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ダンジョン時代と人見知り  作者: 酉名酉丁
新人冒険者ひっそりと爆誕

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3/6

転移能力を使いたい

 冒険者組合の公式サイトでは、さまざまなスキルの詳細が無料で公開されている。

 蒼はその恩恵にあずかって、事前にネットで転移という能力について調べてきた。

 載っていたのは大きく3つ。


 一つ目、転移能力の対象は能力者本人。

 服や道具、近くの物もまとめて転移できるが、それは副次的な効果である。必ず本人を転移させなければならず、物だけの転送はできない。


 二つ目、転移という現象は、慣性を殺さない。

 転移をしても転移前の移動速度が維持される。

 蒼的にはこの話が一番理解しにくかった。なんなら今も良く分かっていない。もっとこまごまとしたことが書かれていたのだが、面倒になって途中で読むのをやめた。


 三つ目、転移先に“自分の形がそのまま収まる空間”がなければ能力は発動しない。

 転移先は転移元と同じ形状の空間があり、かつ空間の内外を横断する物質がない場合のみ、転移が発動する。これは転移元も同じ。そのため、転移で物質が破壊されることはない。ただし、液体や気体といった――。

 蒼は眠くなった。

 多分、体と石ころは転移で位置を交換するが、コンクリの壁の中に転移することはできない。そんな感じだと思う。

 説明書を読まないタイプの蒼は、雑な理解で満足した。



 §


 

 それなりに広い空間で、なんとなくモンスターがいなさそうなところにやって来た。ここで能力の試し打ちといこう。


 私が主人公になるときが来たのだ!


「いざ! て~ん~い~!!」


 へっぴり腰で格好良さそうだと思うポーズを取りながら、微妙に気の抜ける掛け声を上げる。本人はいたって真面目である。


 ……。何も起こらない。


「おかしい」


 格好良く10mくらい先に転移するイメージだったのに、1ミリも動いていない。

 何が原因だろう? もしかして、体重制限!?

