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PURGEー72 ハグ!!

 団体戦、第一試合の勝敗が決し、それぞれの小隊の仲間達がそれぞれ受け止めていた。


「やった! やりました! リドリアさん勝ちました!」


 テンションを上げて可愛く飛び跳ねるレニ。黒葉と信乃もホッと胸を撫で下ろしたように近くの椅子に座った。


「まずは一勝。あと一回勝てばこちらの勝ち。有利になれた」

「リドリアの奴、決闘を見る度に成長しているような。やっぱ凄いや」


 対する木花小隊。小隊長である音尾はレジアの敗北のほんの少し眉が動いた様子を見せ、隣にいるシャウは真逆に分かりやすくおののいていた。


「れれれれ、レジアちゃんが負けた! そんな、あのレジアちゃんが負けちゃうなんて!」

「落ち着いて」


 音尾の言葉に気を引き締められるシャウ。音尾は続けて彼女の語り掛けた。


「敗北は敗北。受け止めて前に進もう」


 そして闘技場。意識を回復させたレジアは、目を開けてすぐにリドリアが自身にしゃがんで近づいてくる姿が見えた。


「目が覚めたのね」

「リドリア……」


 リドリアは手を差し伸べ、問いかける。


「立てる?」

「何でしょうか? 負けた直後のお情けは、屈辱になるだけですのよ」

「お情けじゃないわよ。これは敬意」

「敬意?」


 困惑するレジアに、リドリアは自身の心情を包み隠さず吐露した。


「今回の勝負、序盤の方は本当に翻弄された。それにアタシの策が通じたのも本当にギリギリ。一歩遅かったらやられてたわ。

 だから……せめて握手だけでもと」


 レジアはリドリアの不器用な姿勢。そして取りようにとっては中々に毒のある台詞を天然で吐いて来ることに呆れつつも、ふと笑ってしまった。


「フフフフ……」

「な、何で笑うのよ!」

「相変わらず不器用ですのね。攻撃だって愚直で大胆。美しさのかけらもない」

「そ、そんなの」

「でも、それが貴方らしい。やっぱり、勝負をしてよかったですわ」


 レジアはリドリアの手を敢えて取って立ち上がると、そのまま彼女に握手をした。


「次警隊に入って中々こういう機会はないかもですが、また勝負を申し込みますわ。今度は負けないですわよ」

「望むところよ。アタシだってもっと強くなってやるんだから」


 二人の中でも晴れやかに決着がつき、団体戦第一試合はこれにて幕を閉じた。



_______________________



 お互いにかなり身体を張った戦いとなり、揃って担架が担ぎ込まれた闘技場。リドリアは運ばれていく道中、自身の所属する小隊の面々がやって来た。


「リドリアさん! 勝利おめでとうです!」

「これで一勝。リーチがかかったよ!」


 レニと信乃からの感謝の言葉に口角が上がるリドリア。そんな中、ふと近寄って来た黒葉は何処か申し訳なさそうな部分を見せていた。


「黒葉? どうしたのよ、アンタからは何もない訳?」


 ついいつものように厳しめに口を滑らせてしまうリドリア。対する黒葉は少し顔を俯かせて口を開いた。


「やっぱり……戦って帰って来た姿を見ると、申し訳なく思って」

「はあ? 何言ってんのよアンタ」


 リドリアからの返事に暗い表情が歪んでしまう黒葉。続けてリドリアは身体を起き上がらせ、彼に指を差してハッキリ告げた。


「アタシが今回戦ったのはアタシ自身の為よ! レジアと戦って勝つため! それだけよ!」

「い、いや……でも今回の団体戦は俺のせいで」

「そんなこと言ったら、イブリスとのことは何だったの? アタシに何も言わずに勝手に自分のクビを賭けて決闘しようとしたくせに」


 黒葉にとって耳の痛い一言。彼が次の言葉に詰まったのを見てリドリアは自分の言葉を続けた。


「あの件の腹いせとでも思っておきなさい。とにもかくにも、アタシはスッキリしたわ。自分のせいだと思うのなら、信乃とレニを応援してあげなさい」

「リドリア……」


 リドリアは空元気の笑みを見せつつ、リドリアはすれ違いざまに手を上げ、何かを察したレニがタッチした。


「次は任せたわよ」

「ハイ! 勝ってきます!」


 リドリアはそのまま運ばれていき、バトンタッチを受け取ったレニ。触れた右手を握り胸に当てて後ろを振り返ったレニは、黒葉と信乃に笑顔で告げた。


「次の試合、任せてください!」


 レニは自ら気合を入れる姿勢を取るも、直接の決闘が初めてな事もあってやはり彼女の手は震えているのが見えた。レニ自身もこれに気が付いたのかすぐに手を隠す。


「そ、それでは……ボクも行ってきます」

「待って!」


 後ろから止めて来る声に反応するレニ。するとそのまま後ろから信乃が優しく抱きしめた。レニは彼女の行動に驚いてしまう。


「小隊長?」

「こうすると、少しでも落ち着けるかなって……ほらハグって、リラックス効果があるっていうから……」


 信乃としても突発的な行動だったのだろう。それでも今のレニの手の震えを抑えるのには十分な効果があった。


「小隊長……ありがとうございます」


 数秒して信乃が離れると、レニは先程より少し柔らかい表情をして振り返った。


「行ってきます!」

「「行ってらっしゃい」


 黒葉と信乃の声援を受け、レニは闘技場へと向かっていった。


 レニが闘技場に足を踏み入れる先には、先程の激戦の痕跡が綺麗に修正された綺麗な場所が広がっていた。

 そんなレニの歩く向きとは反対方向から歩いて来る人影が一人。第二試合の木花小隊の代表、『シャウ シャッキー』だ。


 両者が闘技場の中央にまで到着すると、会場に派手な機械音が改めて響き渡った。

 団体戦第二試合が開始された。

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