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PURGEー62 六番隊隊長!!

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 目の前で二度目となるクオーツの活躍。次警隊の隊長に君臨する者の圧倒的な実力を垣間見た黒葉だが、結局のところ何故一般隊員でしかない自分をこの場に読んだのかの理由は分からないままに全てが終わろうとしていた。


(俺、本当に何のためにここに連れてこられたんだか……)


 海の巨大タコの事件と時と同じように感じる虚しさ。何にもできなかった無力感を感じていた黒葉だったが、落ち込みかけていた彼にクオーツは声をかけてきた。


「春山隊員」

「……えっ? あぁ! はいっ!!」


 どこかぼんやりとしていたところに耳に入って来た声に戸惑った反応をしてしまう黒葉。だがクオーツはいつもの笑顔を少し小さくしたような様子で真剣に黒葉に視線を向けていた。


「隊長?」

「こちらに来てもらえますか」


 クオーツからの指示に一筋の汗を頬に流しながらも距離を詰める黒葉。


「どうかしましたか、隊長?」

「ええ、ここからは貴方に任せたい仕事ですので」


 するとクオーツは気絶させた男から奪い取ったケージの蓋を開き、中にいるマボロサウルスの子供の姿を見せた。

 黒葉が何故おもむろにこれを見せてきたのか理解できないでいると、クオーツはマボロサウルスに目を向けながら説明した。


「この子の首にはチョーカーが付けられています。貴方にはこれを外していただきたいのです」

「外すってこの首輪を? それなら隊長にもできるんじゃ……」

「残念ながら私がこの場ですぐにすることは出来ないのです」


 クオーツが話を続けつつマボロザウルスのチョーカーに指を差すと、小さく光が点滅している箇所が見えた。


「これって、何かの装置ですか?」


 黒葉が疑問を浮かべた事をそのままクオーツに質問すると、彼女はようやくここに来た理由、交渉と見せかけて戦闘となった集団について説明し始めた。


「異世界の珍しい生物を捕まえ、闇取引の場を整えつつ現場で金だけ奪っていく集団が現れたと次警隊の情報機関である二番隊から情報が回ってきました。

 取引されている生物の詳細が分からなかったため、今回は生物間の知識を持つ私が珍獣コレクターのお金持ちという体で接触することになったんです」

「なるほど……それで……」


 概要は掴めたものの肝心の黒葉が来た理由について出ていない。黒葉は知りたい思いが強かったためか急かすような台詞を口から出してしまうと、クオーツは順番にのっとって今度こそそのことについて説明した。


「このグループは捕らえた動物が逃げ出そうとしたときや万が一自分達に反抗したときの対策としてこのチョーカーを付けているんです。

 反抗的な動きを取った途端に首を縛り苦しめる。もちろん自分で外そうとしてもです」

「そんな! じゃあこの生き物はその首輪の背でこんなにぐったりしているんですか?」

「はい。そしてこのチョーカーを外す装置は持ってこられていないようです」

「何で!?」

「買い手側にとっても外す必要がありませんから。解析をするにも勝手に運んで作動しては危ない。かといって人の手で強引に外そうとしてもダメ。しかし春山隊員、貴方ならば!」


 黒葉はここでようやく自分がこの場に呼ばれた理由が分かった。確かに黒葉の<分解(パージ)>の能力ならば、マボロザウルスの子供を気付付けることなくチョーカーを外すことが出来るかもしれない。


「なるほど!……あれ? でも隊長、俺が呼ばれた理由は分かったのですけど、それならなんで事前に言ってくれなかったんですか?」

「これは秘密の任務でしたので、演技とはいえ隊長の役職である自分が闇取引をするのは公にするとマズいと思ったので」

「な、なるほど……」


 次警隊の隊長は全てにおいて信頼があるわけではない。三番隊隊長の将星ランは特にそうで、一般隊員達からも隊長にふさわしくないと思われている割合が一定数あるのだ。

 クオーツとしても今回の情報が漏れてデマでも流れようものなら信頼問題になりかねないと踏んだのだろう。


 事情を理解した黒葉は早速意識的にマボロサウルスの首元に触れる。すると巻き付けられていた機械的なチョーカーはいともたやすくパーツごとに分解され、マボロサウルスを開放した。

 無理矢理な支配から解放されたマボロサウルスは嬉しくてたまらないのか身体を飛び上がらせていく。


「うおっ! 元気いいなぁ……」

「どうもありがとうございます」


 マボロサウルスの方に気を取られていた黒葉はクオーツからかけられた声に驚いてしまう。


「え、いえいえ……自分が役に立ててよかったです」


 どこか照れ臭く感じてしまう黒葉。クオーツはマボロサウルスの頭を撫でつつ黒葉に笑顔を見せた。黒葉はこの笑顔につい頬を赤くしてしまう。

 今のクオーツの笑顔からはどこか少女のような可愛らしさ、そして大人の女性の美しさの美味しいどこ取りをしたような笑顔だった。


 気配も雰囲気も自由自在。神出鬼没で何を考えているのか分からない。しかしその大人の態度と優しさに黒葉は改めて彼女の凄さを実感した。


「そうだ! これ、春山隊員に」


 黒葉が感慨深い思いになっていると、クオーツはおもむろに何かを取り出した。黒葉が受け取ったのはレジャー施設のチケットだった。


「これは?」

「今回結果的に休日出勤をさせてしまいましたし、特別休の追加とこちらを是非!」


 このチケットが次の騒動のきっかけになる事を、この時の黒葉は思いもしなかったのだった。

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