 いやいや、そんなことは無いはず。


 使えると思っていた転移能力が使えず、呆けている蒼のもとにゴブリンが現れる。

 呆ける蒼、こん棒を構えるゴブリン、熱き戦いのゴングが今鳴り響いた。


 呆けていたとはいえ、蒼の行動は速かった。

 格好良いポーズで左手に持っていたナイフを、すぐさま右手に持ち直し、ゴブリンに近づく。

 大ぶりな攻撃を横に避け、首・胸・腹と素早く3回刺す。そのまま流れるように背後に回り、ゴブリンが対応できていない間に滅多刺し。

 ゴブリンは血を吹き出して消えていく。

 ダンジョンほぼ初心者の蒼だが、あっという間にゴブリンを倒してしまった。

 両手をあげてウィナーのポーズ。



 ダンジョンでモンスターを倒した人間が得るのはスキルだけではない。

 モンスターを倒した人間には、筋力や体力、器用さや頭の回転速度などの向上が見られる。

 もちろん原因は分かっていない。世界には不思議なことが山ほどあるのだ。


 ゴブリンを屠った蒼は、自身の成長を実感して呆けた。

 日常生活では感じなかったダンジョンの恩恵が、今まさに全身で感じられたのである。

 世の人々がこの変化をレベルアップと例える理由が分かった気がする。

 今の自分は、今までの自分とは一線を画す。


 蒼はそれを、友達ができる予兆だと感じた。


 ちなみに、魔石は放置する。100円と交換するために買取所のおっちゃんとのコミュニケーションが発生するので。



 それからも幾度となく転移能力を使用しようとしていたが、一向に発動する気配がない。


 蒼は諦めてゴブリンを探し始めた。八つ当たりである。


 洞窟のような雰囲気のあるダンジョンの中を進む。曲がり角を曲がると、ゴブリンを複数体発見する。

 蒼にとって初めてとなるゴブリンの群れ。その瞳に恐れはない。あるのは楽しみにしていたスキルが使えないことに対する怒りである。



 3体いるゴブリンの内、こん棒を持っているゴブリンが2体。弓持ちが1体。


 こん棒持ちの1体が私の相手をするかのように前に出てきたので、そいつに狙いをつける。弓に攻撃される前にさっさと近づいて攻撃。


 駆け足の勢いを乗せて、右から左に袈裟斬り。

 刃渡りの短いナイフでは致命傷にならず、ゴブリンはこん棒を落としてうずくまろうとする。

 左足を踏ん張って、袈裟斬りで左に流れた身体を右に返す。そのまま首元を狙って一文字。


 蒼は首から吹き出る鮮血をその身に浴びながら、両手でゴブリンの右腕を掴みぶん投げる。狙いは弓持ちゴブリン。

 放物線を描きながら飛んでいった死に掛けゴブリンは、弓持ちゴブリンが番えていた矢に心臓を貫かれ、光となって消えていった。


 弓持ちが動きを止めている間に、もう1体のこん棒持ちゴブリンを仕留めてしまうべく動き出す。


 こん棒を避け、地面に着いたこん棒に足を乗せて一時的に封じる。左肩を刺し、手の先に向かって引く。右も同じ。そして顔面を拳で殴る。

 こん棒を手放して後ろに倒れそうになったので、喉元を掴み構える。肉盾ゴブリンに隠れるようにして身体を丸めつつ、弓持ちに向かって走って近づく。



 ゴブリン砲弾をくらった弓持ちゴブリンは、急いで体勢を立て直し弓に矢を番える。人間はゴブリンを構えて近づいてくる。



 矢が飛んでくる。身をよじって避ける。

 仲間を盾にされているというのに、躊躇いなく矢を放った! 小鬼の類なんぞには、人の心が無いと見える。

 盾になっているゴブリンが死ねば、光となって消えて身を守るものがなくなる。抵抗できないように痛めつけているから、ゴブリンは一度でも矢を受ければ確実に死ぬだろう。

 盾がなくなった状況で矢を受ける前に、目の前の弓持ちを殺す。



 ゴブリンは息を吐き、良く狙って矢を放つ。

 盾になっているゴブリンの頭の横をギリギリ通り過ぎるように、奥から覗いている左目を貫くように飛んでいく。



 矢が飛んでくる。これは避けられない。

 肉盾の耳を掠めるかどうかというところ。針の穴に糸を通すかのようにギリギリを狙った矢は、大きく動いても回避できない。

 しかし、このための肉盾! ギリギリを通る矢は、少し盾を動かすだけで防げる。貫通しないように、頭蓋骨で受ける。

 パンッ、と音を立ててゴブリンの頭がはじけ飛び、そのまま光に変わっていく。勢いが完全に殺された矢は、そのまま地面に転がる。

 顔にかかった血液が光に変わっていくせいで視界が悪いが、それも問題にはならない。肉盾のおかげで、足を止めずに近づくことができた!

 もう弓は使わせない。盾の仇を取ってやる。


 蒼はゴブリンの左腕を狙い、切り落とした。ゴブリンに弓を使わせないためだ。態勢を整え、次に狙うのは首。頸動脈。



 左腕を落とされたゴブリンは痛みに歯を食いしばり、右腕で矢を振るう。鏃で狙うは首。ゴブリンに難しいことは分からないが、首に矢が刺されれば大抵の生物は死ぬということくらいは分かる。



 互いに狙うは首。

 鏃が首に突き刺さる、その寸前に蒼の左手が矢を掴む。

 首の表皮一枚切り裂かれた蒼は、そのまま右手のナイフでゴブリンの首を突き刺す。



 §



 にしても、表情1つ変えずに仲間のゴブリンを殺すなんてなんという奴だ。


 サイコパスだサイコパス。こわ。

 一体何があったらそんな性格になるのか。親の顔が見てみたい。

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