PURGEー74 球生成!!
レニが対峙しているシャウの異能力に勘付いた同時刻、別室にいる黒葉と信乃もレジアから説明を受けていた。
「ボールを生成する? それがあのシャウって隊員の異能力なの」
「その通りですわ」
レジアは一度頷いてからシャウの異能力『球生成』の詳細を語り出した。
「野球やボウリング、想像さえしてしまえばあらゆる種類の球型の物体を実物として生成することが出来ますの。
詳細な情報を想像するほどに、生成されたボールは本物と同様にも、ハッタリを入れた罠を張ることも出来ます」
「それって、凄い応用力ある異能力じゃ……」
「その通り。最も、シャウさん本人が勉強嫌いでボールの詳細を理解しようとすらしないので、結果生成されるのは側だけの硬いボールになっておりますが」
レジアの語りに黒葉も信乃も何となくシャウの見た目から納得した。
「せっかくの凄い異能力が、台無しに……」
ジト目になってしまう二人にレジアは調子を変えずに続けた。
「ええ、しかしそれがあの人の良い所でもあるのです。シャウさんは生成した偽物のボールを本物と同じ要領で使っている。重さも硬さも全然違う野球ボールを、本物と同じ投球で投げているのですわ。つまり」
二人はレジアの言いたいことを理解して細くなって目を大きく見開いた。
「実質、高速で硬い鉄球を投げられている事と同じ!」
「それがボウリングのサイズでやるってなったら!」
二人の理解にレジアは回答した。
「当たれば即勝ちの、とんでもない異能力に化けるのですわ」
そのころの闘技場。シャウは荷が回るレニに狙いを定め、生成したボウリングの玉を投げる構えを取った。
「これなら範囲は広くて当たれば強い! 野球ボールとは比にならない!」
シャウはアンダースローの構えを取り、手首を捻りつつボウリングの玉を転がした。
「<カーブストライク>!」
シャウがスローしたボウリングの玉は渦巻き状に広がる形で高速回転し始める。レニはこれに一度縦方向に離れ、タイミングを見計らい内側に走って回避しようとする。
目を凝らし、足を駆け出すレニ。だが位置にして中央にいるシャウはレニの足取りに目を凝らした。
(まっすぐ走って来る! だったら!)
今のレニはボウリングの玉に避ける事に集中していて単純な走りになっている。
シャウは考えて行動するタイプではないので、これを意図的に行っていたわけではなかった。だがかといって目の前に広がっているチャンスを溢すほど鈍感ではない。
シャウは再び構え、手元に新たなボウリングの玉を出現させる。そして自分の元に向かって来るレニを見ると、今度は手首を捻らずに腕を引いた。
「<ストレートストライク>!」
シャウはここで野球ボールの剛速球にも負けない勢いで真っ直ぐレニの方角に投げてきた。
「しまっ!……」
レニは回避しようにも、前方はもちろん、偶然にタイミングの重なった横方向から向かって来るボウリングの玉の存在で逃げ道は防がれた。
追い詰められたレニは酷く焦る表情を見せた。だが攻撃はそんな彼女の状況に配慮などしない。二つのボウリングの玉はほぼ同タイミングにレニに激突、彼女の骨が折れて勝負は終わったかに見えた。
「これでアタシの勝ち! ……って、あれ?」
シャウは自分の目を疑った。目の前にいたはずのレニは、まるで靄がかき消されるように身体が消滅したのだ。
「消えた? なんで! どういう事!?」
今の今まで目の前にいたはずの相手が姿を消した事態に頭を抱えるシャウ。レニがどこに行ったのかと首を回す彼女は、真後ろを向いた時に息が詰まりかけるほど驚いた。
姿を消したかに見えたレニは、いつの間にかシャウの間合い、至近距離にまで近づいて銃を構えていたのだ。
(いつの間に! 発砲されたら負ける、阻止しないと!)
シャウは咄嗟に腕を振るうと、目の前のレニも腕に触れた途端に切り裂かれるように消滅した。
「また消えた! 何が起こってるのよ?」
「こっちです!」
冷や汗を流し困惑するシャウにl聞こえてきた声。引き寄せられるように目を向けたシャウは、少し離れた位置で手を振る手にの姿が見えた。
「こっちですよ~」
挑発するように声をかけて来るレニ。シャウは彼女の態度にレジアの件に重なる形で腹立たしく感じ、すぐに投球モーションに入りかけた。
ところが直後、シャウは構える直前の右手を後ろから狙撃されて出血した。
「ナッ!」
走る痛みと共に、攻撃の方向に目を丸くするシャウ。目の前には確かにレニの姿が見えるはずなのに、攻撃が飛んで来たのか真後ろから。視覚情報と矛盾しているからだ。
「何がどうなって……分身? いや、もしかして」
シャウが最早前も後ろも何が起こっているのか分からず混乱している中、別室で見ていた黒葉達三人もまた驚いていた。
それは出たり消えたりするレニの姿ではなく、彼等から見るシャウの動きの方に対してだった。
「さっきから、あの人何をしているんだ?」
「何もない位置に振り返って、ボールを構えた?」
「シャウさん、何をしているのでしょうか?」
三人の目に映ったのは、レニのいる向きとは勝手に反対方向に身を振り返り、一人混乱しているシャウの姿だった。
敵も味方も何が起こったのか理解が出来ない状況。唯一理解していたのは、闘技場で顎を引いているレニだけだった。




