PURGEー56 ね!!
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海の奥底に隠れていたタコが引き起こした海水浴場での大パニック。客たちは逃げまどい、リドリア達は水着を脱がされたその身体をうねる職種に絡み取られ気持ちの悪い感触に襲われていた。
「イヤッ! ちょっと! 胸触らないでよ!!」
「ハウッ! お尻ばっかり!!」
「太もも! 気持ち悪いですぅ!!」
手足も拘束され身動きの取れないリドリア達。巨大タコは完全にそんな彼女達の様子を楽しんでおり、顔の目つきを嬉しそうに動かしている。
「クソッ! 俺が何とかしないと!!」
黒葉は目の前の事に呆然と立っているだけではいけないともう一度走り出した。巨大タコの身体の何処かにさえ触れることが出来れば女性陣を開放することが出来る算段だ。
だが黒葉の読みは甘かった。水面に足を踏み入れてすぐ、多すぎるタコの触手は彼が分解を発動する余裕もない穂野地に早い一撃を浴びせ、再度黒葉を吹っ飛ばしてしまったのだ。
砂浜のおかげで大したダメージにはならなかったものの、やはり巨大タコの守りは黒葉の能力で破るのは難しいらしい。
「クソッ!」
女性陣、特に一般人が捕まっている中で下記を装備し攻撃することも難しい。実質的に攻め手を欠いてしまった黒葉は膠着状態にさせられた。
「このままじゃみんなが!」
黒葉が困っている間にも、リドリア達は巨大タコの触手と粘液でもて遊ばれ続けていく。
「……皆が酷い目に遭うくらいなら、俺が!!」
黒葉が功を焦って自滅覚悟の突撃を書けようとしたその時、走りかけた彼の肩を誰かが後ろから掴んできた。
「うおっ! え?」
全速力に入りかけたところを軽々と止められたことに驚く黒葉が流れで後ろに振り返ると、彼を止めたのは例のサングラスの女性だった。
「貴方は! 逃げてください! ここは危険で」
「ええ、だから疲れている貴方は少し休んでください。仕事続きで疲労のある所に焦った判断をすれば、取り返しの突かないミスにつながりますので」
「え?」
まるで現場慣れしているかのような台詞に黒葉が困惑すると、女性は彼の肩から手を放して前に出る。そのとき黒葉は一つ疑問が浮かんで来た。
(あのタコ、なんでこの人には襲い掛からないんだ? それどころか視線も向けない……こんなに近くにいるのに気づいていないのか!?)
女性はゆっくり歩きつつ黒葉に再度話しかけた。
「新人の隊員を働かせすぎましたから。ここは上司として、少しかっこいい所を披露させていただきます」
「上司……って、まさか!!」
黒葉はここに来て女性の声や口調に聞き覚えがある事に気が付いた。彼女はサングラスを外して帽子を取り、帽子の中に纏められていた長い髪が降ろされていく。
服装こそ水着ながら、醸し出す雰囲気や髪の色は、間違いなく黒葉の予想通りの人物の背中だった。
「た、隊長!? クオーツ隊長!!?」
顔を見せたその女性は、黒葉達次警隊六番隊隊長、『マザークオーツ』その人だった。
黒葉が思わぬ人物の登場に目を丸くして口を大きく開けた間抜けな顔を晒してしまう中、クオーツは堂々とした態度で巨大タコに近づいて行く。
「隊長! そんな堂々と歩いていたら捕まって」
「春山隊員」
クオーツは一度足を止めて黒葉に顔を向けると、右手の人差し指を静かに唇に当てて言葉のない指示を送った。何も言わず待っていろと言う事らしい。
わざわざ指摘を入れるという事は聞いておいた方がいいのだろうと黒葉が口を閉じると、クオーツはもう一度巨大ダコに向かって歩き出した。
黒葉は黙って前方を見ていると、大きく違和感を感じていた。
(クオーツ隊長、あれだけ堂々と前に歩いているのに巨大タコから見向きもされてない? 気付かれていないのか?)
そして黒葉が瞬きをすると、その目の前からもクオーツの姿が消えていた。
「あれ? 隊長!? 隊長何処に!?」
「こんにちは」
次の瞬間に黒葉はハッキリ感じ取った。クオーツの姿、ではなく、普段から暖かく優しい隊長の面影が全く消えてなくなり、代わりに全身から汗が吹き出し震えが止まらない程の恐怖に襲われた。
黒葉は声も出すことが出来ず、ただ今目の前に確かにいるはずの存在に意識が集中した。
(な、何だこれ!? 隊長? いやそんなわけない! 何だこの恐怖……まるで、目の前に絶対に勝てない怪物がいるかのような恐怖? ほんの少しでも動けば心臓が破壊されるかのような殺気!!?)
このクオーツが放っているらしき気配を恐怖を感じているのは黒葉だけではない。むしろいきなり至近距離、自分の触手の上、顔の目と鼻の先からこの気配をぶつけられた巨大タコは汗一つすらかけない程の緊張感に襲われていた。
巨大ダコが序鑑定士でもしたかのように全ての動きが固まった事でリドリア達の行為も止まる。クオーツは周辺の状況を目線で確認すると、巨大タコの顔に右手を触れてそっと声をかけた。
「お痛はいけませんよ。ね?」
そのほんの少しの台詞を受けた途端、巨大ダコは一切抵抗をすることもなく触手に捕えていた女性陣を安全に水面に付けて解放した。
一滴の血も流れないどころか一切の暴力を使う事もなく決着のついた戦闘。黒葉は震えが収まった身体を落ち着かせるために深呼吸をすると、瞬きをする間にクオーツは目の前に立っていた事で再び驚いて足を引いてしまう。
「ウオォ!! 隊長! いつの間に!!?」
「フフッ、面白い反応をするのでついふざけちゃいました」
「い、今のって……」
せっかく収まった震えが再発させながらどうにか質問する黒葉。だが釘にクオーツがいつものように優しい微笑を浮かべて口を開いた途端、あれだけ感じていた警戒心や恐怖が一瞬で消え去り安心感が広がって来た。
「単なる威嚇ですよ。ちょっと怖がらせて話を聞いてもらっただけです」
「威嚇って、いやまぁ、確かにそうですけど」
黒葉にはあれが単なる生物の威嚇とはとても思えなかった。まさしく『圧巻』の一言。黒葉は自信が所属する部隊の隊長の実力を肌を持って実感したのだった。
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