ならないようにすれば転移は発動するに違いない。


 ノートにメモを取り、カメラの前に立つ。

 原因が分かったので、記念すべき最初の転移をしてみるとしよう。



 ……どうすればいいんだ?

 ……転移のマックス距離が10mmだから、前だろうが後ろだろうが、横だろうが上だろうが、どこに転移しようとしても体のどこかしらかが重なってしまう。


 ……もしかして詰んでる?

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