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ダンジョン時代と人見知り  作者: 酉名酉丁
新人冒険者ひっそりと爆誕

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7/8

レポートを読もうと思った

 蒼は決意した。必ずや転移能力を我がものとし、カッコいい転移能力者系美少女冒険者になってみせると。そして友達100人作ってみせると。


 転移能力を我がものとするためには、研究機関のレポートから転移能力のイロハを導き出さねばならない。


 蒼は難しい顔をしてノートパソコンの電源をつける。


 机の上にはコップ一杯の茶色い液体を用意した。『コ』からはじまる茶色いアレである。猫のイラストが描かれたマグカップに入っている。


 パソコンが開いたらURLをクリック。

 画面に研究レポートが表示される。タイトルは『転移能力発動時の空間判定に関する観察報告』。役に立ちそうだ。



 レポートの内容が難しくて眉間に皺がよる。

 最初の数行でつまづいてしまった。

 ノートとペンを机に置き、天井を見上げる。

 名詞も分からないし動詞も分からない。


 困ったときはコピペしてAIさんにぶん投げる。


『転移を使うときの発動できるかどうかの判断や、転移先の空間――』


 AIさんの要約を読んでいると、部屋のドアをノックする音が聞こえる。

 回数は2回。弟の翠である。


「なんか届いてたよ」


 翠が持ってきたのは小さな段ボール箱。

 何かネットで買ったっけ?


 箱を開けると、中から出てきたのはスマホのガラスフィルム。そういえば昨日ポチッたわ。

 ダンジョンで転んでスマホを割ったが、家に帰って確かめたら割れていたのはガラスフィルムだけだった。だから自分でフィルムを付け替えるべく、ネットショッピングでポチッたのだ。



 スマホのガラスフィルムを付け替えるという一仕事を終えた蒼は、マグカップに入った飲み物を口に含み、味わう。

 窓から差し込む四月のぽかぽか陽気。

 時刻は1時半。お昼ごはんを食べてお腹いっぱいのところに、おやすみ日光ビームを受ける。さらに口に含んだ飲み物が血糖値を上げ、蒼を夢の世界に誘う。



 §



 蒼はカッコいいポーズを構え、転移する。

 転移先は自由自在。前に後ろに、横に上に。


 ゴブリンを見つけて、転移で近づく。

 急に近づいて来た蒼に驚いたゴブリン。そいつの死角に即座に転移。そのまま『忍・殺』。

 そして決めポーズ。ゴブリンから吹き出した血液は、戦隊モノの爆発のように蒼のカッコいいポーズを彩る。


 ゴブリンを倒すと、地面にゴゴゴッと階段が現れ、その先にはボスが居る。

 転移でボスを翻弄し、ノーダメで倒す。

 ボスを倒したらなんかいっぱいドロップした!


 組合の買取所で買い取ってもらったら10億兆円で売れた。

 買取所のおっちゃんには驚かれて「また、なんかやっちゃいました?(初回)」をすることができたし、受付の綺麗なお姉さんには褒められた。あと友達もできた。100人くらい。


 ずっと買い食いがしてみたかったので、アイテムを売って儲けたお金で買ってみた。コンビニでホットスナックを買う。両手いっぱい。

 こんなにあっても食べれないので、周りの友達に配る。そのうち手渡しするのが面倒くさくなって、花咲かじいさんのようにばら撒きながら帰宅する。


 家には弟の翠がいたので、口にホットスナックを突っ込んであげると感涙の涙を流す。


「ありがとう姉さん。いや、姉様。俺感動したよ。姉様はとても立派な人間だったんだね」


 弟と周りの友達からの尊敬を一身に集め、満足しながら自室に戻る。


 しばらくすると、弟が「夜ご飯だよ、姉様」と呼びに来る。



 §



「――ご飯だ――」


 ハッ!

 気がついたら、周りにいたはずの友達100人がいない! そもそも部屋に入らない。

 ボスを倒して手に入れた10億兆円がない! そもそもそんな単位はない。


「夜ご飯だよッ、姉さん」


 部屋の外で弟が呼んでいる。

 弟の呼び声により、夢の世界から現実世界へ引き戻された蒼は時計を見る。


 現在時刻は20時ちょうど。夜ご飯の時間だ。


 ノートパソコンに目を移すと、どうやらスリープモードになっている。適当なキーを押してあげれば、難しいレポートの要約を終えたAIさんがこんにちは。

 一体このAIさんは何時間放置されていたんだろうか。心なしか、要約終わりの句点が「呆れてものも言ない」と言ってるように見える。


 弟にすぐ行くと返事をして、パソコンに向き直る。

 AIさんの要約には目を通さずに、シャットダウン。

 仕事の成果を数時間放置された挙句、見られもしないAIさんの気持ちやいかに。


 蒼は再び時計を見て、ため息をつく。

 今日やった事といえば、スマホのフィルムを付け替えたくらい。

 なんと虚しい一日か。

 少し残ったコーラを飲んで、ドアを開けて部屋から出た。

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