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PURGEー57 楽しめ海!!

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 クオーツの直々の活躍によって抵抗を失った巨大タコ。彼女の目のある所では何もすることはなく彼女に呼び出されてやって来た隊員達によって保護、黒葉達の暮らす生物の世界に連れていかれたのだった。

 捕らえられた女性人達もクオーツの指示のもと同じく女性の隊員達によって保護され、替えの衣服を用意してもらい手早く状況の改善に努めていった。


 隊長直々の指示や大勢やって来た追加人員の活躍もあって事件の後処理は森本小隊負だけの時よりも圧倒的なはやさで解決していった。


 後処理もあらかた終了し、静まり返った夕方のビーチ。連日の騒動が終わった黒葉は海パン姿のままどこか心ここにあらずといったような様子で呆然と座って海を眺めていた。


「どうしたのよ、こんな所で黄昏て」


 ふとかけられた声に放心していた黒葉が我に返って後ろを振り返ると、改めて白いビキニを着込んだリドリアが腰を曲げて彼の様子を眺めていた。両手にはラムネの瓶が握られている。


「ほら、アンタの分よ。暑いんだからちゃんと飲んどきなさい」

「ありがとう」


 リドリアの素直じゃない行為をありがたく受け取りラムネを飲む黒葉。リドリアはそんな彼の隣に座ると、早速気になった事を話しかけてきた。


「何か悩みでもあるの? 相談なら聞いてあげるわよ」

「あるがとう。でも悩みって程じゃないよ。ただ圧巻させられただけ」

「圧巻された?」


 リドリアが黒葉の言いたいことが分からずに首を傾げると、黒葉はこの海での経験について語った。


「海中都市で委員等と共に解決できてちょっとは自信がついていたんだけど、巨大タコには一方的に追い詰められて、そんな相手にクオーツ隊長は攻撃をすることもなく解決してみせた」


 黒葉は水平線に右手を伸ばして明後日の方向を見ながら台詞を続けた。


「自分が強くなったと思っていたら、それを安々と越えてくる敵が現れて……そして凄い人はそれすらも超えていく。

 俺はまだまだその立場になれていないんだなって、思い知らされたよ」

「そう……アンタもおんなじ様なこと考えてたのね」

「え?」


 リドリアからの返しの台詞に黒葉が遠くを見ていた目を戻してリドリアに顔を向けた。


「圧巻された、というかアタシに至っては何の役にも立てなかったわよ。レニの機転で助けるつもりが助けられちゃって……巨大タコにも捕らわれて……」


 リドリアの脳裏に自分の身体を文字通り弄ばれる気持ちの悪い感覚が思い出され、反射的に起こった身震いに両腕を組んで抑えようとする。


「……本当に、良いとこなかったわ」

「リドリア……」


 お互いがお互いに自分が役に立てなかったと思うところを感じていた二人。リドリアも巨大タコの触手に拘束されていた際に見ていたクオーツの戦いについて触れた。


「隊長の強さ、アタシも見たわ。率直に凄いって思っちゃった。アタシ、過去に他の部隊の隊長さんに助けられたことを思い出したわ」

「助けられた? 前にもあったのか?」


 リドリアは一度頷くと、軽く語り出した。


「アタシが友人の誕生日のパーティーに行ったとき。次警隊に恨み持った犯罪グループの建て込み事件に巻き込まれたことがあって……そのときに現れた別部隊の隊長が、一人で解決してみせたの」

「一人で! とんでもないな……でも確かに俺も、別部隊の隊長の戦いを見た事があるよ」

「黒葉も!?」


 黒葉はそれがリドリアも参加していた入隊試験の時という事は口止めされているため言えなかった。

 そして二人は自分達が頭に浮かべている人物が同じであることにも気づいていなかった。


(将星隊長……侵入者にもあれだけ激戦を繰り広げて、戦っていた。まあ、その乱闘の中で新人なのに立ち向かえる奴もいた事に驚いたけど……)


 黒葉が次に浮かべたのはランと共に戦う三番隊の隊員である西野幸助だ。彼はランと共闘し、入隊試験時に現れた赤服の構成員を見事撃退してみせたという。

 表向きは事件を隠蔽されたため話題にもなっていないのだが、その場で直接サポートをしていた黒葉にとっては、新人の中で頭一つ飛び抜けた存在なのだ。


「宇宙って、本当に広いのね……アタシ、鍛えて強くなれ立った思っていたのに、それだけではとても通じないものが現実にはいくつもある」

「アタシもアンタも、もっと強くならないと駄目ね」

「だな……」


 二人の間の空気がしんみりとしかけたその時、後ろから突然に明るい声が響いて来た。


「二人共! どうしたんですかしんみりして!?」

「せっかくの海水浴なんだから楽しまないと損よ! ほら! 色々楽しめるもの持ってきたから行きましょ!」


 さらなる一騒動を終えて今度こそ待ちに待った海水浴へのテンションの高いまりに黒葉とリドリアとは反対に声色も明るくなっていた。

 この勢いに押された二人が立ち上がると、確かにこういう時は楽しまないと損だとお互い少し笑みをこぼしてアイコンタクトを取った。


「考えるより先にやる事があるわね」

「そうだな。今はせっかくの海。楽しもう!!」


 更に先に進んでいった信乃とレ二が二人を呼んでくる。黒葉とリドリアもこれに応対して二人の元に駆け出していった。


 そんな森本小隊の楽しむ様子を遠目で眺め、紙コップに入っている飲み物を飲んでいるクオーツ。彼等の事を微笑ましく眺めて一息ついていた。


「本当にお疲れ様です、皆さん……」

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