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PURGEー73 VSシャウ!!

 開始合図が響き渡り、構えるレニ。彼女は自分の異能力上、直接攻めて行き攻撃することは難しい。だから相手の出方を伺っていた。

 しかし対するシャウは戦闘態勢はおろかレニの目を見ようともしない。俯いたまま動かない。


 レニはいつになっても向ってこない相手に若干戸惑っていると、シャウは微かに聞こえるかどうかの声を呟き始めた。


「よくも……よくもよくもよくもよくも……よくレジアちゃんを倒してくれたわねぇ!!」


 微かだった声からだんだんと音量が上がり、最後は叫ぶ勢いになった声にレニは反射的に一歩身を引いてしまった。


「え、えええ……えぇ?」


 この場に置いてのシャウの台詞にどうしたレニ。シャウはこの一瞬の隙に間合いに入り込み、レニの腹に拳を叩きこんだ。

 いきなりの強烈な一撃に嗚咽を吐くレニ。ただ殴られたのとは違う、拳ではない何かが激突した痛みだ。


 吹っ飛ばされて地面に激突するレニ。どうにか受け身を取って衝撃を受け流しつつも、腹に多少の痛みが残ってしまう。


「ハァ……ハァ……」


 息を整えつつ立ち上がるレニ。一発攻撃を仕掛けたシャウは拳を戻すも、湧き上がっていた怒りが抑えきれずに叫び出した。


「よくもレジアちゃんを! アタシの可愛い可愛いレジアちゃんをよくも傷つけてくれたわね!!」

「あ、アタシの?」

「あんな可愛くて美しくて仕方ないレジアちゃんを! 公の場で敗北させた! イラつく! イラつく! イラつくわ!!」


 癇癪を起して地団駄を踏むシャウ。レニは彼女の一変した態度に更に戸惑ってしまい、攻め手に欠けてしまう。

 シャウは血走った眼玉を広げてレニに指を差し、足を肩幅に広げて宣言した。


「レジアちゃんを傷付けた分、アタシがアンタをボッコボコにしてやるわ!」


 シャウがレニに宣言を告げた直後に右手を眼前にまで近づけると、突如手の中にボール状の何かが生成される。次に彼女は野球のピッチャーの構えを取ってストレートの投球をした。


「<火の玉ストレート>!」


 余りの剛速球にレニの回避は追いつかない。代わりにレニは、投球されたボールの姿形を確認した。投げられたのは、間違いなく野球のボールのそれだった。


(野球ボール! これを生成したって事?)


 考えている間に体に激突するボール。レニは左腕を前に出していたダメ二度目の強い衝撃をどうにか受け流すことに成功するも、ダメージはやはりあった。


(二度の攻撃だけでこのダメージ。次に受けたら間違いなくダウンする)


 レニはシャウに目を向けているも、相手と目が合わないために『魅了(チャーム)』を賭けることが出来ない。

 一方でシャウは再び投球モーションを取り始め、レニは今度こそ回避しなければならないと狙いを決められないよう走り出した。


 別部屋でこの試合を見ている黒葉と信乃。二人はシャウの戦い方に強く興味を持っていた。


「あの人、今の野球ボールが異能力って事なのか?」

「でもそれじゃあ、さっきレニちゃんが吹っ飛んだは一体? それも野球ボールの攻撃なの?」

「フフフ……早速頭を抱えているようですわね」

「「ウワァ!」


 二人は突然話に割って入った声に驚くと、丁度二人の間の椅子にいつの間にかレジアの姿があった。負傷箇所には包帯などの処置がされているが、表情は戦いに負けた後とは思えない程に普段通りだ。


「レジア、なんでここに? 治療はいいのか?」

「そこはご安心を、重傷の部分は回復隊員に治してもらって」


 普段通りに話をするレジアにふと信乃が近づき、彼女の肌に触れた。


「チョン……」

「ヒィ!」


 レジアは触れられた途端に身を震わせて汗を流した。やはりやせ我慢しているようだ。


「やっぱり寝てた方がいいんじゃ」

「だ、大丈夫ですわ……」


 黒葉と信乃は苦笑いをしつつも、レジアがせっかく来たからにはやはり聞きたいこともあった。


「やっぱり知ってるの、あの隊員の異能力」


 レジアの方もさっそく聞かれると思っていたようで、自慢気な態度を戻しつつ説明を始めた。


「シャウの異能力は言葉にするともっと単純なものですわ」

「単純?」


 一方の闘技場。レニは全速力で走る事で連続で投げられる剛速球を何とか回避していたが、ふと目をやった時に見た光景に彼女は驚いた。

 野球ボールが激突した地面は大きく抉れており、激突した壁も酷く陥没していた。


(さっきの一撃を受け流せてよかった。直撃していたら、その時点で負けていた)


 ゾッとするも走り続けるレニ。シャウは中々ボールが当たらないレニに苛立っていた。


「逃げ回ってばっかり、全然戦ってこないわね。腹立たしい」


 十球程投げてもレニには当たらない。業を煮やしたシャウは、別の攻撃に切り替えることにした。


「火の玉ストレートはダメ。だったらこっちで」


 投球モーションを止めたシャウは、両手を顔の前に構える独特な形を取る。すると彼女の手の中には野球のものではなく、ボウリングのボールが出現した。


「ボウリングの玉!? 野球ボールだけじゃない! てことはあの人の異能力は、ボクが思っているよりももっと単純」


 『シャウ シャッキー』の異能力は、口にする説明ではとても単純な事。

 自身の傍に様々な種類のボールを生成する『球生成(ボールクリエイト)』だった。

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