PURGEー81 ご褒美!!
闘技場での決着がついた。一瞬だけ静まり返った観客席だったが、次の瞬間には大きく歓声を上げ、盛り上がりを見せた。
その中で審判のいる部屋の中で一部始終を見ていた入間。後方にはクオーツの姿もあり、話しかけてきた。
「どうでしたか、我が隊の優秀な隊員達の戦いは」
「ええもんですね。今後、大きな騒動に大きな戦力になるかもしれへんです。ただ……」
入間が何か言いたげな顔つきをすると、クオーツもいつも上がっている口角が下がった。
一方で別室にいる三人。レジアは自身の信頼する小隊長が敗北した事実に目を丸くし、声を失う程に驚いていた。
「木花……小隊長……そんな……」
一方でリドリアは大きく息をつくと、レジアとは逆にテンションを上げて声を出した。
「勝った! 信乃さんが勝った! 勝ったわ!」
「お、おう……そうだな。良かった……」
明るく喜ぶリドリアに対し、何処かさっぱりとした反応を見せる黒葉。リドリアはこれにジト目になりつつ指摘した。
「何? そのパッとしない反応。アンタが一番今回の件で影響を受けるのよ! 私達が勝ったおかげで、アンタは今まで通り森本小隊にいられるの! 感謝なさい!」
「あ……う、うん。ありがとう」
黒葉が何か引っ掛かりが残っているかのような微妙な反応を見せる中で、椅子に座っていたレジアが突然立ち上がった。
「れ、レジア?」
「勝ったからって……調子に乗って……」
彼女の背中から湧き上がる怒りの熱いオーラに黒葉とリドリアが注目すると、レジアは振り返って二人に宣言して来た。
「いいですこと! 今回は負けてしまいましたが、これで終わりではありませんわ! また近い内、また勝負を挑ませていただきますわ!
次こそは勝たせていただきます! 覚えておきなさいませ!!」
レジアは涙目になりながら必死に自分の言い分を叫び終わると、そのまま激情に任せて勢い良く部屋を出ていった。
「何というか、嵐のように過ぎ去っていったな」
「ちっちゃいときからそういう子なのよ、レジアは」
レジアのマイペースな流れに呆気に取られてしまい、口論になりかけていた会話が途切れてしまった二人。
「とっちゃな頃から悪ガキで、みたいな」
黒葉が何を思ったのか何の気なしに口走ってしまった台詞。ほんの一瞬寒い空気が流れていったが、次の瞬間には何故かおかしさが込み上がってしまい、揃ってつい笑ってしまった。
「ハハッ! ハハハハ!」
「ちょっと! フフフ、いきなり何笑ってんのよアンタ」
「ごめん、ちょっと自分でもおかしく感じちゃって」
団体戦、森本小隊の勝利により、黒葉の小隊の移動はなかったことになった。
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数日後、試合による負傷を回復させて退院して来たリドリア達は、自宅にて用意されていた豪勢な料理の数々に驚かされた。
「これ!」
「一体どうしたんですか、黒葉さん!」
目を輝かせつつも質問する女性陣に、黒葉はすぐに答えた。
「いや……今回の件、三人が自分の意志で決めた事だったとはいえ、俺は直接的に何にもできなかったから。せめて何かお礼をしたいと思っちゃって
今日は好きなだけ食べて! 俺、頑張って用意するから!」
「いや、でも……」
謙虚に困惑するレニに対し、リドリアと信乃は飛びついて自分の席に座った。
「「いただきま~す!」
二人は早速料理を口に頬張り、目を輝かせて美味しそうにしている。口に入れたものを飲み込んだリドリアは、レニにも声をかける。
「ほらレニ、アンタの分もあるんだから来なさいよ!」
「でも……ボク、今回の団体戦で勝てなかったのに、こんなお礼を受け取る資格なんて」
自分だけ団体戦で勝てなかったこともあり、前に足を踏み出せないレニ。そこに黒葉が近づき、声をかけて来た。
「レニ、それを言ったら俺は今回何もしてないよ」
「え? ああいや、黒葉さんが悪い事なんて決して」
「なら俺の料理、食べてくれるよね?」
「そ、それは……ボクなんて……」
黒葉はレニに触れない程度に近付きつつ、塞ぎ込むレニに頼んできた。
「レニ自身がどう思っていようと、俺はレニが頑張ってくれたことが嬉しいんだ。だからこれはそのことのお礼。勝ち負けとかじゃないんだ」
「黒葉さん……」
レニの顔色が明るくなる。黒葉はここでレニの顔を見て笑みを見せながら声をかけた。
「それじゃあ、召し上がってくれ」
「は、はい! ありがとうございます!」
レニは明るい調子を取り戻して席に座り、黒葉も同じく席に着く。そして改めて四人で食事を食べ始め、晩餐を楽しんだ。
そして食事が終わる直前のタイミング。突然家のインターホンが鳴り響いて来た。
「あれ? 今日来客なんてあったっけ?」
「誰かしら?」
代表して黒葉がモニターの画面を見ると、途端に目を丸くし、玄関に向かって走り出した。
「黒葉君!?」
「どうしたんでしょう?」
気になった三人が続けて玄関に向かう。黒葉が扉を開けると、そこにいたのは大荷物を持ったレジアとシャウの二人だった。
「レジア!」
「シャウさん! どうしてここに?」
「それにその大荷物、一体?」
いくつか疑問が浮かぶ森本小隊。すると、信乃の通信機に着信が入って来た。さっそく彼女が確認すると、同タイミングにレジア達が口を開いた。
「今日から、この小隊でお世話になる事になりましたの」
「だから、部屋の荷物一式持ってきたんだ」
「え!? それって、二人が森本小隊に?」
「どうしてそんなことに」
困惑する黒葉達に、信乃は大きく驚いて声をかけて来た。
「皆、これ!」
信乃が見せたデバイスの画面に黒葉達三人は目を丸くした。
そこに書かれていたのは、木花小隊の小隊長たる音尾の退職。そしてそれに伴うレジア、シャウの移動命令だった。
「木花小隊長が、次警隊を辞めた!?」
「木花さん……」
黒葉達の元に、新たな暗雲が立ちこんできた瞬間だった。




