PURGEー6 同居!!
一騒動終わって取り合えずわだかまりがなくなった黒葉とリドリア。諸事情で左頬が腫れている黒葉と気恥しそうにしているリドリアを連れてクオーツは何処かに二人を案内していた。
特に会話もなく進むクオーツに耐え兼ねた黒葉は質問した。
「あの、隊長……自分達、一体何処に向かっているんですか?」
「おや? ああ、そういえば言い忘れていましたね。丁度到着しましたので説明しますね」
クオーツが足を止めて振り返ると、黒葉とリドリアは彼女の背後にある建物を見て首を傾げる。
「目的地って、ここですか?」
「ただの……家?」
リドリアが言う通り、この場に会ったのは何の変哲もないよくある現代日本の一軒家だ。クオーツは二人の疑問に対してそのまま答えた。
「はい、一軒家ですよ。これからお二人に住んでもらう家です」
「「え?……ハアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!?」」
二人同時に叫んだ黒葉とリドリア。叫び終わった次には双方からクオーツに次々質問が飛び出していく。
「ななななんで黒葉と私が同じ家に暮らすことになるんですか!!」
「ていうか家って! 俺てっきり基地内とか、社員寮に住むことになると思っていたんですけど!!?」
「アタシ達いい年下男女ですよ!!? もしも万が一変な事があったら……」
「大体こんな家どうやって手に入れて」
「はいはい、一つ一つ説明しますから」
二人を諫めたクオーツは自分が言った通り一つ一つ説明を始めた。
「ここは次警隊の方で所有している家の一つです。六番隊の仕事、生物保護の都合上、下手に基地に密集するよりもすぐに現場に駆け付けられるように各場に小隊用の家を持っているんです」
「つまり、ここは俺達が所属する小隊の家って事か……って、それって!」
「アタシ達、同じ小隊に!?」
少し紐解けて理解したところに頷いて肯定するクオーツ。
「はい! いや~まさか正体を組む前から接点を持って決闘することになるとはビックリでしたが、世間は狭いというやつですね」
本当にこういう偶然があるものなのかと冷や汗を流して困惑する黒葉とリドリア。先に表情を戻した黒葉は次に思い浮かんだ疑問をクオーツに問いかける。
「それじゃあ、この家の中にはすでに小隊長とか他の隊員が?」
「いえ、誰もいませんよ」
「「はいっ!?」」
これまで予想外の返答に今度は大きく歯を見せる驚き顔を浮かべた二人にクオーツの説明が入る。
「この家に住みますのは、今回新しく設置することになりました小隊です。小隊長はもう少ししてからここに到着しますと思いますので、その時にご挨拶を」
「は、はあ……」
もはやどこからツッコミを入れればいいのか整理もつかない黒葉とリドリア。
「荷物は君達それぞれに用意した寝室に置いてあるから、ネームプレートを見て入ってくださいね」
後の事は小隊長に聞けと説明を強引に終わらせたクオーツは去っていき、二人は渡された鍵で扉を開けて家の中に入った。
家の中はLDKはもちろん、各個人用の寝室をのそい手すら複数部屋に余裕がある三階建ての間取り。こんなものを各小隊ごとに用意する当たり、次警隊の懐事情は相当なものなのだろう事を圧巻させた。
「流石は宇宙規模の組織というか……すっごいな」
「何をこの程度で驚いているのよ? たかだか一軒家でしょ?」
「たかだかって……君も君で感覚おかしいよ、絶対……」
どうあがいてもリドリアがお嬢様であることを改めて実感させられる黒葉。一方のリドリアは家に対しての興味よりも隣にいる黒葉にソワソワしている様子だった。
「リドリア? さっきからなんだかソワソワしているけど、どうかした?」
「何でもないわよ! アタシ荷物纏めて休むから! それじゃあ!!」
「ああ、ちょっと!!」
黒葉は引き留めようとするもまたトラブルの種になってはいけないと伸ばしかけた手の動きを止め、彼女をそっとしておくことにした。
リドリアは流れるように自分の名前が書かれた札が立て掛けられた寝室に入り、置かれていた荷物を整理することなく流れるようにベッドに飛び込んだ。
うつ伏せで倒れたリドリアはシーツを強く掴んで枕に顔をうずめて悶えていた。
「うううぅぅぅぅ~~~~~!!!! 何なのよアイツ!! このアタシと一緒に暮らせるっていうのに前ぜ全動揺してないじゃない!!」
震えを抑えたリドリアは顔を目線だけ枕から上げて独り言を呟く。
「男の子と一緒に暮らすことなんて初めてなのに……黒葉の馬鹿……」
時間は過ぎて日がすっかり落ちたころ。黒葉は自室の片付けをとりあえず終わらせ、ベッドに座り伸びをしていた。
「ん~!! やっと終わった。フゥ……なんだかドッと疲れが出てきたなぁ」
無理もない。本日黒葉は入隊式にてリドリアとの接触事故、そこからの断罪沙汰に決闘。終わってすぐにこの家へ移動して片付けと中々にないハードスケジュールをこなしていたのだ。
「なんだかようやく一落ち着きって感じだなぁ……」
黒葉はふと自分の右手を見る。触れた相手のパーツを分解する能力。思い出されるのは、これを毛嫌いした人たちからいじめられた記憶。そして……
「あの人は何処に所属しているのか……また場所が分かったら挨拶しないとな」
黒葉は手を下ろして時計を見ると、かなり時間が遅くなっていることに気付く。
「おっと、とりあえず風呂に入るか。汗を流してさっぱりしたいや」
黒葉は替えの服を一式持ち、さっぱりしたい一心で脱衣所の扉を開いた。部屋の外に光がこぼれていたことに気付かずに
「……ナッ!!」
「え!?」
黒葉が脱衣所に入ると、一転に視線が集中された。先に風呂に入り、タオルで体をふいている最中のリドリアその人だった。
豊満なプロポーションがありありと示された生まれたままの姿。黒葉の能力による事故で下着姿を晒された彼女だが、裸に関しては初の経験だ。
白く透き通るような肌が光に照らされ、体の凝った水滴がより彼女の実った胸や太ももの用船差を引き立たせていた。
「く、黒葉!!?」
「リドリア!? なんでここに!!?」
黒葉の焦りの数倍の勢いで顔を真っ赤にして湯気を噴出させるリドリア。とりあえずタオルを体に巻いてボディラインを隠すと、体を震えさせながら黒葉にゆっくり迫った。
「アンタって奴は……どこまでアタシの痴態を拝めば気が済むのよ!!」
「ご、誤解だ! これはたまたまの事故で!!」
「問答無用!!」
リドリアは足を鳥のものに変身させて黒葉を串刺しにする勢いで迫った。黒葉も当然攻撃はされたくないと下がるも、手の動きが間に合わない間にリドリアの爪が彼の喉にかかろうとしていた。
万事休すかと思われた黒葉だったが、そんなときに幸か不幸か扉の鍵が開く音が二人の耳に入り、リドリアが攻撃の動きを止めた。
「鍵が開いた? 誰?」
意識がそっちに向いた隙をついて脱出した黒葉が玄関にまで猛ダッシュする。すると扉を開いた人物は早速姿が見えた隊員に挨拶をした。
「遅くなりました! この度、この新小隊の隊長になりました『森本 信乃』……って!!」
「森本さん!?」
「春山君!?」
「はい!?」
一人奥で置いて行かれたリドリアは、二人の掛け合いに顔をよりしかめたのだった。
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