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ダンジョン時代と人見知り  作者: 酉名酉丁
第一章 新人冒険者ひっそりと爆誕

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13/15

11話:美少女は

 カッコいいポーズをこれでもかと研究した蒼は、実践すべくダンジョンに潜る。


 メインの武器は使い慣れたナイフ。


 ちょうどゴブリンを見つけたので、転移を使って戦闘してみることにした。

 戦闘を開始するためにはゴブリンに近づかなければならない。転移で近づく。

 距離はマックスで1cm。しかし、転移距離を伸ばせば伸ばすほど、転移後にバランスを崩して転んでしまう。そのため、転移する距離は1mmだ。これが今の蒼にできる最良の転移。


 1mm転移して、すっ転びそうになるのを耐える。そしてもう一度転移して、もう一度耐える。

 そんなことを繰り返してゴブリンに近づいていく。


 近づいてくる蒼に気付いたゴブリンも、蒼の方に近づいてくる。

 転移を繰り返している蒼と、徒歩のゴブリン。どちらのほうが速いかは言うまでもない。ゴブリンである。


 その事実を受け入れられない蒼は、目の前に来たゴブリンを八つ裂きにした。

 そして練習してきたカッコいいポーズをバァーン!

 その場に落ちた魔石。拾っておく。



 たった1回のカッコいいポーズで、すでに蒼は満足してしまった。

 今度はポーズではなく、もっとカッコいい転移の使い方を考え始める。


 ゆっくりと1mmの転移を繰り返しても、普通の徒歩より遅くなることなんてもとから分かっていたことだ。

 そして1cmの転移となると、確実にバランスを崩して倒れてしまう。


 試しに1cm転移、からの顔面ダイブ。


 1mmを超える転移は、戦闘中には隙にしかならない。

 おでこを押さえながら思った。



 ずっと蒼は考えていた。

 転移と転移の間隔を短くしたらどうなるのか。


 新手のゴブリンを発見する。距離はだいたい50メートル。

 中学生の時の50m走のタイムは8.5秒くらい。身体能力向上込みで考えて、普通に走ったら7秒を切るかもしれない。

 50メートルを7秒で走るということは、1秒間に7000回、1mm進んでいるのと同じことだ。

 流石に7000回は無理でも、1秒間に700回、いや70回程度ならできるかもしれない。


 あらかじめ決めた方向に向かって、転移をごく短時間で繰り返す。

 できれば回数を増やして、さらにできればさらに回数を増やす。

 もし上手くいけば、一度の転移の距離なんて気にならなくなるだろう。



 結果から言えば、できた。

 できたが、凄い速さで景色が流れていき、気が付くとゴブリンの目の前だった。


 転移を止めてゴブリンを攻撃しようとしたところ、バランスを崩して盛大にすっ転ぶ。

 すっ転んだ蒼をゴブリンは追いかけてきて、そしてヘソ天している蒼のお腹を棍棒で振り下ろした。


 着てて良かったレザーアーマー。

 棍棒はレザーアーマーに阻まれ、蒼にダメージを与えることはなかった。

 それはそれとして、鬱陶しかったので素手で殴り殺した。


 すっ転んだ時に手から離れたナイフを拾い、蒼は考察を始める。

 

 考えていたのは1秒間に70回程度の転移であって、せいぜい7cmくらいの転移のはずだ。

 何よりも問題は、転移を繰り返していた時間。体感時間で数秒、体感時間がズレていたとしてもせいぜい十数秒。

 いったい、一秒間に何回転移を繰り返したんだろうか。

 私自身はそんなに転移しようと考えていなかったのに!


 なぜ発動したのか分からない。

 謎が謎を呼ぶ。


 いくら考えても答えは出なかったので、そのうち蒼は考えるのをやめた。

 考えるのをやめて転移で遊んだ。



 ゴブリンを見つけたら、ゴブリンに向かって転移。

 明らかな爆速移動。

 ヌルッと景色が流れていき、最終的にはバランスを崩してすっ転んでしまう。


 さっさとゴブリンを始末して、特に意味もなく再び爆速転移。

 何度試してみても、爆速で転移を繰り返していると、絶対に転んでしまう。

 


 §



 一体何回の転移を行ったのだろうか。それは蒼本人にもそれは分からない。

 もはや原理も分からないこの現象に関して、言えることがひとつだけある。


 爆速転移はやり過ぎると酔う。


 三半規管をやられた蒼は、壁に手をついて、立つのもやっとという様子でオロロっていた。



 朝食が軽かったのが一助してほぼ無色透明だったそれを、しばらく無言で眺める。

 ようやく落ち着いたのか、袖で口を拭った蒼。


「美少女はゲロ吐かないから。これはゲロじゃないから」


 誰にともなく言い訳をする。



 ダンジョン内で放置された非生物は、時間経過によってダンジョンに吸収される。原理は分かっていないし、分かる必要があるとも思わない。

 ごみの処理方法として使われるかもしれないというニュースを見たことがあるが、蒼には関係のないこと。


 関係があるのはただ一つ。

 この嘔吐物ではない何かは、時間経過によってダンジョンに吸収されるということだ。


 おまけにここは人気のないゴブリンダンジョン。蒼の醜態は、誰に見つかることもなく消えるのだ。



 フラフラと歩き出す。向かうは出口。

 もはや今の蒼に、ダンジョン探索を再開する気力は残されていなかった。

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